閉山されてゆくお母さま

パワーストーンはあらゆるチカラがあるとされる。石によってさまざま、いろんなチカラがある。海から来たとされる石はなかでも神聖視されることが多い。引き潮のタイミングでしか採掘できない、そこでしか採掘できない石もある。

そして取り尽くされて閉山した鉱山も山ほどある。
すでに新しい石は出回らない。流通しない。希少価値があがってパワーストーンも宝石も値上がりする。

これを繰り返しているのが、パワーストーンと宝石の歴史である。新しいものも、発見はされるが、それよりも過去の遺物のが数多かった。新しく巡ることなき石たち。人間たちの手で装飾品に加工されただけの石たちだけ、遺される。

海の最古の生きものにして、お姫様、王様、海王、海のものたちの間ではそう呼ばれる種族が深海の奥の奥で光り輝きながら生きていた。それらは、石などは身に着けない。人間からの漂流物、つまりゴミ、プラスチックのスプーンやペットボトルの破片などは面白がった。こんなものが地上では溢れてるのね! 今の地上って面白いわね! なにを作っているのかな。

はしゃぐが、しかし、パワーストーン、宝石を身に着けた死体ガイコツなどが流れてきたときには、きわめて辛辣な態度であった。

死にたがりはこうなるのよね。
まぁ、醜いこと。みにくい、みにくい。

ガイコツがどうではなく、身に着けている宝石やパワーストーンなどに対してである。マーメイド一族は、それらのキラキラは流れるままで放っておく。埋まるまで眺めている。

「星の命を削り出して、今は繁栄できたとしても。母様が死ぬまでにソラに逃げることなんて出来ると思う? お姉さま」
「母様が星でいられるチカラを掘り出して持っていっても、母様以上にはなれない」

「でもすこし嬉しいよ。ようやくやっと安らげるもの。母様が破裂するまで何億万年かかるつもりでいたけれどもう心配も必要がなくなる」

「近いうちに、母様の命は地上の者たちに飾られて奪われて、私たち、いっしょに枯れてゆく」
「こうなるなんて想像できなかったねー、数千年前はさ」

「数千年前といえば、あんた私からミセルサスの遺骸をとったでしょ。返しなさい」
「ヤダ! あのサカナは私も好きだったんだもん」

数千年前のことを昨日のように、それらは話して、そしてガイコツのうえを優雅に通過していって、それきりだ。


END.

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