見出し画像

読書感想:姫騎士様のヒモ3 (電撃文庫) 著白金 透

【太陽の光さえ届かぬ深淵で、この命綱をけして離さない】


【あらすじ】
最弱のヒモは主を救うため、日の光届かぬ迷宮へ挑む――!
「マシュー、助けて。いやだ、死にたくない……」

「俺は君の命綱だ。何があろうと、どんなに深くに沈もうと、俺が必ず救い上げる」

灰と混沌の迷宮都市。数多のモンスターと財宝を孕むダンジョンの鮮烈な灯り。その影には、必ず害虫が潜む。

姫騎士アルウィンのため、密かに手を汚し続ける元冒険者マシューも、この街に数いる害虫の一人だ。

悪徳の街を揺るがす魔物の大量発生――スタンピードの兆候。世界最後の大迷宮『千年白夜』内に取り残されてしまったアルウィンを救うため、マシューは決死の覚悟で太陽の光が届かぬ地へと潜る。立ちはだかる危機の数々、凶悪なモンスター、そして下劣な『伝道師』の魔の手が……呪いを抱えた最弱のヒモは、かつてない困難を前にどう立ち向かうのか!

一人の『ヒモ』とその飼い主の生き様を描く、衝撃の異世界ノワール第3弾!

Amazon引用

大迷宮で遭難したアルウィンを決死の覚悟で救う物語。


前回の迷宮入りで、邪悪な呪いを宿すマシューに出動要請がかかる。
最愛のアルウィンが、世界最後の大迷宮に取り残されたのだ。
太陽の光さえ届かぬ陰鬱な地で、泥を這いずる様に、捜索を開始する。
しかし、立ち塞がる危機的状況。
邪悪な魔物達。
仲間さえ信頼出来ない転落の中。
マシューのアルウィンへの忠誠が試される。
己の身を顧みない暗躍の中、下劣な伝道師の魔の手が迫る。
魔物の大量発生によって『戦女神の盾』はあっさり壊滅。
ただでさえギリギリのアルウィンが耐えられるわけもなく、『迷宮病』を晒して権威は失墜。

迷宮から救い出したアルウィンは迷宮病を再発しまったく戦えない身体になってしまった。
彼女の心を取り戻すためにマシューは彼女の故郷のマクタロードに向かうことを決める。
数々の苦難や死線を潜り抜け、アルウィンが強くなろうとしたきっかけを取り返し。
ドラゴンとの戦いの中でなんとか一時的に迷宮病を克服した。

主に対しての純愛、それが歪んだ感情であっても、どんな困難にも立ち向かう理由となり、力となる。これこそが命綱としてのマシューが選んだ道で、唯一の生きる意味。
狂気的なまでの愛が鮮烈な輝きを放つ。
まだまだ、伝道師、スタンピード、星命結晶、様々な不可解な謎が残る中で、そういった情報の点と点を線として繋ぎ合わせていく。

自身の飼い主であるアルウィンを献身的に支え、自らの身が傷つくのも厭わぬヒモ、マシュー。
しかし、一見自堕落に思えるヒモ生活も数々と苦悩と葛藤が存在する。
利用価値がなくなれば、いつでも切り捨てられるリスクを抱えながらも。
彼はアルウィンの為ならどこまでも身を捧ぐし、どこへだって駆け付ける。
それは純愛でもあるし、語弊を恐れずに言うのならば、狂信、崇拝と言っても過言ではない歪みを抱えている。 

エイプリルの作った誓約書を利用し、お休みを取っているデズの部下という事にして、セシリアとベアトリスという双子の姉妹が率いる有力パーティ。「蛇の女王」に帯同し潜るのは「千年白夜」。
この世界に最後に残された迷宮は、誰に対しても苛烈な物で。
マシューの目の前で主要パーティのメンバーも多数死んでいく中。
急いで魔物達を退け、何とかアルウィンの元へと辿り着くことに成功する。

しかし、突如として襲ってきた「伝道師」の魔の手により「戦女神の盾」は半壊し、アルウィンもまた致命傷を負い。
聖骸布」を用いた儀式で何とか命を繋ぐも、「迷宮病」の悪化により日常生活を送る事もままならなくなってしまったのである。

同じように呪いを受け、自死を選んだかつての仲間の訃報を聞くマシュー。
その目の前の彼女が折れてしまったのは、その心。迷宮病を完治させる手立てはなく、出来る事は限られている。
それでも出来る事はしなければならない。
スタンピードの脅威に準備を進める「灰色の隣人」を後に、道案内としてノエルを連れ、押しかけてきたラルフも渋々帯同させ。
一路目指すのはマクタロード王国。
アルウィンたちの故郷であり、現在は魔物達の王国であり魔境となってしまっているその場所。

生き残り達の村にアルウィンを残し、ノエルを王都へ繋がる秘密の入り口の防御として残し。
マシューは伝説級の魔物達の大波の中、一人迷宮へ向かい駆け抜ける。
全ては王宮にあるアルウィンの思い出の場所、そこに忘れられたものを取り戻すために。
しかし、首尾よく取り戻したとして、それで終わりに非ず。
マシューの不在により暴れたアルウィンの手により、生き残り達の村を守っていた結界が壊され。
つがいの竜を始めとし、絶体絶命の苦境が迫りくる。

だが、だからといってそんな物がどうした?
関係ないと言わんばかりにマシューはデズ達と共に死地へと飛び込んでいく。
「くそくらえだ!」その一言を合言葉に。
その雄姿にアルウィンもまた奮い立ち。
敢然と立ち上がり、脅威を退ける為に共闘する。

しかし、彼等はまだ知らぬ。
彼等のいない「灰色の隣人」に「伝道師」が何を仕掛けているのかを。
果たして彼等が遭遇する異常事態の原因とは?

それすらも、かつてない困難を己の抱く信念と献身を糧に乗り越えるのだ。




この記事が参加している募集

#わたしの本棚

18,707件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?