日本でCOVID-19の在宅期間が神経発達障害児とその保護者のQOL(生活の質)にどのような影響を与えているか
貴重な論文が一つ出ました。日本の子どもの発達障害のQOLと親との関係性をCOVID-19の期間で検討した論文でです。今まで海外の論文ばかりで日本の子どもの話がほとんどありませんでした。やっと日本の子どものデータを扱う時代に突入してきたと言えるでしょう。時折、ネット・ニュースなどで出てくる情報は、対象があまりに不特定で研究とは言い難い情報でしたので、より科学性の高い結果が今後もっと出てくるでしょう。
こういった想定できる結果をちゃんと出してくれることが大事です。憶測や個人の感情で結論付けられてしまうことが多いですので、本当にありがたいです。
1. Ueda, R. et al. The quality of life of children with neurodevelopmental disorders and their parents during the Coronavirus disease 19 emergency in Japan. Sci. Rep. 1–8 (2021) doi:10.1038/s41598-021-82743-x.
本研究の目的
COVID-19の在宅期間が神経発達障害児とその保護者のQOL(生活の質)にどのような影響を与えているかを明らかにし、QOLの維持を可能にした要因を明らかにすることである。
対象と方法
学齢児136名(IQ50以上)とその保護者を登録し、QOLアンケートを実施して、子どもの不適応行動、保護者の抑うつ、不安、ストレス、日常生活の活動を評価した。
結果
子どものQOLと臨床的特徴との関連性を検討した。
子どもと親のQOLの低下は、母親の働き方の柔軟性(リモートワークなど)と関連していた。また、QOLの低下は子どもの睡眠リズムの変化と関連していた。
子どもの不適応行動は親のストレスと関連していた。しかし、仕事のストレスと睡眠障害という同じ条件に直面したいくつかの家族のQOLの維持は、親のストレスの減少、親の抑うつと不安の減少、および子供の不適応行動の軽度化と関連していた。
働き方を柔軟に変更できない母親も、子どもの睡眠リズムの変化も、子どもとその親のQOLの低下と関連していた。親のストレスが低いことは、子どもの不適応行動の減少と関連し、家族のQOLの維持と関連していた。