見出し画像

デジタルコンテンツ(SNS)発信に必要なこと②

ご挨拶

本記事にアクセス頂きありがとうございます。

このnoteでは、主に食関連のご商売を営む方々に向けて、インターネット通販(EC)による販売活動の成功に必要な考え方やスキルを発信していきます。
時代背景、考え方、マーケティング、実践的スキルにいたるまで、実用的な情報を複数回に分けて配信します。


このアカウントについて

このnoteアカウントは、三重県雇用経済部中小企業・サービス産業振興課による委託事業である『インターネット通販サイト販売促進支援事業』にて運用されています。

三重県内の食関連事業者の皆様が、今後効果的にインターネットを活用した販売活動を進めるうえで役に立つ情報を発信していきます。


さて、前回までは、「デジタルコンテンツ(SNS)発信に必要なこと①」をテーマに、テキストコンテンツ作成の準備についてお伝えしてきました。

※詳しくは、関連記事をご覧ください。

今回は、その後編として「テキストコンテンツを用いた、プロセス情報の発信」をテーマに、情報をお伝えします。


プロセスエコノミー

「プロセスエコノミー」という言葉をご存知でしょうか。

プロセスエコノミー:「プロセスを共有するところがお金を稼ぐメインとなる」ということ。従来の常識である「完成品としてのアウトプットを売る」という「アウトプットエコノミー」の対極にある考え方。

画像2


食品をはじめとする商品の価値についても、現代では多くのユーザーにとって、完成品としての「モノ」よりもむしろ、「過程(プロセス)」に重きが置かれつつあると認識されています。
プロセスが応援され、評価される時代になりつつあると考えられている、ということです。

※「プロセスエコノミー」については、過去の記事でも触れています。

プロセスエコノミーが重視されるビジネス環境においては、「過程にお金を払いたくなる」ようなストーリーをマグネットに「ファンをつける」という状況をつくることが、特に重要な目標になります。

例えば、食品などについては、コロナ禍においては事実、直接食べてもらう(試食してもらう)機会の設置は難しくなりました。
また、立ち上げたばかりのブランドであれば、大手のブランドと比較して認知度に乏しく、お客さんに手に取ってもらうまでのハードルは低くありません。

画像3

そういう状況に中では、自分の商品の魅力を「モノ中心」にアピールしても、既に同様の競合商品がお客さんの食卓に入り込んでおり、その牙城を崩すことは難しいという現実があります。また、価格の面では、安い商品がスーパーの店頭にたくさん並んでいます。さまざまな事情から、市場における「違い」をユーザーに見せることが、難しくなりつつあります。これは、食品に限った話ではありません。

このような、完成した食品などの商品(モノ)の産地、素材、製造行程、機能、価格等の定量情報(=絶対情報)だけで「違い」を説明することが難しい状況に対応するために、その商品(モノ)にまつわる全ての過程(企画・製作からお客様の手に渡るまでの全ての過程)で、その商品に関わる様々な「違い」や「オリジナリティ」を積極的に魅せることで多くのユーザーの共感や応援したい気持ちを想起させ、結果的にビジネス的なメリットを事業者サイドも得られることから、「プロセスエコノミー」が注目されるのです。そして、そのプロセスが評価される(ポジティブに違いが伝わる、強い共感を生む、など)ことで、商品に対する強い認知やファンやロイヤル顧客を獲得することにつながることが多くあります。

画像4

クラウドファンディングなどのサービスは、発起人の活動を応援するという意味で、まさしく「プロセスエコノミー」の一つの象徴であると言えるでしょう。

クラウドファンディングのホームページをご覧いただければお分かりいただけると思います。そこにあるのは「商品情報」だけではなく、クラウドファンディング発起人や関係者の苦労話や挫折、そしてそれらを乗り越えた先の夢や挑戦など、様々なヒューマニズム溢れるエピソードや記事が多数記されています。
これに課金をする人たちは、「商品」だけではなく、「夢や挑戦」に賛同や共感、応援の意味を込めてお金を出しているのです。

ただし、ただ単にクラウドファンディングを組成すれば、プロセスエコノミーを戦略的に活用、成功していると言えるでしょうか。
答えはノーです。現実には、様々なプロジェクトで示す「過程(プロセス)」がどれほど魅力的なのか、という別の軸の競争が発生しているのです。そして、魅力的なプロセスを伝えるうえで、欠かすことのできないツールの一つはやはりSNSです。
また、SNSを通じて発信するコンテンツとしてテキストや写真がターゲットの心に訴える内容や質であることが重要な意味を持ちます。

