1周年の怪

一年間、いちねんかんもどうしていたの、と聞かれてミドウハルカは戸惑った。昨日か、一昨日やりだしたくらいの感覚でいたからだ。もうそんなに? 悪い冗談?

しかし、一年間であらたに得た記憶をかんがみるに、真実らしい。もう一年が過ぎた。一周年おめでとう! 実感はもてないがハルカは自分の身に起きたことを言い訳した。

「波間に人魚を見たの。スゴイよね? スゴイと思ってサーフボードのうえで水掻きして追いかけてた。それだけなんだよ。あれぇ、見失ったわ、そう思って砂浜に帰ってきたら、もう一年間が過ぎていて……。言われれば私って、ザトウクジラも見たし、ウミガメも見たし、とても遠くまで出かけてた気がする。とても1日で出会えるものじゃないものに出逢って、でもずっと人魚を探してたみたい。なんでだろう。なんで一年間も私、探せてたんだろう? なんで一年間が過ぎているの?」

答えられる者は、浜辺に誰もいなかった。竜宮城で過ごした浦島太郎のはじっこを食べているような、奇っ怪な旅であった。


END.

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