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読書感想:ハリボテ魔導士と強くて可愛すぎる弟子 (MF文庫J) 著 鬼影スパナ

【舌先三寸、はったりかまして、綱渡りを生き残れ】


【あらすじ】
弱冠八歳にして『ステータス魔法』を開発したタクトは、特級魔導士に認定され、王国中で知られる存在になった。
しかし、自分のステータスを見て愕然とする。
「MPがたった『5』しかない……!?」
魔導士として生きることに見切りを付け、杖職人になると決めたタクトだったが、家督を継ぐために魔導学園だけは卒業する必要があった。
十五歳となり、足切りレベルの魔力量で学園に裏口入学したタクト。
実力がバレて退学になれば破滅しかない状況で、タクトは強くて可愛い弟子兼メイドのマルカをはじめ個性豊かなヒロイン達と共に、偽りだらけの学園ライフに挑む!

Amazon引用


天才が実力を隠し、学園を奔走する物語。


早熟の天才は得てして世界から叩かれる風潮がある。
魔術としての根幹、ステータス魔法を開発したタクトは華々しく特級魔導士としてデビューするが、己のステータスに愕然とする。
早々と魔道士を諦めて、杖職人として生きていく為に、魔導学園に入学するタクト。
実力が周囲に知られたら即退学という綱渡りの生活なのに。
弟子を名乗るマルカの要らぬお世話により、平穏は虚しく潰える。
そんな勘違いや誤解を経て。

天才的な才能を持つ事は間違いないが、露骨に致命的な欠陥を抱えていて、それを工夫と運と勢いで誤魔化しながらのらりくらりと苦難を対処していく。
自分の力ではどうにもならなければ、力のある他者に力を仰ぐ事も辞さない柔軟さは、立派な戦略の一つで。
その姿勢はまさにハリボテ、または張子の虎。

魔法や魔導士、そして魔物が存在する割とスタンダードな舞台である異世界。
かの世界に存在するリカーロゼ王国。
この国において歴代の筆頭宮廷魔導士を輩出する名家の出であり、自身もまた八歳の時に「ステータス魔法」と呼ばれる魔法を開発し、「特級魔導士」の称号を得る。
だがそのステータス魔法は、どう見ても魔力数値が「5」しかないという魔導士としては致命的に過ぎる弱点を突き付けてきたのである。 

個人に望むのは、穏やかに隠居する事。
その為の方法として、杖職人の道も見出している。だが家の後継ぎという立場は捨てられず、捨てる為には指定の魔導学園を卒業し、当主になった後できちんと次代に受け継がせるしかない。
通信制の学園に入学するも、認可取り消しという事実に一蹴され。
タクトは王都にあるオラリオ魔導学園に入学するしかなくなる。
学園長の友人である祖父の口利きにより裏口入学を果たし。
それでも目立たぬよう、身の丈に合った生活をするはずだった。
だが、弟子を名乗るマルカの余計なお節介により、誤解とすれ違いが加速していく。

師匠の秘密を知らぬからこそ、無自覚に師匠を持ち上げてその思惑を斜め上に勘違いした方法で語り。よりにもよってそれが受け入れられる事で、彼の気づかぬ間に勘違いの下地が整っていく。
知らぬ間に、何も知らぬ級友達から崇められていく。
彼女によるドタバタに振り回されながらも、図書館の主であるネシャトと魔力を増やす研究をしてみたり。
魔眼持ちの苦学生、カレンに秘密を見破られて押しかけ弟子になられたり。
これ以上ない程にドタバタが続き、いつも目の前に現れるのはどう足掻いても強敵ばかり。
だが、何故か彼はいつも乗り切っていく。

彼の力となるのは、ハリボテの源である幻覚魔法しかないのに。
苦境を乗り切れるのは何故か?
それは幸運と呼ぶべきか、悪運と呼ぶべきか。
何にせよ、まるで神がかりのようなボタンの掛け違えとすれ違いの果て、何故か彼の元には必ず勝利が転がり込んでくる。

出来る事はまず限られる能力なのに、誤解ばかりが積み重ねられていって、いろいろと運良く辻褄が合って乗り越えてしまうタクトの元に引き寄せられる厄介な問題の種。
天才的な実力を持ちながらも、それをひた隠しにする中で、創意工夫を交えたやり方が新たな火種を呼び寄せる。
平穏な生活を望む物の、世界はまだまだ彼を放ってはくれない。


タクトは無事に学園を卒業出来るのだろうか?






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