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コロナ渦の、非日常がもたらした、一寸先の異世界|SDGs視点で考える食の世界

「SDGs de 地方創生」カードゲームのファシリテーターであるEATLABの瀬尾裕樹子が、SDGs的な視点を通して考える食の世界の課題や、それに対するアイディアの種を紹介する連載。フードロスやプラごみ問題、都市の生産者不在によるリスク、担い手問題などなど、食を取り巻く課題は山積していますが、鳥の目を持って、長期視点で考えるSDGs的な視点から少しでも明るい未来を見通せるアイディアを考えていきたいと思います。(書き手:瀬尾裕樹子)

“一寸先は闇”…とはよく言ったものだけれど、“一寸先は異世界”というほうが今年をよく表しているのではないか。

昨日までの常識が常識でなくなる、昨日まで話題になっていたことが気がついたら誰も話題にしていない、昨日まで気になっていことがあったのに今日になったらどうでもよくなった、現代に生きているわたしたちの誰もが経験をしたことのないコロナ渦の世界で、そんなことが日常になるとは思ってもみなかった。

その代表格が、“プラごみ”問題ではなかろうか。

今年に入ってコロナ騒ぎになる前、おそらく昨年は特にSDGsの認知拡大に政府や行政、企業単位でも莫大な予算が投下されてきた年だった。2015年の国連総会で採択されてから、ほとんどの人に知られないまま2018年くらいまできて、この2年、とりわけ2019年に日本での認知は一気に加速した。

企業や行政が取り組んでいることを表明する、その活動のフラッグシップとしてわかりやすかったのがプラスチックストローの廃止やビニール袋の有料化、パッケージに再利用素材を使用することだったように思う。

でも、2020年の1月に日本でもコロナウィルスが確認されて一気に状況は一変。

2月、3月と次第に外出自粛に伴う飲食店の経営難が取りざたされ始めて、テイクアウトやデリバリーが盛んとなった頃から、気がつけばうちの中はプラごみだらけ…という人も少なくなかったと思う。

緊急事態宣言が解かれ、少し落ち着きを取り戻してふと横を見れば、ゴミの山。

今頃になって自治体は危機感を抱いている。

恥を忍んで白状すれば、何を隠そう、わたしも昨年よりもプラごみを出した張本人である。

飲食店を応援する企画を立ち上げ、知っている顔の飲食店の多くがテイクアウトをはじめたことを知って、率先して利用した。

お昼ご飯は毎日のようにテイクアウトのお弁当。増えた体重と引き換えに、気がつけば会社のプラごみ箱はいつもいっぱい。

昨年は会社で展開するイベント限定のドリンクスタンドで紙ストローや麦ストローを使ったりしていたぐらいにも関わらず、だ。

もちろん、

「この非常事態だから、しょうがないよ。」

「飲食店だって、大変なときに割安のプラスチックパッケージを使わずに再利用素材を使うなんて無理だよ。」

「むしろ、飲食店応援しているんだから、これでいい」

みたいなことをいう人もいることだろう。コロナ渦がわたしたちにとって、まだまだ非日常だったのだ。今だけだから、落ち着いたらまた環境対策に取り組もう、そういう甘えがどこかにあったのかもしれない。

でも、本当にコロナは非日常なのか。

コロナ渦の自粛期間中、先の見えない世の中で、オンラインで一番課金されたのは「ヨガ」だったと聞いたことがある。

もちろん少しでも運動不足を解消したいといった理由もあったかもしれないが、ヨガにはマインドフルネス的な精神の要素も多くある。

「今、この一瞬を生きる」

ことを大切にする。人間の価値観は世の中の動向や自分の置かれた状況の中で変わり続ける。一寸先は闇…異世界なのだから、誰も知らない未来の予測などいくらしても意味がない、今、この一瞬を、大切な人と豊かに過ごすことこそ意味があるのではないか。

そうした考えからくるのかもしれない。

しかし、それは違うのではないか。新しい生活様式、ニューノーマルと言われる中で、わたしたちはこの2〜3年、コロナを日常に受け入れなければならないことは、実はみんな知っている。

現在、日本では先進国の中でも経済活動を諸外国に比べて完全にストップすることなくコロナによる死者数という意味での被害を最小限に抑え、多くの補助金を経済復興に当てようとしている。

どこよりも早いリスタートを切ろうとしているのかもしれない。

元来、戦後復興のときも、日本はものすごい成長を、莫大な消費を伴いながら行ってきた。でもそれの繰り返しでいいのだろうか。その頃とは違う悲鳴を地球が上げているのだ。

では、ニューノーマルのこの時代に、わたしたちに何ができるのか。

それは、SDGsでいうところの12番、「つくる責任、つかう責任」について考えを巡らせることではないか。

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今、まさに、これからリスタートを切ろうとしている企業も、特別給付金を得て何に使おうか迷っている人たちも、常に「つくる責任、つかう責任」を念頭に置きながら暮らしていく必要がある。すでにはじまっているところもたくさんあるのでうっかり忘れてしまいがちだが、日本でもレジ袋の完全有料化まで、もうあと半月を切っている。スーパーに買い物に行くときはエコバックを持っていっても、コンビニでは当たり前にレジ袋に入れてもらっている人も少なくないかもしれない。

レジ袋に限らず、様々なプラごみとなりうるパッケージへの対策だって、

「今は、まだ苦しいから。」「コロナが落ち着いたらね。」

そんなことを言っている場合ではない。コロナはいつ落ち着くかわからないのだ。

今、首都圏でも順次営業自粛していた業態が再開し、自由を手にいれているけれど、制約があった分、やりたいことは山済みだと思う。

しかし、自由には必ず責任が伴うことを忘れてはならない。

今、「つくる責任、つかう責任」を後回しにして自由につくり消費すれば、あとから責任を押し付けられて回収して回るのはわたしたちの子供かもしれない、孫かもしれない。

「プラごみ」問題。

新しい生活様式を構築する今こそ、あらためて向き合うべき課題なのではないだろうか。わたしたちは先人たちによる多くのケーススタディを得て、持続可能な開発目標を設定したばかりなのだから。

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▼ミライコロナ|新型コロナウイルスとともに生きる未来を考えるプロジェクト
EATLABの瀬尾裕樹子が、キュレーターとしてコロナ禍で生じた社会変化の兆しというべきニュースを、「食」のテーマを中心に本サイトでアーカイブすることになりました。本コラムの思考のネタともなるインプットが更新されていますので、ぜひご覧ください。

▼TAKE OUT BOX|イロイロコハコ
トップ画像に使用した食品に使える TAKE OUT BOX は知る人ぞ知る菓子箱産地、加賀の尾崎紙器さんのブランド「イロイロコハコ」さんより登場のもの。多少の油や汁なら受け止めてくれる耐久性と、そのままレンチンできる利便性を兼ね備えた紙素材でできています。EATLABのテイクアウトでも利用させていただいています。



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