不老不死!! 体験コーナー!!
『もッと気軽に死んでみないッ?』
キャッチコピーが狂っていたので、ケイは足を止めた。
しなびた遊園地。移動式遊園地のほうが、まだマシでは? というほど、これといった目玉もなくアトラクションは単調なものばかり。さていつ閉鎖さるやらだ。その中で異彩とともに強烈な非日常感を放っているのがこの『しんぴ! 不老不死体験!』である。
ケイの記憶では、はじめて見る。
幼稚園、小学生のときに母親か誰かに連れられてきた記憶はあるが、マイナーチェンジしているのか、知らないクレープ屋やゲーセンコーナーが増えたり迷路が減ったりしている。そんな変遷の一部分のことであろうか。
ともかくも、ケイは暇つぶしに入口まで近づいた。「学生一枚」簡単に決める。なんせ遊園地なんだから。
重量のあるカーテンが入り口をふさいでいた。ケイは、手でかき分けて、進入する。
すると、なかは、見渡すかぎりに殺風景ななんもない四角い空間だった。ハリボテの裏側みたいな場所だった。
え、ケイがとまどう。壁に絵が描いてあった。吸血鬼、仙人、ゾンビ、妖怪、人魚……、怪しげな異界の住民たち。ケイがひと目見て困惑していると、ガッ!!
鈍器で殴られた。昏倒する。ケイの後ろには、入口で入場券を販売していたお姉さんが蜃気楼のようにゆらめいて現れる。釘バットを手に、さてさてと彼女は気弱にバットを握りしめながら、もう片手の指を踊らせて印を切ってゆき、まじないを始めた。すべての印を結んで切れば時間逆行、肉体のみが巻き戻される神秘秘術が発動する。
やがて、ケイは、茫然としながらふらふらと神秘体験の館をあとにした。
なんも記憶がなかった。
ただ、死んだような気がした。なんか知らんが死んでしまッた!! と、魂に刻まれている。肌に実感がある。真実味のある感覚で全身がそばだつ。
まだ夢見心地でふり返ると、入口のお姉さんと視線が合う。お姉さんはちょっと笑って手をふってきた。
ケイは何やらわけがわからんが、逃げた。
END.
読んでいただきありがとうございます。練習の励みにしてます。