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『絲』感想 〜ペンネームは笹鎌愁久〜

笹鎌愁久さん作、『絲』面白かったです。本当に。何回もサンプルを読み返し、首を長く待っていた期待に見事応えてくれました。頼むから未来の『絲』の読者みんなネタバレ踏まずに読んで欲しいですねー。面白すぎるからノリでネタバレしちゃうのも仕方ないけども。私もやってないかとても心配です。


以下注意事項。1〜4項。

※1
本記事は笹鎌愁久さん作『糸』、『絲』の内容に触れながら感想の様な物を並べていく記事となります。平たく言うとネタバレ記事です。

※2
私は普段文章を書かない人なので読み辛さ満点の記事になるかと思います。なります。

※3
途中でテンションが上がってきっと笹鎌さんの事を呼び捨てにします。

※4
本記事は『絲』サンプル公開時に思い付くまま私の推理を書き殴ったトンデモ考察記事の続きのような記事なので、下の記事を一度お目通し頂けると話が分かり易いと思います。意外にも読み物として成立している気がする。


◆考察反省会
どこから書けばいいのか30分ほど悩んでいます。ここならしおぽむ!!!!ミステリ!!!!ってようやく叫べる!!!!まぁ折角なので上記のトンデモ考察を踏まえた上でお話をしますと「全体的に惜しいんだけど決定的なところ外してたなー!くそー!!」って感じです。全力で考察して真実に近づきたいと思いながらも「笹鎌さんには軽々と読者の考察を越えてきて欲しい」って相反する思いを抱えていたので悔しくも嬉しいです。


栞子ちゃん生存はあるかもなーと思ってましたけどまさかのかすみさん事故死でリアルに変な声出しました!反射で火葬場見返しました。明言されていた気がしてたけどそんな事はなかった。叙述トリックってすごい!笹鎌さんすごい!同時に桜坂さんが真相解明にあんなに躍起になってた違和感も綺麗に解決してぐぬぬってなりました。ぐぬぬ。拍手。果林さんの店の「可愛い新人ちゃん」は勿論気になってたけど火葬場の異様にディテールの凝った女性に比べて描写が少ないから関係ないだろなと思ってました。女性と新人ちゃんの対比、これ狙ってやってたのなら凄い……。とはいえ提起されてた問題はおおよそ全部拾えてたのは嬉しかったな。


◆笹鎌シェフ
話は少し変わり、以前『糸』読了直後に蛇足だとは思いつつも栞子ちゃんをかすみさんが救うifのファン作品を考えてました。栞子ちゃんをかすみさんが助けて、泣きながらぶん殴って、私と一緒に生きろ!って酸を被って三船栞子と中須かすみを殺して別人として二人で生きていく、そんなお話。しおぽむじゃないからファンアートにならないってお蔵入りしたんですがまさか正史で、しかもかすみさん死亡という最悪すぎる調理法でお出しされるとは思わなかったです。狂気のシェフ笹鎌愁久。私はいま全力で褒めています。


◆ゆうしずHシーン1

鉄製でしたね。

なんとなく盛られがちな桜坂さんの乳が慎ましいのは新鮮で、「なかなかやりますね……」と思わず感嘆の声を心の中で上げました。笹鎌さんと違って加虐嗜好は全く無いのですが最初のえっちシーンは暴力的なのに目を離せない程に官能的なので無いはずの加虐心が目覚めそうになりました。しかしまぁ手錠目隠し無毛先輩呼びと高咲さんやりたい放題ですね……。とは言え桜坂さんとのプレイで先輩呼びに興奮してしまうのは致し方ないと言えましょう。



◆ゆうしずHシーン2
転じて桜坂さんの攻め。
やめてくれカカシ その技は俺に効く
受けftnrってなんか良いよね……。
性癖てんこもりシーンでした。


◆三船栞子リターンズ

義務感Monster girl……。


まさか桜坂さんが栞子ちゃんにドン引きするようになる日が来るとは。

もはや君に 幼さの影は無く

糸 / シド

シドの楽曲『糸』の歌詞にこんな一文があるんですが思わずこれを思い出してしまいました。前作だと途中から歩夢ちゃんをリードする栞子ちゃんを表していてすごいエモエモな歌詞だったんですが、今作では淡々と殺人の計画を立てる栞子ちゃん、怖すぎます。幼さの影などカケラもないです。


◆解体シーン
笹鎌さんがかなり意外な事にグロ苦手だと仰っていたのをお見掛けしたので高咲侑は生きてるんだろうなと思っていました。メタ推理良くない。しかし、実際は凄惨な情景が浮かび上がってくるような壮絶な筆致での描写。苦手な物にも向かっていく姿勢はただただ感服するばかりです。お疲れ様でした。


その後の2人の会話、栞子ちゃんの

私は、そんな歩夢さんを支える存在になりたいんです。たとえ気持ちが私に向くことがなかったとしても。

絲 / 219ページ

この期に及んでこのセリフ。
衝撃的すぎました。
歩夢ちゃんも約束を果たそうと映画館に足を向けている。こんなのどうしようもなくしおぽむじゃないですか……。貴女の日陰でもいい、それでもいいから……!


