青き血の十字架より

ソラは青く、海も青く、星は宇宙というソトから見ても青かった。そこに今棲む生き物は緑のものを青と呼んだりする。色の原則にもブルーはかならず含まれる。

青は、この星においてはシンボル。青が星を象徴する。

ところが、大陸に今多い生き物の中身は、赤かった。潰すと中身が出てきてソレは真赤な色み。血と呼ばれる。大陸のうえは、赤い血の生き物が支配している。そこらにいる小さな虫たちは、潰すと緑だったり白濁に濁ったりやっぱり赤かったりする。

一方、イカなどは、海に棲むソレを潰すと青みが漏れる。血の青さをもつ。青い血の、生き物。

青い星の本当の支配者の証である。
青おき血液こそが、星とリンクする生き物であることの証明だ。赤とか緑の血はエラー遺伝子が育ったものに過ぎない。星は、だからソレらの寿命は短かくなるように、星の意思で環境を少しずつ変える。ときには隕石を呼び寄せて、大陸のうえを一掃する。

真っ青な血をもつ、生き物にして、半身魚にして半身はぶきみな十字架を模した体を持つ怪魚たち、それもまた星にリンクする星の生き物だった。寿命なき星の真なる居住者であった。

この怪魚の生まれ持つ十字架を模して、ホモサピエンスは今のかたちを進化に選んだ。脳が巨大化するにつれて、できるだけ星の支配者たちの姿に近づこうとしたのだ。集団本能であった。生き物の直感であった。十字架を上半身に掲げる怪魚を模し、しかし大陸でしか生きられぬホモサピエンスは、十字架の下に2本の脚を加えるかたちに進化した。

これを知っているのは、海の青き血を持つ生き物たちだけだ。星だけだ。憐れみを持ってホモサピエンスを放っておくと、ホモサピエンスはあっという間に大陸いっぱいに広まった。やはり、怪魚の十字架は、支配者のチカラを持つ形態なのである。

星の十字架の下に、不恰好な2本の脚をはやしてホモサピエンスは大陸を闊歩する。もはや進化の工程も覚えておらず、神も信じず、星の命すら認めず、それどころか宇宙を見上げるありさまだった。

そろそろ、星も、怪魚も、青き血の生き物たちもホモサピエンスの背負う十字架も、この大陸のサルたちを憐れむのを止める、かも、しれない。

待っているのは、清掃の時間。
大陸を一掃するなんらかの攻撃であった。ホモサピエンスたちはソラを見上げているから、いずれ、いつかは気がつくだろう。宇宙を見上げている場合などではなくて、海を、あしもとを、大陸の下を見なくてはならなかったことに。

そのとき、すでに、手遅れではある。


END.

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