1993年ノーベル文学賞受賞・トニ・モリスンの「ビラヴド」を読んだ感想。
今回は1993年にノーベル文学賞を受賞したトニ・モリスンの代表作「ビラヴド」を紹介します。
単行本のデザインが秀逸ですね。
読者はまずそこに目が行くのではないでしょうか。
「ビラヴド」とは?
「ビラヴド」を読むと二世紀半続いた奴隷制度の凄まじさを実感できます。
この小説を読むと黒人奴隷たちが家畜以下の扱いを受けていたことがわかります。
日本にも封建制時代には、士農工商という身分制度はありましたが、武士が下の身分の者を積極的に虐(いじ)めることは稀(まれ)でした。
それは武士道というものがあったからです。
また領民を虐待する領主に対しは、幕府から改易(所領や身分の剥奪)のような罰則が与えられました。
「ビラヴド」は1856年に実際にあったマーガレット・ガーナー事件をメインテーマにしています。
「マーガレット・ガーナー事件」とは、逃亡奴隷女性として追い詰められたマーガレット・ガーナーが、三歳の娘メアリーの喉を切り裂き殺害した事件です。
この作品では、娘を殺してしまった母親の前に、娘と同じ名前の少女「ビラヴド」が現れます。
幽霊物語(ゴーストストーリー)としての一面もあります。
アメリカ黒人史を題材として書かれた、ノンフィクション作品としても読めます。
「ビラヴド」は1988年のピューリッツァー賞を受賞しています。
トニ・モリスンの文体の特徴
モリスンの文章は、滔々(とうとう)と流れるような文体です。
モリスンの頭に浮かんだイメージを、そのまま文章として表現しています。
日本人がモリスンの文章を読んで、その風景を頭に思い浮かべるには、難しいのかも知れません。
やはり日本とアメリカの風景は違いますからね。
ただモリスンの文章には、また他の作品を読みたいと思わせる不思議な魅力があります。
日本とアメリカの差別の違い
コロナ禍の中、アメリカにおける人種間の対立は激しいものがあります。
日本人からすれば、「そこまでやらなくても・・・」と思う時があります。
ただ肌の色は、良くも悪くも一瞥(いちべつ)してわかります。
人種差別のある国では、どこに行っても肌の色で差別されてしまいます。
これは逃げ場がないので非常につらいです。
肯定はしませんが黒人が差別に対し、怒りや暴力で反発する理由はわかります。
その点、日本はまだマシですよね。
普通の身なりをしていれば他の地域に行った場合、露骨な差別を受ける事はありません。
公共機関や店舗にも自由に入れます。
嫌な会社やコミュニティがあれば、さっさと辞めてしまえばいいだけです。
ある程度の都市部だと、他者への過度な干渉はルール違反となります。
まとめ
映画「スタートレック」(2009年)でカークがウフーラを口説く場面があります。
そこでウフーラが「農村で家畜としかSEXしたことのない、お馬鹿さんかと思ってた。」と言ってカークの誘いをかわします。
これは強烈な皮肉になっています。
「ビラヴド」の一種のパロディではないかと感じました。
カークも「まぁ・・・(家畜と)しかじゃない。」と返します。
このセリフにウフーラが大ウケします。
このあたりの展開は、さすがJ・J・エイブラムスです。
こういうユーモアがあれば、人種差別問題もかなり少なくなるんじゃないでしょうか。
最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。
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