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1992年ブッカー賞受賞・マイケル・オンダーチェ「イギリス人の患者」を読んだ感想。【ネタバレ】

邦題は「イギリス人の患者」ですが、原題は「The English Patient」です。
1996年に映画化され、第69回アカデミー賞で最多12部門にノミネート、作品賞をはじめ最多9部門を受賞しています。
The English Patient」を書いたマイケル・オンダーチェは、スリランカ生まれの作家です。

11歳の時、母とともにイギリスに渡り19歳でカナダに移住、トロント大学を卒業しています。
国籍はスリランカとカナダの二重国籍です。
今回は、1992年にブッカー賞を受賞したマイケル・オンダーチェの「イギリス人の患者」を紹介します。


多面的な視点から語られる物語

時代は第二次世界大戦の末期で、舞台はイタリアにある修道院です。
一種の館物タイプの物語となっています。
カナダ人の若い看護婦・ハナ、ハナの父親の友人であるカラバッジョ、インド人のシーク教徒で爆弾処理を専門とする工兵・キップ、そしてベッドに寝たきりでありながら3人と交友を持つイギリス人の患者、この男女4人を中心にストーリーが展開していきます。
小説は4人の視点から語られます。
主人公が場面によって変わります。
また時系列も過去と現在を行ったり、来たりします。
話は分かりにくくなりますが、その分小説に深みがあります。

原作と映画の違い

映画ではラズロ・アルマシー(レイフ・ファインズ)とキャサリン・クリフトン(クリスティン・スコット・トーマス)の恋愛(不倫)がメインテーマとなっています。
その分キップとハナの恋愛、サン・ジローラモ修道院における4人の交流が省かれています。
映画というのは、時間に限りがあるのである程度省略されるのは仕方ないですね。

謎のラストシーン

小説のラストは、「男」が遠方からハナを観察するシーンとなっています。
この男が誰なのか、最後までわかりませんでした。
キップなのか、カラバッジョなのか・・・。
読者がどうにでも捉えられるように、作者が意図的に創作したのかもしれませんね。

まとめ

「イギリス人の患者」は多層的、多角的に構築された小説です。
こういう小説を小学校高学年くらいの時に読んでおけば、人生変わったかも、と思わせてくれる作品ですね。
何をするにしても遅すぎるという事はありません。
今からでも、ブッカー賞受賞作を中心に読んでいきたいと思います。
最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。


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