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ブルウィップ効果

今回は"ブルウィップ効果"について掘り下げてみたいと思います。

ブルウィップ効果とは

そもそも

「ブルウィップ効果って??」

と言う方がほとんどだと思います。
英語にすると多少イメージし易いでしょうか。

“Bullwhip” つまり “Bull = 牛” ”whip = ムチ”

そう、牛等の家畜を扱う際に使うムチです。(今でも使われているかはよく知りませんが)

理論がムチがしなる様子に似ている事からそう呼ばれています。

持ち手の部分では小さな波形も、ムチの先端に行く程に大きな波形になります。

つまり波動の発生地点から遠くになる程、波形は大きくなると言う事です。

この理論をサプライチェーンに当てはめてみると、一体どうなるのでしょうか。

以下に図示してみます。

アイスクリームを例に、コンビニでの急な販売増加が発生した時のサプライチェーンの動きを示してみました。

当然あらゆる商材や業界に必ずしも当てはまるものではないですが、一般的には上記で図示した事象が発生していると言えるかと思います。

自分も需給業務をしていた際に、この急な販売増加への対応には本当に苦労しました…

それでは、なぜこういった波動が発生するのでしょうか。

波動が発生する要因

要因はいくつか考えられますが、代表的なものは次の2つだと考えています。


予測の困難さ

まず1つ目は予測精度です。
販売予測を元にサプライチェーンの計画が策定されます。

予測精度が高ければ、サプライチェーンの各工程は”準備した通りにオペレーション”するだけなので、非常にシンプルになります。

しかし、予測はそう簡単には当たらないのが現実です。

例えば、気温が2℃上がった時にペットボトルのお茶が売れる本数はどの程度増えるのでしょうか?

"少なくとも多少は増えそうだよね"という意見に反対する人はいないけど、"じゃあ何本増えるのか"という点で意見が分かれるのかと思います。

また、予測手法においても過去の実績を活用して気温+1℃毎に販売が何%伸びるのかというデータインフォームドな考え方をする人か、"長年の経験"から決める人の2パターンに部類されます。

ですが、今のビジネスの現場では予測精度にそこまで大差が無いのが実態ではないかと考えています。

どちらにしても、予測を"ピッタリ"と当てるのは非常に困難です、というか無理だと思っています。

予測精度に影響を与える要素

予測をピッタリと当てるのは無理と記載しましたが、予測精度に影響を与える要素を以下の通り整理してみました。

この他にも色々ありますが、馴染みのあるものだけでも上記の通り考えられ、予測しても当てる事が困難ではないかと考えています。

特に全く新しいカテゴリーの商品を生み出した場合には、過去の実績を使ったAI予測は一切役立ちません。

現在ではForecast Techという分野の研究が進み、AIによる予測精度向上の取り組みが進んでいますが、実際に"人間よりも高い精度"を実現できるのはまだ先かと思います。"人間と同程度の精度でより短時間"という観点では既に実現している領域もあるかもしれません。

情報の不透明性

2つ目は情報の不透明性です。

情報の不透明性とは、サプライチェーンに登場するプレイヤー間で必要な全ての情報がリアルタイムにシェアできていない事が起因となって発生します。

サプライチェーン上で表すと以下のフロー図になります。

各プレイヤーが上流のプレイヤーへ発注をする際には、"発注量"という表面的な事実しか分からず、その背景にある"ある番組で紹介された"、"採用が無かった店舗で採用されていた"といった理由までは分かりません。(後々分かる事はありますが、時すでに遅し)

背景にある理由は上流のプレイヤーに開示できないものもあると考えられ、一筋縄に解決はしないでしょうが、ここがリアルタイムに要因をシェアできる仕組みが構築できれば、サプライチェーンの効率化に結び付くと思います。

次回は小休憩Part.2として、某大手コンサルティング会社とのプロジェクトが大失敗に終わった理由を抽象化して書いてみたいと思います。

(サプライチェーンのテーマというより、コンサルティング会社とのプロジェクトの際に留意すべき内容です)


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