訪問鍼灸マッサージは稼げなくなる
1.はじめに
近年、鍼灸マッサージに関わる療養費は増加傾向にあります。
つまり、医療保険を使った鍼灸マッサージの施術が増えている
ということです。
主観的な話ですが、訪問鍼灸マッサージの求人数は増え、ネットやSNSにて
「訪問鍼灸マッサージは稼げるぞ!」といったような記事を
よく目にします。
しかし、私は遠くない将来に医療保険を使った鍼灸マッサージ施術、
特に訪問鍼灸マッサージに関しては逆風が吹き、稼ぎづらくなると
考えています。
ただし、そう考える一方で、私は訪問鍼灸マッサージは収入を得る上での、選択肢の一つとして良いものと考えます。
この記事では、私がそう考える根拠を解説します。
2.訪問鍼灸マッサージの実情
令和2年までの過去10年間のあはき、柔道整復の療養費の合計の推移です。
4年ごとの金額を記しています。
あん摩マッサージとはりきゅうに関しては右肩上がりで金額が上がって
います。
令和2年で全項目の金額が下がっているのは、Covid-19による影響だと
考えられます。
ちなみに、柔道整復は右肩下がりで金額が下がっていますね。
恐らく、制度と療養費の改定による影響と思われます。
令和2年度では、
あん摩マッサージの療養費の50.4%(図2)、
はりきゅうでは27.1%(図3)が往療料になっています。
また、あん摩マッサージ施術件数の84.3%、はりきゅう施術件数の24.1%が
往療料を算定しています。
ということで医療保険を使った、あはき施術では
往療での施術が多く行われている事がわかります。
では、私がなぜ訪問鍼灸マッサージが稼ぎづらくなると考えるかについて
記載していきます。
3.なぜ、訪問鍼灸マッサージが稼ぎづらくなるのか
3.1.療養費改定の方針
2年に1度、療養費の改定が行われますが、この改定が行われるにあたって
専門委員会にて話し合いが行われます。
直近では令和4年改定にあたって行われました。
その際に、話し合われた内容が厚生労働省から公開される様に
なっております。以下に、話し合いで出た案について記載していきます。
(1)あん摩マッサージ施術の料金包括化
あん摩マッサージの施術の料金の算定方法はマッサージで最大5部位、
変形徒手矯正で最大4部位の内、必要に応じて施術し算定するというものに
なっており、部位数が増えれば金額が高くなっていきます。
調査によれば、令和2年、マッサージを受けた53.9%が5部位、
変形徒手矯正を受けた、63.3%が4部位で算定されており、
施術部位数を多くしている傾向にあるそうです。
療養費の支給を適正化するべく、これを
部位数に関わらず料金を一律にする案がでています。
ですので、令和5年6月現時点で算定できる最大金額よりは少なくなる様に
今後、改定されると思われます。
(2)往療料の距離加算の廃止
往療料には令和5年度6月現在、
往療起点から4km以内は¥2,300。4km以上は¥2,550になっています。
この4km以上¥2,550を廃止し、距離に関わらず一律の金額とし
施術料に振り替える案です。
どの程度、施術料に振り分けるかは分かりませんが、
往療料を削減する方針ということが分かります。
(3)往療料の離島や中山間地等の地域に係る加算の創設
距離加算の廃止の影響を考慮し、
離島や中山間地等の地域に係る加算を創設する案です。
距離加算に配慮しているようですが、限定的なものになると思われます。
(4)施術料と往療料を包括化した訪問施術制度の導入
前述しましたが、マッサージ施術に関しては令和2年の療養費合計の内、
往療費が50.4%を占めており、施術料を上回っています。
これを是正するべく、上記(1)(2)(3)を行った上で、
施術料と往療費を包括化する検討を行ってはどうか?という意見が出ている
ようです。
私の予想ですが、はりきゅうも引っ張られるようにして同じように
包括化されるのではないでしょうか。
これらをみると、あはき師にとっては芳しくない流れですね。
3.2.社会情勢
日本では年々、一般会計歳出における社会保障費が増大しています。
今後も2025年に1947年から1949年までの間に出生した、
いわゆる「団塊の世代」が全員75歳以上になることを皮切りに
増大することが見込まれます。
そういった情勢もあり、2022年に診療報酬がマイナス改定、
つまり診療報酬が下げられてしまいました。
具体的に書くと、2022年度の改定率は診療報酬全体で
マイナス0.94%でした。サービスや人件費にあたる診療報酬本体は0.34%、
お薬の評価となる薬価はマイナス1.35%、材料価格もマイナス0.02%と
なりました。
ということで、国の方針としては診療報酬を減らし、
社会保障費の内の医療費の増大をできる限り抑えようとしていると
考えられます。
私は今後、あはき療養費では診療報酬以上のマイナス改定が行われると
考えています。
何故かというと、厚生労働省の認識ではあん摩マッサージ指圧と
鍼灸施術は、整体、カイロプラクティックと同じ医業類似行為であるとの
認識であり、医療保険を使ったサービスの中ではヒエラルキーが下位で、
優先度が低いものと考えるからです。
私自身、鍼灸師ですのであん摩マッサージ指圧と鍼灸施術にしかできない事があると強く思っています。ですが、ドクターやその他のコメディカルと
比較すると、教育システムなどの問題で現在のあはき師の医学的知識は
著しく低いので、甘んじて受け入れるしかないと考えます。
4.最後に
訪問鍼灸マッサージの情勢が芳しくないということを書いていきました。
そして、私は将来の事を考えて訪問鍼灸マッサージ一本でやっていく事は
勧めません。
ここまでは、後ろ向きな話しか書いておらず申し訳ないです。
ですが、副業などとして別の収入に加えるならば良い選択肢になると
考えます。
この理由については、次の記事で書いていきます!
5.参考資料
参考資料にて、もっと詳しい情報が載っていますのでご査収ください。
(1)厚生労働省「医療保険に関する基礎資料~令和元年度の医療費等の状況~」
(2)厚生労働省「令和2(2020)年度 国民医療費の概況」(2022)
(3)厚生労働省「あはき療養費の令和4年改定の基本的な考え方(案)について」(2022)
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