犬が1人(ファンタジー)

カーテンを開けて、犬が一匹、近所の焼き鳥屋のちょうちんの下に繋がれているのが見えた。

ちょうどそこに、コウモリが飛んできた。
暇そうに四つん這いのまま尾を垂らしていた、白い犬はやおら、黒いぽっちとなっている鼻の先を伸ばし、頭上をあおぐ。あおぐと、犬の牙を剥き出して赤い首輪をつけている毛塊はすっぽんぽんの女へと変身した。なまめかしく、なめらかに白い素肌の女は首輪を首に残したまま、人間の女らしく二本足で立ち上がってコウモリへと手を伸ばし、わしづかんだ。

ごぎゅっ。
ぎょぶる、ぎゅんむ。
ぢゅくぶぶ、ぶぶぢゅぶぢゅ。

早技で手を繰り出してはコウモリを握り潰していく。コウモリは煤となってちょうちんの下に粉として落ちる。

驚き、思わず声が漏れた。
「人狼だ」

僕は、カーテンを閉ざした。
そしてパジャマのままドアへと駆けて、忍び足で1階に飛び降りて玄関を出て、素の足で外へと飛び出した。僕のパジャマが湯気だった雲を通り抜けるようにしてすり抜けて僕の後ろへと残された。

僕は、四つん這いなって、茶色い毛にふさふさと包まれる4脚を焼き鳥屋のちょうちんまで急がせる。コウモリ吸血鬼と戦っている、実に50年ぶりに目にした同胞に、加勢するべく。




END.

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