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ブランディングにデザイナーとして携わってみた



はじめに

はじめに、デザイナーとしての立場や視点から記しています。定義も踏まえて書き記しますが、必ずしも正解ということではありません。「そういう考え方もある」「デザイナーの頭の中ってこんな事考えてるんだ」程度に解釈していただけたら幸いです。


ブランディングって何?

Coach TANIMURAは常にチャレンジングな取り組みやビジョンを持ち合わせ、何かお手伝いできることはないか、自分自身のスキルや経験で彼をサポートできないかと考えています。それほどに魅力のある若者です。

そんなCoach TANIMURAとのご縁の中でアパレルブランドの立ち上げ(ブランディング)をお手伝いさせていただきました。アパレルブランドを立ち上げるきっかけについてはCoach TANIMURAの記事を読んでいただければ幸いです。


でもね……

「ブランディング」とか「〇〇ブランドの〜」なんてよく耳にしますが、結局のところなんなの?と聞かれても、やんわりそういう類いのもんでしょ思ってませんか?笑


そもそもブランドとは…
「企業が販売する商品やサービスを識別させ、競合企業の商品やサービスと区別するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはこれらの組み合わせのこと。」

と定義しています。

わかりやすくスポーツメーカーの大正義「NIKE」を例に考えてみましょう。日本で事業展開されているNIKEの社名は「ナイキジャパン」です。でも…「ナイキジャパン?」「じゃぱん??」ってあんまり馴染みないですよね。「NIKE」という名称が社名(米:NIKE.Inc/日:NIKE JAPAN)よりもその会社の商品やサービスをより明確に識別しています。あのブーメランみたいなシュッとしたマーク「スウッシュ」もNIKEそのものを表し、他企業のマークと識別を図れています。また、NIKEの中の一ブランドだった”JORDAN BRAND”は子会社化して…と色々あるので今回は割愛します笑

要するに、社名でも商品名でもロゴマークでもブランドになり、消費者に他のブランドと差別化を図り認識させることを言います。

じゃあ、その商品名やロゴマークをつくることがブランディングってこと?

うーん。。。間違いではありませんが、考えたりクリアにすることがもっともっといっぱいあります。


商品の場合の「ブランディング」とは以下のように定義づけられています。

企業は顧客の期待や信頼に応えるように活動し、消費者や株主、取引先、従業員など企業と関わりのあるステークホルダーの共感や支持を獲得・拡大していくことであり、またその事業活動のこと。

要するに、ブランドを確立するために商品を作ったり、商品名を考えたり、ロゴマークを作ることは大前提ですが、商品に関わるさまざまな方達の支持を得るように、商品の価値を高めるための企業活動をしましょうということです。

しかし、私が考えるブランディングは、このSNS時代において消費者もそのブランディングの一員だと考えます。商品購入者がその商品を評価・情報発信し、他者がそれに共感・共有するという流れがあります。一般的に「マーケ」や「マーケティング」と言われますが、消費者もブランドの価値を高める活動や情報発信していく一役を担っていると考えます。



やること多すぎるなぁ

では、今回の”HUSTEL”に置き換えてブランディングの流れを辿っていきます。まずは、「ヒアリング」です。Coach TANIMURAからウェアについてヒアリングをします。

  • 数あるスポーツウェアブランドに対してどう感じているのか

  • 競技者として着用する場合、現在のウェアに課題改善点はあるのか

  • 年代のカテゴリーを跨いでブランドを浸透させることは可能なのか

  • ウェアそのものは安価で種類も豊富だけど、ビジュアルがいまいちで購買意欲が湧かない

  • 安価ウェアによくある既視感

  • 素材はどんなものがよいのか

  • ブランドと競技団体組織との関係性

  • 販路やフォーキャストはイメージできているのか

  • アメリカでのウェアの立ち位置

  • 留学先での選手はどんなウェアを着用していたのか

などなど、ホント書ききれません笑
こういったヒアリングや協議を重ね、課題や方向性を洗い出し、ブランディングに向けてプライオリティ(優先度/優先順位)を決定していきます。