ちなみに皆さまお気付きになられましたでしょうか?

休息ままならない
汗ばんで切らして
できるだけ 多くだ
痕を 残すように
そうして罪悪経由
快楽のシャワー
今夜だけは何もかもを忘れよう
二人罪深く 引き寄せられた糸
散らかった身体も
飲みかけのペリエも
朝が来れば抜けて綺麗に…

糸 / シド

前作『糸』のテーマソング、シドの『糸』です。前作のあとがきで笹鎌さんがオススメしていたのでもちろん聴きましたよね?しおぽむの逢瀬の様子が現れた名曲です。

が、


拙い絵ですまない

上記の引用した歌詞は全部ピタリと解体シーンにハマります。流石に絶対狙ってる、これは。感想書いてる途中で気付きました。笹鎌愁久…………!!

前作ではしおぽむが脱ぎ捨てた衣類の様子を指していた『散らかった身体も』は今作では非常に最悪すぎる文脈になっていて最高です。いやーこういうの大好きだよ私は。拍手。

『糸』、『絲』、その双方でワンルームで2人が秘め事(性交と解体)に興じています。読み返すと対になってるシーンは他にもあるかもしれません。


◆面会シーン
とても印象的です。
歪んだ友情ではあるけれど、桜坂さんはもう叶わないかすみさんと結ばれる事を栞子ちゃんと歩夢ちゃんに重ねては居るけれど、とても美しいシーンだなと思います。やった事は到底許される行為ではないので、その対比も良いですね……。表紙絵が120%このシーン再現しててすごいってなりました。

『これはかすみさんのためでもあるんだね』

絲 /236ページ

「これでふたりっきりだね、かすみさん」

絲 /237ページ

高咲さんをあの世に送る事で二人きりになれる
高咲さんとかすみさん。

かすみさんが生きろと言った栞子ちゃんが歩夢ちゃんと添い遂げる。それは高咲侑と結ばれなかった中須かすみが自身を栞子ちゃんに投影した幸せな未来なのかもしれない。奇しくもそれは桜坂しずくと重なっている。

初見は前者だと思ったけど後者かもしれない。もしかしたら全然違うかもしれない。こういう心情を読み取るのは小学生の頃から苦手です。


◆エピローグ
このシーンは桜坂さんの創作かもしれないですけど、しおぽむが幸せになれそうなのでこれを正史にしましょう。私が決めました。ボロボロになりながら自分のエゴを通し切った栞子ちゃんの世界線がこの『糸』と『絲』なら最後に救いがあっても良いと思うんですよ。この2人に救いがあるなら私とかすみさんも救われるから。そう思って桜坂さんもこういうラストにしたのだと思います。

エピローグで全てを思い出した歩夢ちゃんに栞子ちゃんが刺されそうだなと私はなんとなく思ってたのでもしかしたらそういう未来もあるのかもしれません。


◆あとがき
笹鎌さんのチャレンジ精神、熱量、そして創作への姿勢は本当に尊敬するばかりでいつも感服するばかりです。有言実行、無言実行ってやっぱり格好良いんですよね……笹鎌さんが好きだ……。

前述の通り、今作の構造はなかなかに複雑になっています。リアルタイムで進行しているお話、供述、しずくの書いた物語。三つの世界が入り乱れているので、どこが真実でどこが虚偽なのか、それを考えるのも楽しいかと思います。

絲 / あとがき

これ、「笹鎌愁久を語る桜坂しずくの創作した『絲』という物語」というオチだったら痛快だなぁと思います。日々舞台制作に精を出す桜坂しずくさんは趣味が講じて執筆活動を始め、ミステリ小説『絲』を出版。ペンネームは笹鎌愁久。

なんてね。


今作は同人創作界隈きっての鬼才・笹鎌愁久先生にどこまで迫れるのかという考察、そしてその想像を遥かに上回る本編。最高の読書体験でした。読者勢の中では一番『絲』を楽しんだのは私だという自信に満ち溢れています。感想スペースの開催もとても楽しみですね!

改めて作者の笹鎌愁久さん、そしてこの素晴らしい作品を影ながら支えてくださった校正協力者の皆様に御礼を申し上げ、締めの言葉とさせて頂きます。


本当に、ありがとうございました!













個人的に『糸』よりダメージは少なかったので良かったなぁと、感想書くのに読み返してみたら、サンプル時あれほど読み込んでいたはずの火葬場のシーンの殺傷力が桜坂さんの心情と相まってエグいことになっておりおのれ笹鎌愁久!!!と叫んだのが当記事のオチとなります。

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