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命名「リモーター」から感じる新しい価値を誰が創ろうとしているのか?

皆さんは川淵三郎さんにどのようなイメージをお持ちですか?・・・先駆者?老害?政治的?元日本代表?キャプテン?元日本サッカー協会会長?日本のスポーツに革命を起こした人?独裁者?サッカーだけでなくバスケットボールもプロ化した人?私は3度ほど川淵三郎さんとお話ししたことがあります。日本サッカー協会会長の時です。といっても、こちらは当時、サッカー界でもミジンコくらいの存在であったので、川淵三郎さんからは「ほー、ほー、ほー、どうも」とあしらわれる感じで「高い位置にいる人だなー」という記憶が残っています。

川淵三郎さんの功績の一つ「命名により既存の概念と決別し新しい価値を創出する」。

たかが名称、されど大きな意味を持つ名称。例えばJリーグがスタートしたときに新しい名称を発表し川淵三郎チェアマン(当時)はJリーグが何を目指すのかを強く印象づけました・・・。
●球団 → クラブ
●フランチャイズ → ホームタウン
●応援団 → サポーター

ただ名称が変わっただけではなく、プロ野球等とJリーグではスタンスが異なることを具体的に伝えたのです。川淵三郎さんは、高い位置から違った視点でスポーツ界を見てきました。名称を変えることは既存の概念との決別なのです。

逆に、名称(呼称)がないために失敗した例があります。
アベノマスク
正式名称、呼称が浸透していなかったために、批判的に誰かが使用した「アベノマスク」としか呼び方がないマスクになってしまい、悪い印象を日々拡大していきました。何か呼称を定めておくべきでした。

無観客試合に代わる名称はリモートマッチ!

2020年6月15日に日本トップリーグ機構は無観客試合に代わる名称をリモートマッチと発表しました。トップリーグ機構はボールゲーム9競技団体が加盟。Jリーグも加盟しています。理事長は川淵三郎さんです。無観客試合という言葉を変えたいと思った一番の理由は「選手とファンがつながっている意味を込めたい」と説明されています。

観客不在ではなくリモートで繋がっている試合に。

再開されたブンデスリーガでは、スタンドは無人であるものの、選手たちがスタンドに向けて勝利のパフォーマンスを行なっています。観客不在ではなくリモートで繋がっているのです。川淵イズムはスポーツ界に深く浸透しています。おそらく、各スポーツ団体で、単に名称を変更したにとどまらない挑戦が始まるのではないでしょうか。「無観客ではなくリモートだからこその課金(スポンサーからの支援を含む)」です。リモートマッチを新たなビジネスチャンスと捉えマーケットを拡大させていくかもしれません。

もう一つの名称はリモーター!

「リモートで応援するファン」をリモーターと命名しました。ここで重要なのは「リモートで応援するファン」であって「リモートマッチで応援するファン」ではないところです。2つの意味があると、私は考えます。

推察1:コアサポーター対策

サポーターの定義は曖昧ですが日本サッカー協会では下記の2つを正式に定義しています。

サポーター:熱狂的なサッカーファン、特定のクラブ・チームを支持する支援者。
ファン:一般的な愛好家。

「リモートで応援するファン」が「熱狂的」であるかというと疑問が生まれます。また「サポーター」と呼ぶとコアサポーター層から「リモートで応援するのはサポートじゃない!」と反発を受ける可能性もあります。既存の概念との整合性に加えて反発を防ぐための慎重な姿勢を感じます。

推察2:選手とファンの新しい関係性

日本トップリーグ機構が公式に説明しているのは、この「選手とファンの新しい関係性」です。この関係性を明らかにし、持っている価値を世間に伝えるには「リモーター」という名称が必要だったのだと思います。このことにより、例えば「リモーターに何を提供する?」「リモーターを増やすにはどうしたら良いの?」といった会話をスムーズにすることができますし、課金対象者としても五文字で説明することができます(「リモートマッチをリモートで観戦しているファン」という二十二文字の説明が不要)。

そしてもう一つ重要なのが「リモートで応援するファン」であって「リモートマッチで応援するファン」ではないところです。これから、スタジアムにサポーターが戻ってきてからもリモートで応援するファンは存在し続けます。そうしたファンも「リモーター」と呼び続けることができます。クラブは、これまでスタジアムに来場するファン・サポーターが主な課金対象でした。自宅で試合を視聴するファン・サポーターへの課金はDAZNくらいでした。ところが「リモーター」という新しい存在が名称と合わせて定義されたことで、スポーツビジネスに新しいマーケットが生まれたといって良いと思います。

身近なところでは「テレワーク」という名称が浸透したことでイトーヨーカドーに「テレワーク売り場」が誕生し、座椅子、イヤフォン、卓上照明といった、これまで日の当たりにくい場所にあった商品が表舞台にディスプレイされるようになりました。それと同じようなことが「リモーター」でも発生するかもしれません。

新しい価値を生み出そうとしているスポーツ界。サポーターはどうするか?

川淵三郎さんは83歳。スポーツの価値づくりに、今もパワフルな姿を見せています。Jリーグがスタートして27年。大きな転換期を迎えています。私は、できればJリーグに、この命名をリードしてほしかったですが、各競技団体が横並びでスタートすることを重視したら川淵三郎さんを中心に日本トップリーグ機構が先導するのが良かったのでしょう。

ところで、これまで、新しい価値を創出してきたサポーターやサポーター団体に、今、あまり目立った活動がありません。

スタジアムに行かれない、声を出して応援できない・・・確かにそうなのですが、サポーター側も新しい発想で次のアクションを起こすタイミングなのではないでしょうか。私の周囲では、リモートマッチの間も仲間とつながりを持ち続けるためのリモート観戦会等が計画されています。そんなときにDAZNが新プロジェクトを立ち上げましたね。

Jリーグは次の時代へ。

サポーター自身が価値を伝えたり、価値を創出するアクションをもっと起こしても良いのではないでしょうか。

ありがとうございます。あなたのご支援に感謝申し上げます。