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映画感想文【告白 コンフェッション】

2024年製作
監督:山下敦弘
出演:生田斗真、ヤン・イクチュン

<あらすじ>
大学山岳部のOBで親友の浅井とジヨンは、16年前の大学卒業登山中に行方不明となり事故死とされた同級生・西田さゆりの17回忌の慰霊登山に出かけるが、猛吹雪で遭難してしまう。脚に大怪我を負ったジヨンは自分の死を確信し、16年前に自分がさゆりを殺害したと浅井に告白。自身の犯した罪に苛まれ続けてきたジヨンは苦しみから解放され安堵するが、その直後、眼前に山小屋が出現し、2人は命を取り留める。親友の最期の告白を聞いてしまった男と、うっかり言ってしまった男。薄暗い山小屋で救助隊の到着を待つなか、2人の間には気まずく不穏な空気が流れ始める。

映画.com


サイコーにサイコでスリラー。

上映時間は74分と今どき珍しいくらいに短い。
しかしそれくらいの短さでなければ心臓が保たない。
原作は福本伸行・かわぐちかいじ。とくれば聞こえなくても聞こえてくる。
ざわ…ざわ…。
もうずっとそんな感じの映画だった。

雪山で遭難し、死を覚悟したジヨンが罪の告白をする。
それは16年間ひた隠しにしていた殺人の事実。
いよいよ、というところでたどり着いた山小屋。
なまじ助かったがばかりに重大告白は宙に浮いて、安堵の空気のはずが凍りつく。そこで死ねてたら良かったのに……! とは、観客全員の心の声だろう。
死ぬべき時に死ねなかった、などと言うとまるで決死の兵隊のように格好良さげだが、現実には間が抜けており、かつ不穏中の不穏。

吹雪の山小屋での二人、まずは腹のさぐりあいから始まる。
不穏、不穏、不穏。
不穏の種がそこかしこに散りばめられ、やおら聞こえる「ざわ…ざわ…」
次の展開はおよそ想像がつくが、一触即発の空気にハラハラし通し。寒さでも怪我でもなく、不整脈で死んでしまいそうになる。

浅井はなんとかその場を収めようと、ジヨンの告白を「聞かなかったことにする」と告げる。
普通、というのも状況がイレギュラーすぎておかしいが、とにかく平常の精神であれば、まずは自首を勧めるところだろう。ジヨンにしてみれば告白がなかったことになるチャンスをちらつかされ、思わず目つきが鋭くなるのも道理だ。
自ら不穏の種を巻く浅井自身、ジヨンに対する何かしらの後ろめたさや思惑があるのではないかという空気が漂う。
ああ、不穏、不穏。

時折こぼれる韓国語のつぶやき(字幕あり)は、浅井には意味不明でありただただ不気味さが増す一方。ジヨンが韓国からの留学生ということもこの空気の形成に一役買っている。
原作では日本人同士となっているらしいので、ここは脚色の成功といえるだろう。

そして張り詰めた空気はとうとう着火、爆発する。
狭い山小屋で狂気のかくれんぼ&追いかけっこ。
物理的に限られた空間と両者のハンデ(ジヨンは負傷し、浅井は武器を持たない)がもどかしさと恐怖を募らせる。
いよよ加速する恐怖は明らかにおかしく不自然、崩壊するストーリーもすべてそのまま突っ走らせ、……唐突な収束。


※重大なネタバレをしているので、これから観ようと考えた方は以下は読まない方が吉。



小説ならば、ここで 寝 落 ち かよ!! と思わず本を放り投げていたかもしれない。
しかし案外スッと受け入れられたのは、それまでの恐怖が極まっていたからかもしれない。浅井の安堵の表情と同調して、ついホッと涙ぐみそうになる。
そしてここからまた一つ、最後に用意されたオチは賛否両論あるかもしれない。個人的にはそこに至るまでにもうお腹いっぱい勘弁して……の状況だったので、諦念のような悟りのような気持ち。
あまり不満はないが、イヤミスってこういうことかな〜、などとも思う。

なにせ短い映画なので、テレビで2時間ドラマを観るよりお手頃。
オチに納得いかずとも、さほど「失敗だった!」「観なきゃよかった!」という思いも抱かないのではなかろうか。
気になったのなら迷わず、さっさとサクッと観に行くことをオススメする。


マキシマムザホルモンの主題歌良かった


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