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仕事とは何かを考える(2)

植木等大先生は「サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ♪♪」と唄ったが、そう思う。ただ、それには「日本では」という枕詞が付く。 私はアメリカでもサラリーマンを7年程やったが、その間に一時解雇(Lay Off)が6回あり多くの仲間が辞めて行った。勿論、パフォーマンスを理由にした解雇は日常的に行われており、「あ、こいつ長くないな、、、」と思って見ていると3ヶ月~半年で居なくなったりした。 当の私はどうかというと下っ端のままでうだつがあがらず、大手企業(顧客)から流れてくる優秀な人材やPh.DやMBAといった立派な学歴を引っさげた新卒に待遇面で抜かれて行った。私は給料が他の同僚と比べても明かに低く、「貰っている給料に対するパフォーマンス(コスパ)は誰よりも高い」という自信があったのでそれほどクビになる事は心配していなかったが、やはりなんとなく不安定というか、「仕事」という切り口で人生を見た時には心が安らぐ事は無かった。

バブルが弾けて、終身雇用が崩れ、日本のサラリーマンもうかうかしていられない時代に突入した、、、といわれて久しいが、今日をもってしても日本でサラリーマンをやっていられれるのであれば少なくとも先行きの不安からは逃れる事が出来る。どちらが良いとか悪いとかという判断は一概に出来ないが、一言で違いを言えば、「人を変えて新陳代謝を繰り返し会社を残す米国」と「人を変えずにゆっくり会社の寿命を終わらせる日本」という感じだろうか。自分が乗った船が沈まない限り自分だけが荒波に投げ出される事はほぼ無い訳で、自分が乗っている間だけでも沈没を免れればその人生は成功したと言える(私はそうは思わないが)。路頭に迷う事なく穏便に社会人人生を終える事が出来るという意味で後者を好む人が圧倒的マジョリティではないだろうか。

少し話が逸れるが、「やり方が姑息」「セコイ」と非難されている携帯料金値下げの話でも大手3社が徹底的に人員削減(含む代理店)をして業務の効率化を断行すればあっという間に値段は下がる筈だ。色々言われているが、多分簡単には進まない。結局の所、抱えている社員の数が多く、彼らを養っていく為には徹底的に消費者から利益を吸い上げる必要が、これだけ独占的に勝っている業界でもあるのだ。昔は「家族的経営」とか言ったのだが、今風にいえば「メンバーシップ型経営」で、会社はメンバーである社員を守る事を条件に人を集める。通信業界の様に独占色が強い業界やGAFAの様に時価総額が圧倒的な会社であれば、多少エンドユーザーに不満を持たれても会社自体が危機に陥る事はない。そんな会社のメンバーになれれば滅多なことでは路頭に迷わず将来安定して行けるはずである。一昔前の公務員とメンタルでは通じる部分があるのかな、と思う。

コロナで働き方改革が進み、その過程で「仕事をしていない」サラリーマンがクローズアップされる様になった。中間業務を担う部署や中間管理職などがよくやり玉に挙がっているが、正確には「仕事をしていない」のではなく、「組織の構造や会社の都合で作られた仕事」に従事している人達であり、当然その労力に見合った給料は貰うべきだし、ましてや今すぐに切り捨てるべき人達でもないと思う。ただ、心配なのは、これは自分も若い時にそうだったのだが、自分がそういった仕事をしているという事に気が付かない事がある。特に前出の通信関連やGAFAの様に圧倒的な強さを維持する大会社に長く居ると、その可能性は高くなる。 管理職になり、敵が増え、歳をとり、予想より遥かに早いタイミングでメンバーシップをはく奪された時に自分の社会的存在価値の小ささに愕然とするかもしれない。専門性を磨く事は大事であるが、誰もがその時代に重用されるスキルを身に着けて社会に出る訳でもなく、またそうした仕事に就ける訳でもない。ただ、そこに気付けば会社を放り出される前に少しずつ方向修正は出来る筈だ。

経験的にここに気付きを与えるポイントはいくつかあると思う。
① 自分と同じ様な仕事をしているプライベートの友達はいるか? 又は友達の会社でそうした仕事をするポジションはあるか?
② 社内で自分と同じ仕事をする同僚及び自分の業務の前と後の仕事をしている人達(社内顧客)が取って代われる仕事が自分の職務内容にどの位含まれているか? 重複している業務が何%位あるか?
③ 実は②の人達がするべき仕事を奪っていないか? 
④ その業務に専門知識又は学校に行かないと習えない様な能力が含まれているか?
⑤ 会社の看板が無くても、又は取り扱い製品が変わってもその仕事で一目置かれる自信はあるか?

私の場合はこの気付きに加えて、冷遇されていた(されていると思い込んでいた)事、そして何の根拠もないまま20歳頃から「35歳までには独立する」と決めていた事で2000年、きっちり35歳の時に独立してしまったが、わざわざ自分を危機を晒す事はない。サラリーマンでやっていける人は軌道修正してサラリーマンという枠組みの中で「ちゃんとした仕事が出来る人」になればよいのだ。 その後、事業に失敗した私も結局またサラリーマンに戻り、コツコツと働いたのであった。


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