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読書感想:腕を失くした璃々栖 ~明治悪魔祓師異譚~ (角川スニーカー文庫) 著 明治 サブ

【傍らに愛を伴って、煉獄の果てに覇道なる未来を切り拓け】


【あらすじ】
◇明治三十六年十一月一日/神戸外国人居留地

悪魔祓師の神童・皆無は、軍の任務中に心臓を貫かれ致命傷を負った。死にゆくなか、どこからか心地よい声が響く。

「人の子よ、そなたに第二の心臓を呉れてやろう。その代わり――予と煉獄の先の覇道へ、ともに征こうぞ」
現れたのは、天使とすら見紛う少女・璃々栖。「七つの大罪」に名を連ねる悪魔で――そして、彼女には腕が無かった。

悪魔の力と引換えに、璃々栖と一蓮托生の命となった皆無。二人の旅路の果ては、煉獄での終焉か、未来を掴む覇道か――。
明治悪魔祓師異譚『腕を失くした璃々栖』、ここに開幕す。

Amazon引用
登場人物紹介

陸軍の少年と悪魔の少女が契約を交わす物語。


ザンギリ頭を叩いてみれば、文明開化の音がする。 その文言が表すように。
鎖国と江戸時代が終わり、世の中のありようも何もかもが変化していった時代。
明治。
それは、日本の歴史の中で一番文明が黎明し、混沌の坩堝と化した激動の時代である。
明治三十六年、世の裏は未だ闇に満ちて。
世の裏で暗躍するのは、この世に渡り来た悪魔達。別世界の脅威である悪魔を狩るのは、大日本帝国の陸軍の特殊部隊。
その一員であり九尾の狐を使役する名家の出でもある最年少少佐、皆無。
そして、神戸にて悪魔祓師の神童と謳われた皆無は、悪魔、アンドラスにより致命傷を負わされ、瀕死の傷の中で。
死の淵で願う、生きたいと言う原初の渇望。
七つの大罪の異名を持つ璃々栖と悪魔の契を果たす。

彼女の力を借りアンドラスを見事、討伐し。
彼女と共に監視対象となるも、腕を失くした彼女に振り回され街へと連れ出され。
人間の文化に興味津々の彼女に、人間の文化を教えながら。
それはまだ少年である皆無にとっては、初めての女性との蜜月であり、幸せな時間であった。
しかし、そんな時間は長くも続かない。
突如として襲来した空中要塞。
その主であるサブナックは璃々栖の身柄の引き渡しを求める。
皆無達を巻き込む事を望まない璃々栖に、それでも共に来て欲しいと願われども、皆無は人間サイドに立つ事を選び、二人は離ればなれとなる。
それでも、彼女の眷属である聖霊から伝えられたのは、璃々栖は皆無の自由意思を尊重したという事。その思いを受け止め、皆無は改めて璃々栖の傍に居る事を誓う。
奪われた腕を探し求めながら、自分達を引き離そうとする全てからの逃避行が幕を開ける。

各々が失った物を取り戻す為に一蓮托生となり、障壁なる悪魔を切り倒し。
煉獄のその先にある覇道を目指す。
積み重ねられた屍山血河を踏み越えて、傍らに愛を伴いながら。
厳しい死闘の中で、皆無の師匠である愛蘭。
父親である正覚までも渦中に巻き込み、悪魔に身を転じようと、守るべき物の為に文字通り死力を尽くす。

悪鬼、悪霊、悪魔と交わりながら、その術で終わりなき闘争を繰り広げる世界で。
絡みつく幻惑的な因果を飛躍し、神さえも反逆する大罪を犯す。

璃々栖との邂逅により悪魔の力を手にした皆無が、跳梁跋扈する悪魔や妖怪を斬り伏せて、彼女と共に地獄への旅路を歩んでいく。
そんな中で知る事となる、傲岸不遜に見えた璃々栖の仄暗き陰鬱な過去。
同志の謀反により、親族を根絶やしにされ、己の右腕すらも切り落とされ、心と身体を凌辱された事実。
絶対的な王として卑小な人間である皆無を支配して、屈服させようという悪魔から、彼女が国を追われて、父や身近な人々を無惨に殺されながらも。
悲劇にめげずに負ける事無く毅然と立ち続け。
虎視眈々と復仇の機会を狙っている貴種流離の英雄へとめくるめく印象の変貌を遂げていく。

そんな彼女の生い立ちに強く引き寄せられる皆無。
明治男子として、立身出世と栄達を志すのは己の本懐であり、理想を体現してくれる璃々栖に命を尽くして戦えるのは何よりも誉れである。

最初の目的は文字通り、失った右腕の代わりとして、皆無を祖国奪還の手駒として使い潰す目論見を立てていた璃々栖が、自分の全てを犠牲にしてまで璃々栖の目的に寄り添ってくれる皆無に、徐々に別の感情が芽生えていく。
その関係は主と使い魔という概念を越えて、暗く淀んだ世界で生きる目的を見出していく。
悪魔でも、人でも構わない。
璃々栖の隣で生きていたい。
彼女が唯一、自分の欠けていた心を埋めてくれて、人間らしくしてくれたから。
その皆無の切実な覚悟が、迫り来る強靭な宿敵を打ち破る刃となる。

心と心とで繋がった最強のバディだからこそ、互いを失う事以上の哀しみや恐れは存在しない。
たとえどれだけ、不気味で畏怖すべき敵が現れようとも。
失った腕を取り返し、力を取り戻す事だけが目的ではない。
取り戻した腕で力一杯、皆無を抱擁してあげたいから。
そんな彼らの絆を邪な眼で睨みつける、黒幕の悪魔が糸を引く世界の危機。
生きる意味も死ぬ覚悟も、己が命の使い道も全て自分で決める。
それこそが、異譚の中で見つけた浪漫。
璃々栖という愛の切り札を手にしたからこそ、混沌と化した世界でも、己を見失わずに渡り歩ける。

大切な物を奪い去った世界に復讐を果たし、真の意味での幸福な未来を掴み取る事が出来るのだろうか?

















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