神話になった遠い友の世界が異世界な話

ドラゴンや人魚やニンフにドワーフ、太古の記録を読めば彼ら彼女らそいつらの存在は確実だ。けれど現代、だぁれも残っておらず、皆それが童話であったように影もかたちもない。

ある時期、人間の歴史でいうなら産業革命がはじまったころ、彼ら彼女らそいつらは、偉大なる大海原に向かってこうべを垂れた。

かみさま、かみさま、わたしたち、ああはなりたくはありません、ひとつひとつが『わたし』を、もって、『わたし』と『あなた』で違う世界を生きるなど、わたしたち、のぞみません。わたしたち、ああなったあのひとたちとは、もう生きられません。

大海原はいつだって波を寄せてザザンとさざなみを鳴らし答える。ザザン。ざざん。波が繰り返されるうちに創世神話は新たに成って、この世からは、彼ら彼女らそいつらの姿は見えなくなり、彼ら彼女らそいつらはよく似た違う世界で生きることとなった。

一方、人間と呼ばれたわたしたちは、最近は、異世界転生というものにどうしようもなく惹き付けられていた。彼ら、彼女ら、そいつらが旅立った世界を知らずに探り当ててしまったある種のシャーマンたちによって発掘された『異世界』なるせかい。

境界線は今また失われようとして、道を違えたわたしたちと彼ら彼女らそいつらはまた、再会しようとしつつあった。

あるせかいと世界の再編成の話。海が神様の世界の話。


END.

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