次世界のプレデターたち

「ドードー、大陸ペンギン、ジンルイ、絶滅してしまった動物について今日は絵を描いてみましょう。みなさん」

先生がにっこりと微笑んで言う。はーい。生徒のひとりが朗らかに返答する。パキミ゜☆=ァ7(翻訳できません)は近所でも評判な元気な女の子で、教室でもハキハキと目立っていた。

パキミ゜☆=ァ7(翻訳できません)は、隣の席の男子にためらいなく声をかける。一緒にやろーよ。

「え…でも…☓☓☓(翻訳できません。人類語にない概念です)じゃないかな」

「必要ある!? イイじゃん、行こう」

「キミがイイならイイけど……」

クロッキー帳を持ち出して、ほとんどの生徒が教室でスマホをいじりはじめるなか、図書室まで歩いた。楽しそうにパキミ゜☆=ァ7(翻訳できません)が話しかけると、彼は苦笑して頷く。

「いつも元気でうらやましいよ」

「イヤミ? それってイヤミなんか」

「違う。本当にそう思ってるんだ。ボクなんかにまで話しかけてくれて、キミはソラのピッカ(太陽のこと)だなぁと思って」 

「……何それ。……恥ずかしいコト言わないでよ、それこそ本気なん?」

頬をちょんと赤らめて、恥じらう。隣の席になってから、2匹はこんな調子だった。なんとなく、パキミ゜☆=ァ7(翻訳できません)としては、将来はこの男と結婚するような予感がしている。胸がざわめくのだ。ひと目みた、その瞬間からそうだった。向こうもそんな予感を秘めてるように感じられた。

甘酸っぱい、フワフワした足心地になる。アシはヒレつきのサカナ肢で、ウロコもあって魚の下半身を二股に割いたような形状。そして上半身は、まるで人魚姫(この世界には相当する物語はない)にでてくる人魚(この世界には相当する単語はない)のようだった。

図書室では並んですわり、図鑑をひらいた。

想像図が並ぶ。絶滅動物ばかりだから、想像の色塗りがしてあった。ジンルイにパキミ゜☆=ァ7(翻訳できません)が着目する。

「コレがいちばん化石がうちらに似てるんだよねぇ。コレにしよっか」

「☓☓☓、☓☓?(翻訳できません)」

「それ、ジンルイに失礼ー!!」

無邪気に笑う女の子は、遠慮なく男の子のカラー鉛筆も借りて、課題に早速手をつける。ジンルイを描くことに決めた。

描きながら、世間話。パキミ゜☆=ァ7(翻訳できません)は親交を深めたくて、ちょっと彼にはいつもより積極的なのである。

「……ジンルイ、ってさ、なんか急に絶滅してるんだってネ。捕食動物が現れて一気に食い尽くされたとか、昔っから言うし」

「ボクたち体がハンパに似てるから。都市伝説とか陰謀論とか。信じてるの?」

「まさか。何百年前の話よ」

カリカリとキャンパスにジンルイを描く。確かに、半分はパキミ゜☆=ァ7(翻訳できません)達にも似ている。だが、上半身はイソギンチャクみたいだし、ワカメのような軟体の手足があるようだ。そんなものは彼女達にはなく、想像上の世界ではあるが、彼女ら彼らの進化の系譜にジンルイはカウントされてはいなかった。

ただ、図鑑のジンルイの項目にも書いてある。500年程前に急速に大量死、絶滅。災害が一斉にジンルイを襲ったとみられる。と。

パキミ゜☆=ァ7(翻訳できません)は、ふと目をあげて、どきどきして彼を盗み見る。

横顔が整っていて、鼻梁は高いし、目つきは鋭くて眦があがって、唇は薄いけれど形がきれいだ。美人な男の子で、そもそもパキミ゜☆=ァ7(翻訳できません)はこの子の外見も好きだった。下半身からのウロコもとても美しい。

彼女、彼らは人魚(存在しない単語なのでこの世界では翻訳できません)のすがた。

ジンルイの上半身が残り、下半身は大型魚に食いつかれて半分喰われて、あるいは寄生されてるような、すがた。

パキミ゜☆=ァ7(翻訳できません)の発情の結末は、ジンルイの絶滅の原因とはちがって、未来がある、数年先にはわかる話だ。もしかするとミャバムビリ(翻訳できません)までには、交尾が出来るかもしれないが。

ジンルイの絶滅の原因、災害は、人魚たち(この世界にはない単語)が肉体のカタチで知っていてもよさそうなものだったが、文明あるあるで、自分たちに都合のわるい歴史は蓋をしてどんどん世代交代するにつれて忘れ去るものである。

今、この世界は捕食者(プレデター)によって支配されている。人魚から進化した、地上を歩く魚たちに、よって。

そんな昔話は、パキミ゜☆=ァ7(翻訳できません)の知るところではない、が。


END.

読んでいただきありがとうございます。練習の励みにしてます。