青太郎

文章や絵を書くこととTRPGが好き。noteには主に『好き』と『楽しい』を残しています。

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マガジン

  • 【Her Odyssey】プレイログまとめ

最近の記事

幕開けは赤で染めて【ロトあだ/SS】

 人生は十二の頃に唐突に始まる。それより前の出来事は全て、この日に比べれば些事である。  それはまず、目に染みるような煙草の煙から始まった。肌を刺す冷たい風が吹き始めた初冬のことだ。 ●  引き摺られるようにして連れてこられた事務所は、知らない煙草の匂いで満ちていた。息が詰まりそうになって俺は思わず視線を足下へと向ける。殺風景な部屋はそれでも綺麗に整頓されており、塵一つ落ちていないのがより余所余所しさを増長させた。 「借りたものを返せちゅう、簡単な話よな」  しわ一つない

    • わっ! 1枚目のジョーカー!

      • 【Her Odyssey】27日目

        『ダイヤの7』  ボクは改めて鯨の怪我と向き合う。応急ではなくちゃんとした処置をするためだ。  幸いにも海の上は魔術の使いやすい環境だ。水の精霊も風の精霊も、手助けをしてくれる。  消毒の薬草を塗り直し丁寧に魔術を施せば、海水が滲みない程度に治療を完了することができた。  鯨も嬉しそうに鳴き声を返してくれるようになる。ボクはほっと方を撫で下ろした。  引き抜いた槍を綺麗にして改めて観察をしてみる。指先に触れる感触から、隣国の紋章が彫り込まれていることがわかる。どういう経緯

        • 【Her Odyssey】26日目

          『ハートの8』  鯨は賢い生き物だから、船が彼らに衝突することないのだと聞いている。  背に降り立ったボクは、深く突き立った槍の一本に気がついた。この鯨がどこか動揺している様相なのもこれが原因か。 「まずいな。すぐ治療しよう……」  船が来るまでにできることといえば応急処置と痛み止めくらいだろうが、ボクは集中して作業に取りかかる。  一生懸命行った。焦りすぎていて何が何だかわからないくらい。  痛み止めの薬草が効いたのか落ち着いてくれた鯨へ、ボクは話しかける。 「ごめ

        幕開けは赤で染めて【ロトあだ/SS】

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        • 【Her Odyssey】プレイログまとめ
          27本

        記事

          【Her Odyssey】25日目

          『ダイヤのジャック』  ボクは今、海の上にいる。  この連絡船は風の精霊の力を借りて進んでいるようで、海面を滑るように穏やかに進んでいることだろう。 潮の香りのする風が顔にあたって気持ちが良い。  ボクの腕の中で、キィ君も嬉しそうに鳴いていた。  自分の足で歩かなくて良い旅路は、少し不思議な感じがする。  穏やかな時間はしばらく続いた。  やがて、がやがやと人の声がするのを聞く。  話を聞けば、どうやら前方に巨大な鯨が居座っているらしい。もう少し早く気付けば良かったのだが

          【Her Odyssey】25日目

          【Her Odyssey】24日目

          『クローバーの3』  廃墟の探索ばかりしているわけにもいかない。  ボクは渋々ながら旅に戻ることにする。  調べた感じ、子供の病気の手がかりになるとも思いにくかった。これは今後の課題にしておくのがいいかもしれないと思う。  キィ君となだらかな道を歩く。途中、ふいに声を掛けられた。  声の主はどうやらボクと同じ旅人であるらしく、怪我をしてしまって動けなくなっているようだった。  彼は「薬を少し分けて欲しい」と言ったが、心配なので傷の方も診ることにする。  怪我はたしかに酷く

          【Her Odyssey】24日目

          うちの子PC描いたやつまとめ

          特に書くことが無かったので、過去に自分で描いたTRPGのPC絵を貼っていくなどをします。 まだ進行形のもあるけど、全部楽しかった卓!ヾ(´∇`)ノ

          うちの子PC描いたやつまとめ

          【Her Odyssey】23日目

          『ハートの3』  ボクは階段をずっと登り続ける。階段に終わりは来ない。永遠とも思える、長い長い階段だった。  やがてへとへとになって座り込む。もう一歩も動けない。  仕方が無いから、そこで少し眠ることにした。夜なのかどうなのかもわからない。  とても困ってしまった。塔でも登っている訳でもなければ、この距離感は絶対におかしい。  睡眠をとって、ボクは微睡みからゆっくりと起床をする。頭の中がまだはっきりしないうちに、鳴き声が聞こえた。  わんわんと、どこか楽しげに吠える声。そ

          【Her Odyssey】23日目

          【Her Odyssey】22日目

          『ハートの7』 「あいたたたた……」  打った腰をさすりながら、ボクはよろよろと立ち上がる。身体はなんとか無事のようで、多少の切り傷はあれど問題はなさそうだ。  落ちた先はかなり広い空間だった。足下の瓦礫を除けば、基本的には障害物はなく歩きやすい。  周囲に気をつけながらとりあえず進むと、壁に突き当たる。今度は壁を伝って、さらに歩き続ける。  すると、装飾が綿密に施された大きな扉を見つけた。両扉で、中央に鍵穴のようなものがある。『ようなもの』としたのは、少々特殊な形をしてい

