職業体験に代わるキャリアを考える授業~キャリアフェス・友部中学校~
職業体験に代わるキャリアを考える授業・キャリアフェス。今回は、笠間市立友部中学校で、2022年8月1日(月)〜8月4日(木)の4日間実施しました。
今回は、6人の講師の講話の様子をレポートします!
①フリーアナウンサー・水越恭子さん
「他県に比べて、メディアが少ない茨城県でアナウンサーという仕事に興味を持ってくれたことがまずは嬉しいです。」と笑顔で生徒に語りかけた水越恭子さん。
水越さんは現在、「フリーアナウンサー」という肩書で活動されており、その中でもレポーター・キャスター・MCなどさまざまな役割を担っています。
水越さんは小学生のころからラジオをよく聞いており、音や言葉だけで誰かを楽しませてくれる、そんな世界や「自分にはできないことをする人」に憧れを抱いたのだそう。
アナウンサーになりたいという気持ちがしっかりと芽生えたのは大学3年生の頃。実は、話すことも、大学の講義でよくある発表も苦手だった水越さん。それでも、苦手という気持ち以上に、自分が興味のある分野には挑戦したいという思いの方が強かったといいます。
「苦手意識のあることを仕事にするのは辛いのではないか」ということに対しては、話すという技術面については、練習した分だけ上手くなるが、それ以上に自分の気持ちをどう持っていくかということが大切だと語ってくださいました。その際は、「どうして自分がアナウンサーになりたいと思ったのか」と初心に帰ることで、頑張れるのだとか。
最後に、苦手という理由で諦めないこと、目の前のことに一生懸命取り組めば必ずどこかで役に立つこと、未来の自分を作るのは誰でもなく今の自分という熱い言葉をいただきました。
苦手なことにチャレンジして夢を叶えた水越さんの姿やその言葉に共感した生徒も多かったようで、「苦手なことでも諦めず目の前のことに一生懸命に取り組むことで、必ず自分に返ってくると実感した」「努力する姿がとてもかっこいい」「最後までやりぬくことが素晴らしいと思った」といった感想をいただくことができました。
②コンサルタント・堀田誉さん
「コンサルタントってどんな仕事だと思いますか?」そんな問いかけから始めた、堀田誉さん。
「コンサルタントがよく分からなかったので、知りたくて聞きにきました。」という生徒が多い中で、コンサルタントの仕事を分かりやすく伝えるために、こんな質問を投げかけます。
・和食と洋食
・正確さと早さ
・変化と安定
・理想と現実
・過程と結果
・個人と仲間
・生活と仕事
皆さんはどちらを選びますか?と。
この質問から堀田さんが伝えたかったことは、人それぞれが大事にしている感覚が違うということ。コンサルタントはその人が大事にしている思いを大切にし、将来ありたい姿の実現に向けて、アドバイスするお仕事だといいます。
経営者を支援することもあり、自分の提案が一つの会社に大きな影響を与えるので、プレッシャーがありながらもとてもやりがいのあるお仕事だと語ってくださいました。
堀田さん自身は、いくつかのお仕事を経て、コンサルタントになったそうで、今すぐにコンサルタントの向き不向きを判断しなくていいとのこと。むしろ複数の仕事を経験することで、視野も広がり、コンサルタントとしての幅も広がると教えてくださいました。
また、時代が変わると求められる仕事も変化するので、世の中の動きやコミュニケーションをとることが好きな人に向いているとも語ってくださいました。
コンサルタントという仕事の奥深さを学んだ生徒からは「自分の考えだけではなく、相手の思いやその背景について知ることが大切な仕事だと知ることができた」「プレッシャーもある中でコンサルという仕事をする堀田さんはすごいと思った」といった感想をいただくことができました。
③アーストラベル水戸 代表取締役・尾崎精彦さん
「1マイルの壁という話を皆さんは知ってますか?」という問いかけから始めた尾崎精彦
さん。
この話は、ロンドンの陸上競技選手だったロジャー・バニスターが1954年5月6日に、37年間破られずにいた1マイル4分の壁を突破、世界で初めて記録を打ち立てたというものです。バニスター選手を皮切りにその後は不可能だと思われていた4分の壁が次々と破られていきます。
この話から尾崎さんが伝えたかったことは、できないと決めているのは自分の「脳」や「心」だということ。尾崎さんは中学生時代、周りから勧められたからという理由で陸上部に入部したり、学級委員になるなど、自分の意思で動いたことがほとんどなかったのだそう。その結果、何もかもが中途半端に。大学生になり始めたラクロスを通じて初めて、自分の意思で決め、物事に取り組むことで、本気になれることに気付いたといいます。
アーストラベルでは、お客様に喜んでもらう旅、明日から景色が変わるような旅を提供することを目標としています。誰かと比べるのではなく、常に自己更新をし続け、茨城の魅力を伝えたいと本気で挑む尾崎さん。
