その日の夢を見る ファイル1
2024.5.26日 4歳のH君。彼は二回目の「音とアート」でした。
一回目の時に一緒に作ったダンボールハウスを持参して登場。おまけに自作の剣も。戦闘モードで登場しました。今回はあまり音遊びの方にはいかず、終始からだを動かし、突き動かされる衝動のままに動いていました。
琴を独自のチューニングにチューニングしたものを、お箸で叩いて鳴らすという奏法を発見。ブラジルの楽器、ビリンバウのような要領で。H君は、今回も粘土をやったり積み木をやったり、時々楽器に触ったりと目まぐるしく遊びを生み出してゆきます。先日ホームセンターで買った端材は積み木に変身。舟を作っていました。
その後、小楽器郡の中にあるレモンやゴーヤーの形をしたマラカスがトリガーになり、料理を始めたH君。野菜が必要だと言うので、庭に取りに行くことに。僕が、「野菜沢山あるよ」と言って、葉っぱや草をちぎると、彼も、「これも」「これも」と野菜(雑草)をどんどん千切ってゆく。それを庭にほったらかしになっていた小さな植木鉢に入れて、意気揚々と家に帰る。「見立て」は創造の母ですね! 小太鼓をひっくり返した鍋に、H君は採ってきた野菜を無造作にぶっ込む。料理がこれから始まる。その間僕はコック帽を画用紙で制作。「食堂H」の名を冠した立派なコック帽に仕上がりました。帽子が落ちないようにするにはどうしようか、とか、その場で全部対応してゆきます。エマのアドバイスで、ゴムで耳にかけるスタイルにしました。即興です。
決められていない遊びを、自分たちで作ってゆく。「音とアート」の「アート」の部分です。遊びを生み出してゆくこと、無いからできない、ではなく、無いなりにどうするか、有るものに目を向けて何を創り出すか。僕らが日々音楽を演奏する時も大切にしているスタンス。それにしてもH君はもうそのスタンスが身体中から溢れているから、こっちが刺激をもらえます。そっちがこうくるなら、こっちはこうしよう。アイデアがアイデアを呼び、遊びが生まれていく。それと同時に音楽も生まれてゆく。まるで、みんなで舞台を創っているよう。
今回は、前回とは違い、H君は音楽以外の遊びをどんどん作ってゆきます。別室にあったダンボールを舟に見立て、舟旅が始まる。
僕は舟の動力と、波の役。ダンボール舟を揺らす。部屋から部屋を巡る。時々荒波が押し寄せる。扇風機を「強」に合わせれば、大シケになる!舟はぐるぐる回る。シケも乗り越え、生還する。すると、お母さんとエマが、生還の音楽を即興的に流してお出迎え。猫のおもちゃを襟巻きにして、王者の印としてH君の首にかける。一つの舞台をみんなで作っている感覚。
その後は、ピザ(小麦粘土を生地に見立て)が焼けたり、「食堂H」の周年パーティーならぬ、周"分" パーティーをやったりと大忙しでした!!創業30分の周分パーティー。 それから、和室にある掃除機に興味津々だったので、僕はこれを中国の舞楽の龍のようにくねらせて踊ることを思いつき、H君と一緒にメイン会場であるリビングに戻ると再びお母さんとエマが舞楽風の音楽を即興で奏でてくれました。
今回は、H君がさまざまな遊びを展開しながら、お母さんやエマがその遊びのBGM を奏でる、という構図に結果的になっていました。楽器に触れてはいなくても、不思議とH君の耳には音楽が入っていて、それに反応するように遊びが展開していました。大人も、H君の遊びの展開にインスパイアされて即興的に音楽を奏でて居ました。言語を超えて、お互いがその瞬間の役割を演じています。舞台作品をみんなで創っているような時間でした。そして、そのどれもが"予定に無いこと"。前回とまた異なる展開になる、けれど根底に漠然としたテーマ(今回は「勇者」「舟」だったかな)があるこの感じ、なんだか寝る時に見る"夢" みたいだなあと思いました。
無意識の領域に横たわる"神話" が遊びを通して顔を出す。そこに音楽がある。音楽の周りに遊びが。遊びの周りに音楽が。今日には今日の"完成"がある。今日の音とアートがどう転がるか、それは僕たちもわからず。その"捉えどころのなさ" を引き受ける、楽しむというスタンスでこれからもやっていきたいと思ったのでした。
終了後に、ちょっとケータイのボイスメモにH君にてきとうに歌って、とお願いすると、思いのほかさまざまなバリエーションのH語や叫びや独特の節が溢れ出す。その場で、その歌の断片を使ってPCの録音ソフトで作ったものを流すとみんなで爆笑。やっぱり自分が出した音や声を聞くって面白いよね。自分の音が客観的に聞こえた途端、「音楽」として聞こえる不思議。鳴らしている間は、大抵、特に幼い子どもは「行為者」として在ることが多いけれど、こうやって客観的に聞いてみると、もっと自分の音を聞きたい、という想いが芽生えて来て、「聞く」という新たな行為へ入ってゆくきっかけになると思います。次回は録音をメインディッシュにしてやってみよう。
長文にも関わらず お読み頂きまして有難うございました!
次回のOto to Artもお楽しみに♪
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