方向性が少し見えたところで次に「ブランド名称を決定」します。
バスケットボールウェアのブランドなのでバスケットボールを想起させるまたは想起しやすい名称が大前提となります。しかし、バスケットボールという競技ゆえにいくつかの問題点が発生します。

  1. バスケットボール専門用語が非常に多い

  2. ある程度、認知度のあるワードかどうか

  3. 他のバスケットボールブランドとの差別化を図れる名称か

  4. 英語についてまわるスラングを回避すること

1. 山ほどある用語の中から聞こえの良いもの、発声しやすいもの、ブランドの方向性とワードが持つイメージが外れていないものを中心にピックアップしていきます。2. そのワードは日本でも認知されているワードなのかの確認が必要です。3. 他のブランド名称もチェックしておく必要があります。名称チェックだけでなく、他のブランドコンセプトもチェックし、知見を広げておきます。次の4番目の項目が一番骨の折れる作業です。4. 英語ゆえにスラングチェックが重要です。良くも悪くも言葉というものはいつの時代もどの国でも若者が作り、時代を作っていきます。とは云うものの、こんな言葉にそんな汚い言葉の意味つけなくてもいいじゃん!と思ったり、カッコいいワード!と思っても調べてみたら下ネタかよ。。。なんてことも多々。


例えば…
外国の方が「変態」とか「熊出没注意」という文字が書かれた意味不明なTシャツを着ているのを見かけたり、お土産屋さんで売っているものを見かけますよね。逆に日本人が「LOVER」「pocket monster」「suck」こんな文字が書かれた服を着てたらやばいです笑

脱線しましたが、1〜4をほぼ同時進行で行い、最終的に”HUSTEL”に辿り着きました。ようやく絵作り(デザイン)が始まります。”HUSTEL”という文字が持つイメージに合う書体(フォント)をいくつかピックアップします。

選定基準としては「スポーツらしさ」「疾走感」「若々しさ」「エナジー」などなどイメージとフォルムが合致しているかどうかです。それとは別のベクトルで”HUSTEL”というワードだけで成立するのか、サブタイトルやマーク・シンボルの必要性はあるのかを検討します。マークを追加するとしたら、ボール?バッシュ?リング?コート?また、日本人にとってパッと”HUSTEL”の文字を読んで=ハッスルに繋がらない部分が多く、いっそのこと”HSL”の方が日本人にとっては、イメージがハッスルに繋がるのではないかと検討したり。。。もう、マジでやること多すぎなんです。

ロゴマークを作っていく上で、どんな状況でどんな大きさでどんな色で使用されるのか、また、Tシャツだけ?SNS展開は?DMは?バナーは?など、ありとあらゆる展開先を想像しながら作っていきます。

ちなみに…

“HUSTEL”という部分は「ロゴタイプ」
“フリースローラインの四角形のマーク”の部分を「シンボルマーク」
“すべてセットになったもの”や”HSLと下のラインのセットになったもの”を「ロゴマーク」と言います。

上記のように、展開先を想像しながらベースとなるロゴタイプやロゴマークなど制作していきます。

個人的には「HSL」と「HUSTEL」の棲み分けをもっと明確に打ち出し、商品展開したかったのが本音ベースではありますが、実際に展開してみてわかることや、デザイナーというフィルターのかかっていないデザイナー以外の視点や見解も新たな発見です。



実はデザインは誰にでもできること

さて、ここまで長々と書き記してきましたが、一般的に絵心やセンスと言われるような華やかなロゴやマークを制作する作業はそれほど多くなく、市場の把握やコンセプト立案、課題や問題点をクリアにすること、情報の精査等、手を動かす前のブリーフィングワークと言われるフェーズの方がはるかに多くの時間を費やしています。

このブリーフィングワークに根気よく向き合うこと、制作対象が取り巻くあらゆる過去・現在・未来を把握することができれば、絵が描けないと嘆いている人でもできない事はないと感じています。物事をロジカルに思考していくうち、おのずのフォルムは見えてくるものです。

フォルムや配色、他の要素との関係性…。必ず理由があります。そういうところから何故?と自分の中で問いかけてみるとデザインは面白い方向へ連れて行ってくれます。


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