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マーケティングとITの関係とミシュラン星付きレストランの類似点

データ・ドリブン・マーケティング
という本を読んでいる。

文中で、マーケティング部門とIT部門の、
対立が多いことが書かれていた。(書籍57p)

その関係性のあるべき姿を、
著者は医者と患者に例えていたが、

飲食業が生業の自分としたら、
この関係性はまさに昔の、

ホールとキッチンの関係性

を連想させた。

職人気質のIT部門がキッチンであり、
顧客満足を得ようとするマーケティング部門がホールである。

*偏った表現かもしれないが、
分かりやすさでそう書いているのでご容赦頂きたい*

その類似性を表現するのに、
うってつけのストーリーがある。


昔、僕が店長をしていたレストランで、
凄く素直で、けどちょっとアホ(親しみを込めて)な、
一本気のホールスタッフがいた。

やがて別の道を歩むことになったが、
ひょんなことで彼を思い出し、
当時店長をしていたお店に誘おうと連絡を取った。

「実は地元に帰ろうと思っているんですよね・・」
と、なんとなく歯切れが悪くて気になったけど、

根っからのサービスマンだった彼には、
当時店長をしていたお店は、きっとハマる。
と確信して連絡を取った背景もあって、

一度お店見に来てよ。
間違いなくハマると思うんだよね。
と言ってお願いした。

数日後、手土産を片手に訪ねて来てくれた彼に、
コンセプトの説明から、怒涛のプレゼンを行うが、
やはり帰省する意志は固いようで、諦めざるを得なかった。

残念だなぁ。という僕に、
「お誘いいただいたんで、顔くらい出さないと。
 と思って今日は来たんです。」
と、相変わらずな一面を見せながら、

田舎に帰ると決めた背景の話を、
ぽつりぽつりと話してくれた。

ミシュラン星付きのフレンチにて

彼は働いていた。
客単価当時3~4万円のお店だった。

当然、知識・技術の求められるレベルが高い。
ホールに立つには、かなり努力したようだ。

彼の性格上、それがキツイから辞める。
という訳でないのは分かっていたので、
次の言葉を待った。

「キッチンがお客様の要望に、
 対応してくれないんですよ・・・」

前提として書くが、
料理はフルコースのみ。
基本アラカルトはない。

幾つかの例を挙げて説明してくれたが、
例えば料理の提供後に、
知らされていなかったお客様のイレギュラーだったり、
時にはホールのミスも絡んでいたけれど、

何かしら理由があって、作り直しや、
事前に料理の変更が必要な時に、どれもこれも、

知るかよ。そっち(ホール)で何とかしろよ。

で終わらされていたとのこと。

え?お客様に説明できないよね?
と聞いたら、

「はい、なので自分で買い取って作ってもらってました。」

絶句した。
ミシュラン星付きのお店である。

無粋にも説明するが、ミシュランの星は、
料理のクオリティや独創性だけではなく、
レストランの総合力でもらうものである。

このお話は2008年当時だが、
ミシュランガイドが日本で創刊された2007年から、
そのお店は★一つをもらっていた。
今もまだある。★は二つになっている。
当然今は違うだろうけど。

職人気質のキッチンスタッフは、
自分たちが作っている料理が無ければ、
店が成り立たないと勘違いしている。

バカだと憤りを感じた。
けど、その否定する言葉を、
彼には投げかけれなかった。

代わりに、

うちの店は正反対にある、お客様に喜んでもらう、
感動してもらうレストランなんだよ。

と言ってみた。事実である。
当時働いていたレストランのテーマは、
【愛と感動のレストラン】だった。

でも彼は結局田舎に帰った。
「地元で気軽に入れるお店やります。」
と言って。


データ・ドリブン・マーケティングのその章には、こう書いてある。

ビジネス上の成果に対して責任を負うのは
マーケティング部門であり、IT部門ではない。

データ・ドリブン・マーケティングより

その技術が無ければ成り立たないだろう。
と、一方が大きな勘違いをするのではなく、
どちらも欠かせない両輪であることを前提に、

売上は何からもたらされているのか?

を、会社として正しく理解させる必要がある。

本からその当時の記憶がまざまざと蘇って、
しばらく読み進められなかった。

彼は今、お客様に喜んで貰っているのだろうか。
そうであって欲しいし、きっとそうだと思う。

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