          【Her Odyssey】22日目

          【Her Odyssey】21日目

          『ダイヤのクイーン』  引き続き今日も廃墟の探索をすることにした。  城らしき建造物の壁などを触れ、指先で装飾をなぞる。そうしてわかる施された紋様は、だいぶ古いもののようだ。一体いつ頃に作られたものなのだろう。  そうしていると足下がぐらりと不安定になり、ボクは大きく体勢を崩した。  杖を片手によくよく気をつけていたはずなのだけど、ボクの乗った重さで老朽化した床が崩れたのだろうか。一気に崩れ、ボクは奈落へと落ちそうになる。  慌てて体勢を建て直し、ボクは瓦礫を足場に跳躍

          【Her Odyssey】21日目

          【Her Odyssey】20日目

          『スペードのジャック』  道を外れ、ボクは雑木林に足を踏み入れた。しばらく行くと開けた場所に出る。  ぽつぽつと建造物があるようだったが、触れてみるとそのどれもが朽ちている。集落跡というには狭いが、廃屋という感じではない。多分、城のようなものがあったのだろうと思った。  不思議な空気だった。ボクは周囲を調べながら、城の奥へと入ってみる。  その時だ。ふと、語りかけてくる声を聞いてボクは足を止めた。  声のした方向を探ろうとして、気付く。その声は多分ボクの頭の中でしているん

          【Her Odyssey】20日目

          【Her Odyssey】19日目

          『ダイヤの6』  田園地帯を抜けて暫し。ボクの感覚でも歩きやすい道が続いている。  集落という程ではないが、ちらほらと人も住んでいるようで話し相手にも事欠かなかった。泊まる場所を借りたりしながら、ボクたちはのどかな旅を続けていく。  やがて、一つの小屋のある場所に出た。話を聞くと、どうやら子供が病に伏しているという。  ボクは医者ではないが、魔術師ではある。何か役に立てることはないかと、少しだけでもと容態をみせて貰うことにした。  こういうのは持ちつ持たれつだ。  ベッド

          【Her Odyssey】19日目

          【Her Odyssey】18日目

          『ハートの2』  山道をしばらく行くと、様相は一変した。  道が歩きやすくなったのだ。石畳などで舗装されているわけではないが、それでも明らかに人の手が入っている。  気になって確認してみると、道の両端には広く田園が作られているようだった。  そうしてさらに歩いて行くと、人の気配も感じるようになる。 「やあ、旅人さんかい? 珍しいね」 「こんにちは。ええ、ちょっと砂漠の方から」  優しげな声に、ボクも挨拶を返す。どうやらこのあたりに住んでいる農民だそうだ。  彼らは旅の話

          【Her Odyssey】18日目

          【Her Odyssey】17日目

          『クローバーの7』   水と食料をしっかりと調達して、ボク達は早々に旅を続けることにする。  ロケットペンダントの入っていたパズルの箱が良い値段で売れたので、装備も少し新調できた。おかげで今日は足取りも軽快だ。  しばらく歩いていると、顔に当たる風が少し涼しくなってきた。木々の匂いを微かに感じる。  だからそちらの方向に向かって歩みを進めた。心なしか、キィ君もここ数日で一番元気な様子だ。  やがて踏みしめる大地が硬くなり、多少なり植物の根を足裏に感じるようになってくる。

          【Her Odyssey】17日目

          【日記】ケダモノオペラのサプリ続報が出てた!

          おわーーーー!! あーーーー!! うわぁーーーー!!!! ぎゃああ!! ■ケダモノオペラのサプリ予告が来たぞー!!もはや何が来ても嬉しいサプリメント。キツネヴィとメリッサがロルロル先行で来ていたので、ケダモノ種が増えるのは知っていたけどサブタイトルが『花嫁』でびっくりしちゃったな。 異類婚姻譚なのか? あの完成度の高いシステムにオプションルールが増えたりするのか?? た、た、楽しみ~~~~!! ■『英雄は負け知らず』遊んだ!叡智のミミルズクで行ってきました。とても、とて

          【日記】ケダモノオペラのサプリ続報が出てた!

          PBWの子で行く「つくもさんぽ」、プレイログ

          ●「はじめまして、こんばんは」  「ねぇ、起きなよ」  聞き慣れぬ声が耳元でして、俺はゆっくりと覚醒する。目を開けてもなお夢の中に居るような心地だ。それは、東京ではもしかしたら少し良くない兆候なのかもしれないが、声の主の姿を見た時不思議と危険なものだとは思えなかった。  ただ、やっぱり一目見て人間ではないとわかる容姿はしていたのだけど。  端的に言うなら、それは頭がインク瓶の形をした男だった。体格は俺と同じくらいに見えるからけっこうでかい。 「あんたは?」  寝起きの掠れた

          PBWの子で行く「つくもさんぽ」、プレイログ