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映画感想文【君たちはどう生きるか】

2023年 製作
監督:宮崎駿

スタジオジブリが事前宣伝ゼロで公開に踏み切った意図は、明かされていないので分からない。
しかしこちらもそれに殉じて事前情報ゼロで挑んだ結果、良かった、そうすべきだった、と思うので、未視聴の方は今一度ネタバレありの感想文を読み進めるか、ブラウザバックで戻るか、検討して欲しい。

それでは以下、ネタバレアリの感想文になります。



アオサギのキャラについてはポスター詐欺だと思う。
あっ…もしかしてそう言うコト…!?

<あらすじ>
戦時下、東京。眞人は母を入院していた病院の火事で亡くす。
それから四年後、父とともに再婚相手、夏子の生家のある田舎へ移った。御殿のような立派なお屋敷、使用人の老人たち、余所者を毛嫌いする同級生、そして不気味なアオサギ。母を亡くした傷も癒えないまま、眞人は身の内の悪意を持て余す。
ある日その広い敷地で、眞人は半ば朽ち果てたような不可思議な塔を見つけて…。


SNSや映画情報サイトを巡っていないので、他がどのような感想を抱いているのかはまだ分からない。分からないが、評価は分かれるだろうなぁ、ということは予想がつく。
タイトル原案となった原作からは当然のことながら、前作『風立ちぬ』と同じく大戦の時代が舞台だし、のっけから父親の再婚相手との対峙だし(しかも既に身重)、アオサギは不気味だし、「ンン〜〜〜?」となるのも無理はないだろう。

更に作中は、これまでの宮崎監督作品を連想させる映像がつぎつぎと映し出される。トトロの住む田舎、千と千尋の湯屋、もののけ姫の弓矢、ナウシカの森…。ラピュタやポニョを思い起こすシーンもあった。
露骨なほどのこの表現、懐かしさは感じるが少々戸惑いも同じく感じてしまう。
ただ単に、良く言われているような『宮崎駿の集大成』だからだ、とは思えない。というか思いたくない、といった方が正しいか。
そこまで作品を自分の好き勝手にやり散らかした結果だと思いたくないのだが、しかし自分の作品で好き勝手やるのが監督の監督たる所以であり特権だ、と言われれば渋々ながら納得せざるを得ない。
いつかどこかで、出来ればなるほどと思えるような意図であったと明かして欲しいと、勝手ながら思う。

主人公、眞人に関して言うと、残念ながらちょっと主張が足りないと言うかキャラクターが弱い気がした。
例えばラピュタのパズーや千尋のように、もっと派手に泣いたり怒ったり、笑ったりしてほしかったなという思いはある。そういう意味では地味だ。
せやけどええ子なんやで…、というところだろうか。地味ながらも芯の一本通った漢気が見え隠れするところが泣かせる。終盤の「夏子お母さん」にはグッときてしまった。
キャラクターたちよりもそれを飲み込むストーリーや舞台に重きを置いたところが、今までの宮崎作品とはちょっと違うのかもしれない。

そして問題のストーリーは不気味で不可思議で不条理で、とても面白い。
初期の頃の監督作品のようなはっきりとわかりやすいストーリーではないし、それを期待して観に行った人はガッカリするだろう。意味がわからん、と消化不良を抱える羽目になるかもしれない。
しかしそれで良いんじゃないかな、と観ながら感じた。

若きキリコ(桐子?)さんが勇ましく眞人を助けてくれる様や、優美なのに気持ち悪くてコミカルなアオサギとの旅や、カワイイのに猟奇的でダークなインコたちの存在、みなそれぞれ、その時面白いから、それでいい。
子供の時読んだ物語には、そうした不可解な面白さが沢山込められていて、分からないけれど分からないなりにそれが好きで楽しんでいた。

深く読み込めば、「君たちは、どう生きていくのか?」という問いかけに対するヒントや挑戦を感じる事はできるだろう。あのシーンはこんな意味があるのではないか、と自分なりに解釈もまた。
なにせ色々ワチャワチャで忙しい映画だったから、一度観た限りではとても消化しきれない。少なくとももう一度観に行きたいし、他の考察も読んでみたい。
アニメ作品としての完成度がどれほどなのか、専門家でもないから分からないが、評価が割れるだろうから万人が認める成功作!というわけではないだろう。しかしながらもう一度観たい、何度でも観たい、そういった刹那の面白さ、高揚感、勢い、そして魅力があることは確かだ。
それで十分だ、とジブリとともに夏を過ごしてきたアラフォーは満足に頷くのである。

もしも、突拍子もないもしもの話だけれど、小学生、例えば眞人と同じ年頃の自分がこの映画を観たらどんな感想を抱いたか、聞いてみたいなと思った。
今までの人生経験を積んだ自分が観たものとどう違うのか、すごく興味がある。

面白かったよ〜〜〜!
パンフレット欲ちぃよ〜〜〜!!


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