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「ゴキブリ嫌い」だったけど、ゴキブリ研究はじめました

イースト・プレス公式note

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『「ゴキブリ嫌い」だったけど、ゴキブリ研究はじめました』が、7/7ついに発売! 本書は、つぎつぎに新種ゴキブリを発見する「ゴキブリスト」・柳澤静磨先生の奮闘記です。
そもそも、ゴキブリってどんな生き物なのか? ゴキブリにはどんな魅力があるのか? 彼らを知ることで、“G”と上手に付き合えるようになるかもしれません。
公式noteでは、本書より「はじめに」を抜粋し公開いたします!
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真っ暗な亜熱帯の森を、ヘッドライトの光で木を照らしながら歩きます。枝にぶら下がったカマキリや、葉をかじるバッタ、葉の裏で休憩中の美しいチョウなどが目に入りますが、止まらずに歩き続けます。探している生き物はまだ見つかりません。ハブにかまれないよう気をつけながら進んでいくと、一際大きな木がそびえていました。下から上にライトで照らしたところ、地面から2メートルくらいの位置に、大きな生き物がとまっているのが目に入ります。黒い体に長い触角、トゲトゲした肢につややかな光沢。見つけた瞬間、「いた!」と声を上げました。
 
大きさは5センチほど。触角を動かしており、少し刺激しただけでも逃げてしまいそうです。柔らかい体をつぶしてしまわないように、ケースは使わずに素手で捕獲に挑むことにしました。ゆっくり歩み寄り、皿状に構えた手をギリギリまで近づけます。あとはタイミングだけです。
 
呼吸を整え、いざ、右手を被せます。手の内にガサガサガサという感覚が走り、捕まえることができたとわかりました。しかし、ここで油断してはいけません。容器に入れるまでが採集です。逃げられないよう右手に封じ込め、左手で用意したケースに素早く入れます。フタをして、ほっと一息。大きくて素晴らしいゴキブリが採集できました。
 
私は昆虫館職員として働く傍ら、ゴキブリの研究を行っています。全国各地に出かけてはゴキブリを採集し、持ち帰って飼育しています。その飼育数は約120種、数万匹。こんな話をすると、多くの方が目を丸くして驚きます。ゴキブリが嫌われがちな生き物だからでしょうか。
 
私も、今でこそ「いちばん好きな昆虫はゴキブリです」と胸を張って言えますが、実は数年前までゴキブリが大の苦手でした。あの黒い体を見ただけで体が硬直し、あの動きを見ただけで声が漏れるほどです。職場にゴキブリが出たときは、叫びながら先輩を呼び、対処してもらっていました。不思議なもので、ゴキブリを見つけるのはいつも、ゴキブリ嫌いの私でした。
 
ゴキブリは有名な昆虫ですが、害虫としてのイメージばかりが目立ってしまっており、どんな生き物なのかはあまり知られていません。一口にゴキブリと言っても、「黒くてツヤツヤ」「動きが速い」「家に出る」だけではなく、見た目も生態も実にさまざま。ゴキブリの世界に足を踏み入れてみると、その多様性に驚かされます。
 
本書では、ゴキブリ嫌いだった私がゴキブリ研究を始め、35年ぶりに日本産ゴキブリの新種を発表するまでの道のりをご紹介しつつ、ゴキブリの真の姿に迫っていきます。
嫌われ者のゴキブリですが、その姿を知ることで、彼らに対する見方は大きく変わるはずです。「大好き!」とはならなくても、得体のしれない怖さは減らすことができるかもしれません。この本がその一助となれば嬉しいです。
 
それではさっそく、ゴキブリの世界を覗いてみましょう。

【目次】======
 
■第1章 ゴキブリはなぜ嫌われるのか
●実はカマキリの親戚、ゴキブリ
●ゴキブリが嫌われる理由
【コラム】幸福を呼ぶ「白いゴキブリ」?

■第2章 ゴキブリを知る
●「家に出るゴキブリ」は何者か?
●「家に出ないゴキブリ」はたくさんいる
●ゴキブリの都市伝説
●ゴキブリのチャームポイント
●ゴキブリは「黒い」か?
●ゴキブリは「汚い」か?
●ゴキブリは「必要」か?
【コラム】みんな大好き「ごきぶりホイホイ」

■第3章 ゴキブリ嫌い、ゴキブリの道へ
●ゴキブリ嫌いの虫とり少年
●生き物好きの天職、昆虫館職員
●ゴキブリは事務所で飼わないでください
●飼育とゆらぎ
●ヒメマルゴキブリとの出会い
●ゴキブリって、おもしろいかも?
【コラム】あぁクセになる、ゴキブリの匂い

■第4章 ゴキブリ飼育はトライ・アンド・エラー
●手探りの飼育環境づくり
●脱走を防げ!
●ゴキブリの生涯
●実は飼育に向いている?
【コラム】ゴキブリは何を食べる?
【コラム】ゴキブリを食べてみた

■第5章 いざ、ゴキブリ展
●思いつきと企画
●実施に向けて
●ゴキブリが映えるステージをつくれ!
●企画展、開始
【コラム】ゴキブリの鳴き声

■第6章 ゴキブリ研究はじめました
●二度目の沖縄、与那国島
●探せ、謎のゴキブリ!
●島野先生、来る
●研究開始
●ゴキブリ標本はコツがいる
●もしかして、3種いる?
●強い味方の登場
●さらなるフィールドワーク、しかし……
●数ミリ世界の解剖
【コラム】ゴキブリ標本の作りかた

■第7章 ゴキブリは、嫌われてるからおもしろい
●記載論文を書く
●新種に名前をつける
●いざ、投稿
●35年ぶり、新種ゴキブリの記載
●種を記載する意義
●ゴキブリが魅力的である理由
【コラム】新種の発見はお金になる?

■番外編 第4のルリゴキブリ

■付録 まだまだいるぞ! 世界のゴキブリ
●まるで宝石! ニジイロゴキブリ
●ゴキブリ界のダックスフンド! ヒカリモンゴキブリ
●こんなゴキブリなら家に出ていい! ドミノゴキブリ
●とにかくかわいい! ムツボシテンダマゴキブリ
●漢方になる! シナゴキブリ
●子守をする! コモリゴキブリ
●世界最大! マンモスゴキブリ
●世界最重量! ヨロイモグラゴキブリ
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出版社イースト・プレスの公式noteです。 刊行書籍に関する情報に限らず、イースト・プレスのあれこれを幅広くお届けします。 公式サイト:https://www.eastpress.co.jp/