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なぜ、ゴール裏では「見えない・立たない論争」が絶えないのか

海外から有名チームを招聘する夏。例年の通りゴール裏では「見えない・立たない論争」が繰り広げられました。「見えない・立たない論争」は、座って試合を見たい人は目の前に立つ人がいて「見えない」、立って応援したい人は周囲に応援パフォーマンスに参加しない人がいて「立たない」と、双方ともにストレスをためる状況から生まれています。

「見えない・立たない論争」は終わることなき無限ループ

「立つべきか座るべきか」の論争には結論が生まれません。でも、立つ席を作るか座る席を作るか、その解決方法はあります。でも、それを実行するには、クラブや選手の決断とコアサポーターの理解が必要です。ここまで約30年間のJリーグをみる限りでは、その努力を貫いたクラブはなかったため「見えない・立たない論争」は終わることなき無限ループに陥っているように見えます。

先に結論を書きましょう。ゴール裏席に選手が行く習慣をやめれば、この論争に終止符を打つことができます。クラブが方針を打ち出し、選手がそれを実行すれば解決します。

ダイナミック・プライシングの導入で可視化されたことがあります。ゴール裏席は抜群にコスパが良いとされているのです。そのため、ダイナミック・プライシングが導入されているJリーグのチケットにおいてはゴール裏席の価格が他の席種の価格よりも高くなることは、それが当たり前のように起こります。特にコスパが良いのがビジター向けのゴール裏席です。なぜでしょうか。

選手たちがゴール裏にやって来る限り「見えない・立たない論争」は解決しない

ゴール裏席は試合を見るのには適さない席です。試合を見たければバックスタンドやメインスタンドの方が数倍良いです。だから、Jリーグでは開幕前からゴール裏席は立って応援パフォーマンスをしたい人たちが集まりました。見やすい席をきちんと試合を見たい人に譲ったのです。ところが、次第に選手たちはゴール裏にやってくるようになりました。今では、試合前、得点時、試合後、何度もやってきます。クラブによっては「得点したらゴール裏に行くように」選手に指導している場合もあります(Jリーグ以外のクラブで把握しています)。つまり、ゴール裏席は「最も価格(定価)が安いけれど、最も選手と近づける席」なのです。選手に近づくことを目的にすれば抜群にコスパが良いです。例えば、ビジター向けのゴール裏席は、選手たちにとって味方となる存在が集まるエリアなので選手たちからの感情がストレートに飛んでくる席となります。試合の見やすさを度外視すれば、これほど高い満足を得られる席は他にはないといえます。
海外から招聘したチームの選手たちがゴール裏にやってくるとは限りませんが、長年の積み重ねから、日本では「ゴール裏=選手に近づける場所」というイメージが浸透しています。

「見えない・立たない論争」が発生する原因は明確

「立つべきか座るべきか」といった考えを持つことなく、シンプルに選手と近づきたい人、選手の感情を受け止めたい人が、価格の安いゴール裏席のチケットを購入するのは当たり前。立つ人、座る人が混在し「見えない・立たない論争」が発生する原因は明確です。

そうした日本のスタジアムの自然の摂理を理解すれば「応援専用席」や「立ち見ゾーン」を設定するだけでは「見えない・立たない論争」が解決しないことを容易に想像できます。以前にJリーグクラブで働いていたことがあるえとみほさんがツイートした事象は、その典型的な例だといえます。

「見えない・立たない論争」は「ゴール裏はこうあるべき」という観念や夢に抱いた理想を語ることでは解決しません。原因を把握し、具体的な方法で解決するための決断が必要なのです。

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