画像7

あらゆるプロセスは価値になる

ご商売を営んでいく中では、様々な苦労に直面するでしょうし、新しい事業に取り組む際には、良いことも、悪いこともあるのが常です。

準備や構想、資金・仲間集めにはじまり、企画やテスト、販売活動などを推進していく中で、思った成果があがらないことや、チームでの対立、経営資源の不足など、挙げればきりがないかもしれません。

思い返してみれば一つ一つがコンテンツになり得る「プロセス資産」なのです。「プロセス」による価値づけを目指す視点では、これらの「苦労」もまた、立派なコンテンツになるのです。
様々な苦難を乗り越えて、それでもなお実現したい世界に向けて、みなさんが懸命に努力する姿は、顧客を惹きつけることでしょう。

また、食品の作り方や、使い方などのユーザーにとってベネフィットとなるような情報も一つのプロセスと言えます。これらを分かりやすく、丁寧に、ターゲットが心地良く感じる質や内容で伝えることも良質なコンテンツになり得ます。
単なる工程の説明ではいけません。その表現方法や映像、文章の質にも大いに気を配る必要があります。
その食品づくりに込めた思いやこだわりを伝えることで、消費者はその商品から生まれるストーリーに没入し、共感をするようになるのです。

画像5

もちろん、無理やり苦労話をでっちあげてはいけません。
商品に対する思いやこだわりをユーザーに押し付けても共感は得られません。
あくまで、みなさんのビジネスにおける価値を生み出す過程を「見える化」し、その過程に光と愛情を持った眼差しをあてて、魅力的に伝えていくという姿勢で継続的に取り組むと良いでしょう。というのは、すべてのプロセスが、すべての消費者にとって魅力的に映るとは限らないからです。届けるべき相手にきちんと届く内容とすることが必要ですし、SNSに於いては継続的に発信し続けることが何よりも重要です。
続けていればいつか日の目を見ることもあるかも知れませんが、
続けない限り決して奇跡は起こらないのです。

「誰に届けたいのか」「誰に届けるべきなのか」

届けるべき相手とは、そう、「ペルソナ」です。自分たちのコンテンツが、ペルソナに対して共感を呼び起こすようなプロセス情報となっているかという視点で、常に検討、修正していくことが必要となります。自分たちのプロセスの中から、ペルソナに深くささるものをいくつか抽出して、それぞれについてコンテンツ化することが重要です。

※「ペルソナ」については、過去の記事で取り上げています。


人はなぜプロセスに魅せられるのか

本記事の冒頭から、「過程(プロセス)への価値づけ」の話をしてきました。では、私たちは一体なぜ「プロセス」に魅せられるのでしょうか。

その理由としては、「プロセス」には、私たち(消費者を含む)の「心理的高揚感」を醸成する要素が含まれているためです。具体的には、

・共感

・感動

・応援

・自己肯定

といった要素です。これらの感情は、顧客にとっての「心理的ベネフィット」そのものなのです。
上記の感情が心の内奥に沸き起こると人は満足感や充足感、多幸感を感じます。
この感情を湧き上がらせてくれる対象(ひと・もの)に対して人は「信頼」や「愛情」を抱きます。

心理的ベネフィット:ポジティブな気分や、共感する気持ちをつくり出すベネフィットです。主に感覚が誘発する高度なベネフィットであると言えます。

画像1

※「ベネフィット」については、過去の記事で取り上げています。

つまり、適切な「プロセス」の発信をターゲットに届けることで、ターゲットに「心理的ベネフィット」を誘発することができるのです。ゆえに、「プロセスの発信」を制する者が、「心理的ベネフィット」を制すると言っても過言ではないでしょう。

画像8

自分たちだけの「プロセスコンテンツ」を見つけるために

プロセスと一口に言っても、捉え方や視座は十人十色で様々です。
例えば、事業者の皆様が、自社の食品を「製造するプロセス」もあれば、それを顧客に対して「販売するプロセス」もある。更には、顧客自身の立場に立ってみると、その食品を「食べるプロセス」や、食べた結果、生活がどう変化するかといった「日常のプロセス」もあり得る訳です。ここの捉え方は、自社にとってのペルソナのライフスタイルを含めて、あらゆる角度から「人生のプロセス」を考えていくことも必要となります。

