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ちょっと古い物が本当に続々と寄ってくる。(アナログ カートリッジ編)

『求めよさらば与えられん』って、本当なんだなぁって実感しております。

自身の学びのために、楽しみのために、いままで知らなかった世界をもっともっと見させてくださいって(だいぶ綺麗に書いてる)普段から願っているワケなのですが、またしても『学びの物体』がやって来ました。いまのワタシは相当に有頂天なカンジです。

『コレ使う?』と、古い付き合いな友人(同じギョーカイのヒト)から連絡がありました。発売してから40年ほど経過している名品のデッドストック。未開封新品状態ってコトです。もちろん使うわよ!譲って!と即答お会計。

ELAC社のカートリッジ、ESG794Eと交換針のDN795E(が、2個)。
互換性があるので794ボディに795の針を装着できます。
SME S2Rシェルは、このメーカー輸入元に在籍していた頃に社販で買ったなぁ。
Made in Western Germanyであります。


『コレ使う?』と、数ヶ月前に同じ友人が譲ってくれたのがコレ。入手後、ワタシの手元でしばらく温存しておいたのです。未使用に近いとのこと。

なんかオーラ出てますよ。
GRACE、すなわち品川無線社のカートリッジ。資料によると発売は1968年。
ってことは、初期物だったとするとワタシとほぼ同い年だ。



前置きが長くなりましたが、今編では『日独の名品アナログカートリッジがもたらしてくれた、学びと楽しみ』と、『聴き終えて、いま思うコト』を書いてみました。

では参ります。

個体の保管状態が良かったのでしょう、日独両者とも完動品です。どちらも名品といわれるだけのことはあるなぁと激しく感動。各々のメーカーが発する『ウチは音楽ってモノをこう解釈しているんだわ』という主張・解釈をシッカリ感じ取りました。

さて、試聴の感想です。
まずはELACのESG 795E(そう表記しますよ、針が795ですから)を賞味。

こういう『カートリッジとっかえひっかえな試聴』において
大変に使いやすいターンテーブル、SL-1200GR。


『MMカートリッジをナメたらイカンぜよ!』と、静かにスゴんでくる迫力みたいな。とにかく出力する音の情報量がスンゴい。というか情報をピックアップする能力がスンゴい。暗くはなく、明るすぎない性格な西ドイツ人。再生音がとっても緻密できめ細かい。軽やかだけど軽くない。低域のシッカリ感はあるけどドスコイ的ではない。音楽を聴いていて大変に楽しく、オーディオ機器が好きなマニアさんが使ったとしても、きっと不満が出ることはないだろうなって思える製品完成度と説得力。

軽針圧&高コンプライアンスの極致みたいなカートリッジです。


迎え撃つは、The国産なGRACE F-8M。

ワタシがレコード試聴で真っ先に使う音源はEarth, Wind & FireのRaise!です。
不思議なもので、使うカートリッジによって曲のテンポが違って聴こえます。
自分の体内時計とマッチするリズムを感じることが出来ると心地よいですね。


ナンだ?この安定感というか安心感は。こんな感覚は初めてだぞ。音色もトレース力も全く不安を感じない。『整っている』という表現が最適か。かといって面白味のない音かというと決してそんなことはない。ちょっと地味だけど、噛めば噛むほどにジンワリと押し寄せてくる旨味。キチンと聴けば結構ワイドレンジな特性だぞこりゃ。レコード盤の検聴にはもってこいなサウンドバランス。スゴいなこのカートリッジも。『絶対に良いモノを作ってやるんだ!』みたいな、高度経済成長期の日本人魂を感じる。。


と、名品を味わったワケですが、これは完全に温故知新な仕事のネタなのであります。

とっても有頂天な気分でありますが、前述は音楽好きな個人としての大喜びインプレッションです。名品たちがどんなに美味であっても、残念ながらコレらは現在の商材にはなり得ません。だってもう新品として入手出来ないのですから。状態の良い中古の個体にだって、いつ出会えるか分かりません。

でもこういった『かつての名品』を知っていないと、現代の製品を紹介出来ないのです。お客様に『コレ、良いですよ』ってオススメしても、その根拠がナンなのか。何と比較してドコが良いのか。そういった知識と知恵をどれだけ持っているかが、我々仕事人としての重さであり力量なのではないでしょうか。

比較試聴の場に取り急ぎ登場してもらった、所有するMMカートリッジの一部。


コレらを譲ってくれた友人S氏には深く感謝しています。大変勉強になりました。得た知識は有効に活用します。

そうはいっても
状態の良いかつての名品を、じっくりゆっくり探すというのも良い趣味だと思います。
ワタシだって古いバイクやクルマに興味マンマンですから。



*今週のまとめです。

前編でも書きましたが、自分が出力する情報は自分の経験則から導き出された言葉で綴らなければいけないと思います。自腹を切って入手して、イジクリ倒してみないと物の本質って理解出来ません。『最新が最良』というドイツの車両メーカー・コメントをよく目にしますが、やっぱりあれだけの歴史と経験があったうえでの社論かと、ごもっともです。

歴史を踏まえて今を語る。いやいや、歴史なんて知らないことばっかりです。こういうちょっと古い物に触れると、今の自分が如何に無知であるかよく分かります。加えて申すなら、他人からナンと言われようと、好きな事案の探求に勤しんだヒトがそのジャンルで最終的に最強説。ワタシはまだまだ全然ダメだなと、よそ見ばっかりしてるし。頑張らねば。

という反省みたいな姿勢で、今編のシメになりますが。

実はこのカートリッジなネタには続きがあります。旧悪友S氏から『コレ使え!』と強く勧められて、ターンテーブルをひとつ入手しました。『コレ使う?』ではなく『使え!』と。ハイ、もう手元に来ています。自身の判断基準値となり得るカートリッジのポテンシャルを検証したので、次の学びとしては自前の新しい(古い物だけどね)ターンテーブルとマッチングさせて、セッティングの沼で悶絶してみようと思います。

この度ウチの子になった、古くて新しい相棒さん。


ではまた来週に。
2023.1.11



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