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「あの子はテニスさえやってれば幸せだったのかもしれないですね」

この記事は688文字です。


精神科病棟勤務時代の患者さんのお話。

年齢性別は伏せてエピソードはフェイクいれます。


統合失調症の幻覚妄想状態で入院した患者さん。

高校時代は大好きなテニスに明け暮れる生活。


高学歴、社会的地位のある仕事をしていた父からは

有名大学進学と特定の職業に就くことを強く望まれ、

父が望んだところではないけど

有名大学へ浪人のすえ入学、卒業後は有名企業に入社。

入社後数年で統合失調症を発症したという方です。


この方の面会に訪れた母が言ったそうです。

あの子はテニスさえやっていれば幸せだったのかもしれませんね

同僚看護師からの申し送りで聞いた言葉です。

又聞きとはいえ忘れられません。

何が幸せなのか、自分でもわからなくなった瞬間でした。



少なくとも

テニスをしていた頃の患者さんは

母の目にはとても幸せそうに映ったのでしょう。

いっぽう、父が考えた幸せは、

安定した企業への就職とそのための学歴。

父は父なりの経験で手にした幸せがあったと確信していたのでしょう。

私にはそれが間違っているとは思えません。


ただ、そこに本人が望む幸せ像があったかどうかはわかりません。

本人の望む幸せ像について対話したのか。

本人はそれを主張できていたのか…。



将来の夢でも、今ある小さなことでも、

自分にとっては幸せなのかそうでないのか、

自分はどう感じるのか。

この患者さんはその大切さを教えてくれたような気がします。


今年の目標

「心地よく過ごす」を

日々意識していこうと思います。


事例の患者さん、

テニスでも、何でもいい。

「ああ幸せだな」と感じる時間が持てていることを願っています。


お読みくださりありがとうございました。

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