そして、ターゲットの「人生のプロセス」と事業者自身の「人生のプロセス」がリンクするようなコンテンツを生み出すことを常に考える必要があるのです。

プロセスを発信する手段としての「note」

本記事を書いている「note」ですが、その運用タイプには様々なものがあります。

企業型:企業全体が発信者として、広いテーマで取り組んでいるもの。
部門型:事業部レベルが発信者として、特徴あるテーマを取り扱っているもの。
ファンコミュニティ型:企業や商品に加えて、ユーザー自身も発信者としてコンテンツ生成に関与しているもの。
代表者型:企業の代表者の考え方やライフスタイルを中心に、発信するもの。
自治体型:自治体による、地域情報を扱っているもの。


さまざまな型が存在しているものの、noteを運用するうえで意識したいのは、noteは基本的に「個人ブランディング」の手法に強みを発揮するメディアであるということです。

誤解のないようにお伝えしたいのは、これは、企業のブランディングにnoteは適さないということではありません。企業のブランディングに活用する際にも、発信者が「企業自身」である場合、主語が大きすぎて適さない可能性があるということを意味しているにすぎません。
企業の冠を付けたコンテンツはどうしても「宣伝」に見えてしまい、
読者にとって無条件に敬遠されることも少なくありませんし、また、個人レベルの経験や見解を「企業の公式」として発信するのも企業側のマネジメント視点で言うと難易度が高かったりします。

ですので、企業のブランディングにnoteを活用する際には、発信者は「企業全体の代表者」と言う立ち位置ではなく、
まずは「企業の中の個人」という単位に軸を置き、「中の人」の個人的な体験やプロセスを中心にコンテンツを生成することをお勧めします。
実際、SNS等ですでに多くのファンを獲得している大企業アカウントの多くはその手法を活用しています。
もちろん、あくまでファン醸成の観点で言えば「その方が望ましい」と言う話ですので、絶対にこうすべき、と言うことではありません。
しかし、この傾向はnoteに限らず、さまざまなSNSでも同様です。
この「プロセス・エコノミー」的特性を理解しながら企業としてnote(や他のSNS等も)運用することで、効果もまた高まるでしょう。

そして、「中の人」の体験が具体的で特殊で面白くあればあるほど、より深く顧客に届く可能性があります。
その特異性や特殊性を理解する「コア」な人に届けば良いのです。
すべての人々に広くあまねく情報届ける必要は、ファンとの密着度を高める戦略には必ずしも必要ではないのです。

画像6

テキストコンテンツマーケティングとは

これまで見てきた通り、中小企業が活用するテキストコンテンツマーケティングにおいては、基本的には発信者が企業や団体であっても、「個人ブランディング」と言えるような「個人レベル」のエピソードにまで落とし込まれた、ニッチなマーケティング手法を用いることがポイントとなります。

具体的には、企業や団体の考え方のような大きな題材のままではなく、
従業員等のスタッフが「日々私たちはこんなことを考えながら仕事しています」「仕事していたらこんなことありました」にまで落とし込んで、咀嚼した情報を発信することが必要である
ということです。つまり、抽象的な企業のビジョンを語るだけのコンテンツや、商品のスペックばかりを一方的に発信するのでは不十分なのです。企業のビジョンを理解した従業員は、具体的にどのように考え・行動し・体験するのかを日常レベルのプロセスとして記述することで、より解像度の高いメッセージとして、顧客の共感を呼べる可能性があります。

繰り返しになりますが、企業単位の発信では「主語が大きすぎて」、読者(ターゲット)に届かない可能性が高いのです。噛み砕いて、個人の体験として発信することで、個人である消費者にも届くのです。

画像9

まとめ

今回は、効果的に共感を生み出すコンテンツの生成に欠かせない「プロセス」に着目することが重要となる背景と、その着眼点をお伝えするとともに、発信する際の注意点をお伝えしました。

企業のブランディングに際して、テキストコンテンツを用いる場合、企業として情報を発信するのではなく、コンテンツを生成する担当者が「企業の中の人」として率直に感じる感想や体験にこそ、価値があるという点について、ご理解頂けたと思います。

特に、食品に関しては、消費者(ユーザー)はあくまで「個人」です。最終的に消費するのは、確実に「個人」です。ですので「個人」が共感するコンテンツを生成し、届けなければなりません。その際、情報を発信する主体はの目線が「個人目線」である方が、より共感を呼びやすいということは極めてわかりやすいロジックでしょう。

みなさんのテキストコンテンツの作成にあたり、参考になれば幸いです。

次回以降は、SNSでの発信コンテンツとして「写真」の活用方法についてお伝えします。


今回は以上です。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

引き続きよろしくお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?