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教員は社会経済的に恵まれた環境で育ったという根拠はあるのか?

 「先生になる人の傾向に見る『教育格差』問題の盲点、現場に必要な教育社会学」という記事を目にしました。

 教員になった人は社会経済的に恵まれた家庭の出身者が多い。
 加えて学級委員などのリーダ的役割を経験している人も多くいる。
 しかし、今、目の前にしている子どもたちの「教育格差」は広がってきている。
 すべての子どもに寄り添い伴走する教師として、教職課程で「教育格差」を科目として必修化、自治体においても教育格差を体系的に学ぶ研修を必須にすべきである。

 以上のような主張の記事になるかと思います。

 「教員が社会経済的に恵まれている」等については、2022年3月、文部科学省の委託研究として浜銀総合研究所の行った『教師の資質能力の育成等に関する全国調査』、「どのような特性の人たちが教師になってきたのか」を把握するための初の全国調査の結果を根拠としているようです。

 少し長いですが、記事の一部を抜粋します。

全国教員調査の結果(暫定値)によると、正規任用教諭の出身家庭の社会経済的地位(Socioeconomic status、以下SES)は、ほかの職業の人たちと比べても比較的恵まれていた。当然、この数値が示すのは職業集団としての平均像にすぎないので、非常に社会経済的に恵まれた家庭出身者もいれば、困難を抱えながらも教職に就いた人も含まれる。

ただ、全体として教師は大学進学層でもあるので、20代~50代のどの年齢層であっても社会経済的に恵まれた家庭の出身者が多かった。保護者(父母)が教師だと本人も教師になる世代間職業再生産の傾向も強かった。

教師の子ども時代の学校経験も、小中学校の「同級生」全体の「平均」とはいえない。例えば、教職以外に就いた同年齢層と比べて、中学3年生時点の学力の自己評価が平均的に高かった。また、全体と比べて、教師は中学生の時に学級委員(級長・クラス長)、生徒会役員、部活の部長などの経験者が多かった。さらには、中学3年時に大学進学するつもりだった割合がどの年齢層でも約8~9割だった。

これらは教師以外の職に就いた大卒者層と比べても明確に高い。教師については年齢層による違いはあまりないので、とくに大学進学率が低かった40代や50代ではかなり進学熱の高い層だったといえる。

執筆:龍谷大学社会学部社会学科 准教授 松岡亮二氏 東洋経済education × ICT編集部

 もちろん、そうではないケースもありますが、学校の教員になった人は、学校教育や、大学入試制度との親和性が高かった傾向があるということです。

 現在では、教育格差だけではなく「教育多様化」も広がる中、今後、教員は、子どもたちの学びの伴走者になることが求められています。

 「伴走者」は、相手の状況や気持ちの理解が必要になります。
 そのことを考える上で、この調査結果は大きな示唆を与えてくれていると感じています。

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