ミネラルウォーター戦争

地上と人間が大好きな人魚姫は、人間が戦争をやめないことを悲しんでいました。ある日、彼女はついに決心して、近ごろの人間たちが汲み上げている深海層の海流へと身を投じました。

そこで、自らを刺しました。喉や首を。手や腹を。貝殻の破片でぐさぐさやりました。一匹の人魚姫がそうやったことにより、一匹の人魚姫は死にかけましたが、地上のほうでは、ややして変化が起きました。

人間たちの平均寿命が伸びたのです。20年ほど。ミネラルウォーターを好んで飲む人たちばかりだったので、そのうちに『ミネラルウォーター戦争』と呼ばれる大戦が置きました。たくさんの人間が死に、同時に、死ぬほどの怪我のはずなのに、奇跡的に助かる人が多く出ました。

不老不死の霊薬とされる、人魚姫の血と肉の効能でした。すべては。戦争の引き金もまた、人魚姫によるものでした。

かの人魚姫は、しばらくすると回復しましたが、『ミネラルウォーター戦争』にはほとほと涙も枯れ果ててしまい、海の底の奥にひきこもってしまった、とのこと、です。

優しさは、上手く伝わるとは、かぎりません。


END.

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