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【読書日記#2】露の石垣

うちの母親からすすめられた時代小説、乙川優三郎著「露の石垣」を読破した。越後国の新発田藩を舞台に、度重なる災害や藩の財政難のさなかでも、自らを卑下することなく気高く生きた藩士たちとその家族の群像を描いている。

うちの母親の実家が新潟県新発田市にあり、母親がふるさとの歴史を知ろうとして読んでいて、「これは面白いよ」とすすめられたのである。

登場人物のほとんどが実在した人物であり、作品内の出来事も史実。新発田藩の歴史を背景にして、人々の喜怒哀楽をうまく肉付けし、膨らませながら書かれている。

多くの苦難が降りかかる中で、あえて立ち向かうもの、自分の生き方を貫こうとするもの・・・。それぞれの生き方に正解というものはない。しかし、武家の誇りと信念をもって生き抜いたということに対して、誰も文句をつけることはできないだろう。そんな人たちがいたからこそ、新発田藩は、明治の廃藩置県まで潰されることなく生き抜くことができたのだから。

いつの世も災難というものは降りかかってくる。しかし、打ちひしがれても立ち上がり、生きようとする人々の姿は、心に深々と突き刺さる。主人公の溝口半兵衛が200年にわたる家臣の記録を書き留めるというストーリーを中心に全8篇からなる連作集となっている。

それぞれが読み切りの短編で「時代小説は苦手」という方でもとっつきやすいと思う。先入観なしで読んでみたが、どのストーリーも良かったし、構成も良かった。

誰かにすすめられるものというのは、案外ハズレのものがあったりするのだが、これは久々に当たりだったな。ちなみに母親からは、他にも同じく乙川優三郎著「生きる」もすすめられた。これも期待していいかもしれない。

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