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第2章 リヴィア癖

朕は見たのだ。


彼の背より差したる後光を!!!


どうも、エビラです。


これは高校時代の話。




低いテンション、
厳かな雰囲気、
澹澹とした口調。



嗚呼堪らない。







崇拝対象が出来た事は、
生活に微々たる潤いを齎(もたら)した。





朕には人を敬い、崇め奉る事で
満足感を得られる性質が有る。


此れを朕は
リヴィア癖と呼ぶ。

(リヴィアとは崇拝の意。)




高校の時分に発症した、
言わば一種の性癖である。









彼は高校の化学の先生でいらした。


年齢は朕より12歳上で、
色白で背が高く目は一重。

動物に喩えるならば
シロクマだと思う。


朕には見えたのだ。


彼から発せられる高貴なオーラが!!







朕は彼を「陛下」と名付けた。


化学室を「御所」、
職員室の入り口から覗くことを
「垣間見」などと呼んだ。

彼の校内放送は「玉音放送」。

連休の度に御髪(みぐし)を切られてくるのが
印象的であった。


朕は陛下の追っかけを始めた。

前述の垣間見を始め、
化学室からお出になるところ、

暇さえあればその御姿を
見に馳せ参じた。


ここだけの話だが、

留守中に化学室に忍び込み、
召し上がったバウムクーヒェンの袋や
タオルを頂戴してきたこともあった。


そんなこんなで朕も
卒業を迎えることとなった。

成績優秀であった朕は
卒業式で表彰され、

陛下にも直筆サインと
共に撮った御真影を頂き、

母校を後にした。

卒業後も陛下に謁見を賜りに
何度か母校へと参った。


偶然はあるもので、

朕がバイトをしていた塾の生徒が
陛下のクラスの生徒であり、

陛下のメールアドレスを聞き出した。

揚々とメールを送るも、
返信は無かった。


そうこうしている間に
陛下は某名門高校へと引き抜かれ、

地方に引っ越してしまった。

もう二度と陛下に拝謁することは
叶わぬのだ。


陛下は一生朕の中では
陛下のままでいらっしゃる。

もう50歳を過ぎられたか。
嘸(さぞ)かしダンディなおじ様に
なられたことであろう。

陛下の作られたプリントや
採点なさったテストは

今も大事に保管してある。

こうして一つの青春が幕を閉じた。

次回は大学デビューの話。


そろそろ行くわ。




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