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なでしこリーグ全20クラブのホームタウンを半年間で旅して

コロナ禍で自由な行動が制限されていた2021年に、私はなぜかご縁をいただいて20もの街を旅しました。女子サッカーアマチュアリーグの最高峰・なでしこリーグ1部・2部のホームタウンを取材し、なでしこリーグのオフィシャルサイトで連載をすることになったのです。タイトルは『日本全国なでしこリーグの街を訪ねて』。「もう、遠くの街を訪ねる機会など、2度とないかもしれない」覚悟を決めていた私にとって、青天の霹靂ともいえる機会でした。その連載は2022年2月に無事に終えることができました。

大雪の札幌も、イルミネーション工事が始まる福岡も

北は北海道から南は九州まで、なでしこリーグ1部・2部のホームタウンはあります。札幌取材は大雪の2日後だったので、地上を歩くのが大変だったです。伊賀取材は、伊賀市が予想よりも名古屋から遠くて驚きました。湯郷温泉は予想と少し違いました。姫路の駅前は、古い記憶と全く一致しませんでした。感染拡大状況が厳しく、関西地方の取材を大幅に延期した時期もありました。

最初に取材訪問した街は松山でした。穏和な気候、街の中心に名城を抱く城下町。昼前に到着し、夕方に帰る強行スケジュール。道後温泉の近くに移動する時間は全くありませんでした。それでも、多くの愛媛FCの選手が足を運ぶ飲食店に足を運ぶこともできましたし、図書館で、愛媛県の女子サッカーのルーツを調べることもできました。

最後に取材訪問した街は前橋でした。風の冷たい街。近いうちに駅前にタワーマンションが建設されるので、この街の景色は変わっていきそうです。新幹線の都合で朝早くに到着したのでTSUTAYA CAFEで時間を調整しました。TSUTAYA CAFEには岡山県の備中高梁駅前でも入りました。当初は代官山にだけあって珍しかったTSUTAYA CAFE。今、日本全国の何箇所にあろうのだろう。日本全国が、時の流れとともに表情を動かしていきます。

女子サッカーには人をつなげる力がある

『日本全国なでしこリーグの街を訪ねて』には、20都市、60名以上の「クラブを支える人々」が登場します。その属性はバラエティに飛んでおり、選手が通う温浴施設の支配人、市長、チーム設立当初からのスポンサー企業経営者、クラブの事務所がある地域の商店街役員、元選手……。どなたも、笑顔で、楽しそうに取材に応えてくださりました。共通するのは地域を愛する心。スポーツと地域コミュニティの親和性を、改めて感じました。

JリーグでもWEリーグでもなく、アマチュアリーグのなでしこリーグでも、スポーツクラブの存在は大きく、訪問先の皆さんは、東京から取材に行った私を親切に迎えてくれました。それが驚きでした。なでしこリーグのクラブは、小さなクラブばかりです。それでも、人をつないでくれました。選手を支えている飲食店での取材の際に、撮影のために注文したランチセットの代金を受け取ってもらえなかったこともあります。取材の翌日に、ホテルにお土産を届けてくれた人もいます。

行く先々の街で、私に、その地の名物や美味しい店を教えてくれる地域の人々、ネットで知った人々との関係も深まりました。数少ない宿泊地となった岡山市では、紹介されて立ち寄ったクラフトビール酒場で、サッカーに加えて、ユニバーサルプロレス(1990年から1992年まで存在したメキシコプロレスの団体)の話で盛り上がるという予想もできなかった体験まですることも。日本全国を巡る旅は私にとって貴重な財産になりました。

何が人を動かすのだろう

人の判断の根拠はロジカルなものだけではありません。こんな企業が、なぜ、このクラブをここまで応援しているのだろうと不思議に感じてしまうこともあります。でも、そのロジカルには理解できない行動が、ロジカルなだけでは動かない人の心を揺らして、新しいエネルギーを地域に生み出してしまうこともあります。どちらかというと、中途半端なロジカルに考えがちな私には、日本全国なでしこリーグの街を訪ねては、人の心を知る旅でもありました。ここまで生きて、知らないことが多すぎたことに気がつきました。

日本全国なでしこリーグの街を訪ねては地域と人の物語です。今一度、20クラブを訪ねる旅の文章を読んでいただければと思います。


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