本気になることの大切さは生徒にも伝わったようで、「目標を積み重ねて、自分を成長させていきたいと思った」「誰かのために本気になれるのがすごいと思った」といった感想をいただくことができました。
④茨城ロボッツ・山下達士さん
スポーツを仕事にするというと選手になるというイメージが多いかもしれません。茨城ロボッツのスポンサー営業をする山下達士さんからは、「好きを別のカタチで仕事にする」そんな働き方を学べたのではないかと思います。
小学生のころからバスケットボールが好きだった山下さん。常に、バスケとどのように関わり、どう向き合っていくのか考え、バスケ一筋の人生を歩まれています。
そんな山下さんでも、一度は社会人として成長するため「バスケを仕事にすること」から離れる形に。
しかし、休日は、当時働いていた会社のバスケ部のマネジャーをするなど、バスケそのものから完全に離れることは決してありませんでした。
そんな中で偶然にも出会った、茨城ロボッツのスポンサー営業の仕事。
生徒にはあまり馴染みの薄い「スポンサー営業」について、チームの目の前の勝利には貢献できずとも、未来の勝利には貢献できる仕事だと語ってくださいました。
バスケの選手ではなくとも、「好き」を追い続け、別のカタチで夢を叶えた山下さん。
最後に、自分で考えて行動する、相手の目線で物事を考える、周りを楽しませて自分も楽しんでほしいと生徒に熱いメッセージを送ってくださいました。
一途にバスケと向き合ってきた山下さんの講話を聞いた生徒からは「選手ではなく運営として関わるのもまた魅力だと思った」「自分がやりたいと思ったことでも人から言われるとやめてしまうことが多く、今取り組んでいることだけでもまずは最後までやってみようと思った」といった感想をいただくことができました。
⑤特別養護老人ホームもくせい 施設長 介護福祉士・伊藤浩一さん
「介護とはどんな仕事でしょうか?」そんな問いから始まった伊藤浩一さんの講話。直接的な支援をするイメージが多い中で、介護とは「間に入って守る」仕事なのだそう。
「間に入って守る」とは一体どういうことなのでしょうか。それは、生活の場である社会とご本人の思いとの間に入り、守ることで社会と繋ぎ続けていくものだと教えてくださった伊藤さん。
また、限られた人生・時間の中で、高齢になっても自分らしく生き生きと生活してほしいと伊藤さんは考えています。一人ひとりを尊重し、その価値を最大化することを大切にすること、そして、最大化された瞬間が何よりの喜びだと笑顔で語ってくださいました。
また、以前は学校の先生になりたかった伊藤さん。しかし志半ばで夢破れたものの、現在は施設長をしながら、専門学校で介護の先生もされているのだとか。
人生100年時代、遠回りをしても自分の価値観を大切にし続け、その価値観を行動に移すことで、必ず夢は叶うと力強く語ってくださいました。
介護職が目指すべき姿を伊藤さんから学んだ生徒からは「本人の思いを何よりも大切にし、寄り添っていく仕事だと思った」「伊藤さんのように相手のことを考え、守れるような人間になりたいと思った」といった感想をいただくことができました。
⑥晴れ晴れファーム農園長・西村智訓さん
「晴れ晴れファーム」の農園長をされる西村智訓さんは、もともと農業に縁があったわけではありませんでした。農業を始めたきっかけは、育ちに関係しているといいます。
子どものころにブラジルで過ごしたり、大学時代には、森林支援や森づくり、林業について学んだ西村さんは、将来「緑」に関わる仕事がしたいと思ったのだそう。
社会人になってからは、都心にある「緑」、屋上庭園に関わる仕事などをした後、野菜作りを本格的にやりたいと、縁があった水戸市へ移住、農家となりました。
農家になり、一番達成感を感じるのは、スーパーなどで品出しをしている際に「美味しかったよ、また買いにくるね」と言ってもらえた瞬間なのだとか。
また、今後は、農家としてただ農業に取り組むだけでなく、物流、パッケージデザインといった、農業に関わる関係人口を増やしていきたいと語ってくださいました。
生徒は、ただ作物を作ったり、売ったりするだけではない、新しい農業スタイルにふれることができたようで「販売をするだけの仕事だと思っていたが、農業体験やバーベキューといった取り組みもしていて楽しそうだと思った」といった感想をいただくことができました。
以上、6名の方の講話レポートでした。
「好き」という気持ちや、自分が大切にしている価値観など、それぞれの講話には、これからの生き方や働き方のヒントがつまっていたように思います。
まだまだキャリアを考えるのは難しいかもしれませんが、生徒の心に少しでも響いているといいなと思います。
講師の皆さん、ありがとうございました。
文・谷部文香
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