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読書感想:黒聖女様に溺愛されるようになった俺も彼女を溺愛している 1 (HJ文庫 )  著 ときたま

【捻くれた心の本性は、素直になれない照れ隠し】


【あらすじ】
家事万能腹黒聖女様と無愛想少年のじれったい恋物語。


一人暮らしをする月代深月の隣の部屋には、聖女と呼ばれる一ノ瀬亜弥が住んでいる。

ある日、階段から足を滑らせた亜弥の下敷きになった深月は、お詫びとして彼女にお世話されることに!?



「あーんなんてしてあげません。お断りです。鼻に詰めますよ」

(助けてくれたけど……あーんは恥ずかしいですし……)

本当は素直に感謝したいが、不器用な甘え方しかできない亜弥。

そんな亜弥の本心を見抜いた深月は、彼女を甘やかそうと決意!

毎日毎晩、休日もずっと溺愛され溺愛する日々が今始まる――!

Amazon引用


唐突な事故から聖女を救う事で始まる物語。


自分が好意を持つからこそ、好きな相手に意地悪して天邪鬼な態度を取ってしまいがちである。
唐突な事故で、負傷してしまった深月の世話をする事になった亜弥。
家事が壊滅的な深月に代わり、掃除洗濯炊事と万能な能力を遺憾なく発揮する亜弥。
甲斐甲斐しい献身の束の間、捻くれた二人のじれったい歩み寄り。
何気ない日常に感謝し、感謝出来る彼らだから。
互いが無くてはならぬ程の溺愛した関係を築ける。

本当は素直に感謝したいが、不器用な甘え方しかできない亜弥。
そんな亜弥の本心を見抜いた深月は、彼女を甘やかそうと決意する為に取る行動。

だが、すぐには、恋人の距離感と変わらない関係にはならない。
亀の歩みの如く、ゆっくりと互いの事を知っていき、自分の心も開示していく。
点滴穿石のように、その小さな歩みが互いの心に築いた分厚い壁を穿っていく。
それに、気心知れた互いに遠慮のない軽口を叩き合う事で、張り詰めた心が緩み、不器用でも素直になろうと思えてくる。

目立つことを極力嫌い、ひっそりと生きていきたい深月。
クラスで唯一の友人である明と、その彼女である日和くらいしか関係を持たず。
人間関係は省エネで過ごしていた彼はある日、「聖女様」との異名で呼ばれる、学校一の美少女、亜弥が高熱による意識混濁で階段から足を踏み外して落ちてきたのを、期せずして救い。
受け止めた時に手首を痛めるも、何とか受け止め、そのまま保健室まで送り届けた後に別れ、関係は終わった筈であった。

だが、それでは終わらなかった。
一人暮らしを営む部屋のお隣さんである亜弥を避けきる事は出来ず、ひょんな事から自分が怪我している事と、自身の生活能力の無さを露呈してしまい。返すべきものを返すと言う名目の元、亜弥に生活をサポートされる事になる。

非難の雨に晒される彼女を助けようと、わざと汚名を被る事もあった。
そんな何気ない日々が続く中、深月は亜弥が誰にも見せぬ素顔に迫っていく。
聖女様の仮面の裏、そこに隠れていたのはまるで毒の花。
感情豊かで世間知らず、毒舌で腹黒いという見る人が見たら卒倒しそうな姿。

しかし。それは深月も似たような物で。
自身も一人を好むからこそ、どこか周りに壁を作っている。
まるで鏡写しのように似た者同士。
互いに無理に歩み寄る訳じゃない、何気なく近づき驚いたように離れ。
曲者で面倒な心を持つ二人だからこそ、その触れ合いはひどくもどかしい物。

だが、そんな日々がいつの間にか特別になっていく。
なっていくからこそ、彼女が傷ついても虚勢を張れば気になってしまう。
訳も分からぬけれどそれでも確かに嫌だから。
未だ向ける感情は分からずとも、大きな存在となっているのは確かだから。
だからこそ彼女の為に、柄にもなく奔走してしまう。
焦らずとも良い。
素直になれない照れ隠しを越えて。
ゆっくりと何気ない日常を積み重ねる過程の中で、互いのパーソナルな部分を知っていく。

優しさと不器用さを併せ持つ持つ彼らの間柄をどう進展するのだろうか?




 



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