文化的ゾンビらいふ

火葬場はある。
海の葬儀場は、ない。

死人は海に流すという文化は一部の地域にて確認される。彼らは、占いやマジックを信じる風習が色濃く残る。

もちろん火葬場の地域にも信仰はある。火葬したのち、灰を海に撒く文化。個人としてその道を選択する者も。各々の信奉にしたがっての行動だ。

死者は、すがたを損なわず、土葬したきりという文化。
これもある。死者が復活したときにすがたがないと困るから、そうした信仰文化。

しかし、果てにゾンビなる不死者を創作したのも、またシネマとして姿を刻んだのも、そちらの文化から輩出されてきたものだ。各地に点在する歩く死者のなか、ゾンビは突出して知名度を獲得した。

「人間って不思議ね」

海の深海の底で、ゾンビたちと同じく、しかし現実に不老不死であるマーメイドたちは、ヒソヒソと彼女らの言語で交信する。
クジラが歌うように、サメが嗅覚で距離や相手を知覚するように、所謂ニンゲンが使う言語とは全く違う言語系統をしている。

「わざわざ、こんな迷惑なものを想像してる。知識は汚染を招くのに。ユダヤの神様の教え、わざわざ勧めさせてあげたのに」
「信じられないから、ゾンビになるんてなるんだよ」
「本当は心からの信仰心は持てないの」
「時代ね。そろそろ、終わるか、今回の種も……」

「ぞぉ、ネ、ェァァ……」

ぴきぴきした声だ。事故に遭って死んだマーメイドからの声だ。アタマをボコとへこませて体はちぎれているが、生きている。動いている。これぞゾンビであった。

不老不死なる者たちは、ゾンビみたいになっている同胞に、少し小馬鹿にした視線を投げた。

「ウチからこんなのが出るから」
「でも事故だから仕方ない」

「「「世界各地に、ゾンビなんて話ができるわけよ!」」」


END.

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