乱れた生活史の淫婦

人魚姫は何とでも交尾する。なんにとも快楽を共用する。海にいるものは、なにかしら、魚たちと遊んでいて、だから人魚たちはお姫様なんて呼ばれるのだ。

陸地ではそれは売春婦と言う。陸のホモサピエンスの文化では。
しかし、ホモサピエンスにおいても、こうした誰とでも交尾をして家族の考えもなくその日暮らしを文化とする者たちがいる。

その文化は、つまるところ宗教が広めたものであって、その傘下にある者たちが自分たちで受け入れて広めたものである。

一夫多妻制の否定などもそうだ。文化ではなくて宗教による。

そして。

人魚姫が、いざ、たまたま人間を前にすると、人間はこぞってうろたえる。必ずこう質問するのだ。

『どうやって交尾ができるんだ?』

人魚姫のカラダの構造を触って、どこにも人間らしさのない下半身に触れて、どうやったら一体化がなせるのか、人間には、わからないのである。

人魚姫は笑う。あざ笑う。嘲笑う。わかんないのね、あなたたち、と。

『200年前のあなた達とは、たくさんできたものなのにねぇ』

人間が喪ったものを惜しみながら、人魚姫は、道具と文化と宗教にガチガチに支配されきったホモサピエンスを残し、海へと、飛び込むのであった。


END.

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