脱・軽い気持ちで始める宿泊施設。Earthboatを1年運用したLAMP代表が語るオペレーター側の本音
株式会社アースボート代表・吉原ゴウの思考と実践の今をお伝えする当企画。今回はフランチャイズ化を進めるトレーラーハウス型宿泊施設Earthboatの地域での運用について、長野県信濃町の事業パートナーである株式会社LAMPの岡本共平(通称:マメ)さんと一緒に考えます。
株式会社LAMPは、野尻湖畔でサウナ好きの聖地として人気を集める宿「LAMP野尻湖」を運営する企業。マメさんは同社の代表を2021年から務め、昨年春LAMP敷地内にEarthbortを3台導入。今春からはEarthboat Village Kurohimeに設置されている全10台の運用も併せて行なっています。
Earthboatは「稼げるプロダクト」ではあるけれど、その運用には「努力が必要」と語るマメさん。導入から現在に至るまでの歩みとはどのようなものだったのでしょうか。株式会社Huuuuの徳谷柿次郎さんをインタビュアーに招き鼎談を行いました。
「個」でも「共存」でも成り立つ
柿次郎:Earthboatの運用を始めて約1年半になりますね。それなりの結果が見えてくる頃だと思うんですけど、実際にやってみてどうでした??
マメ:今のところ良かったことしかないです。LAMP敷地内に設置している自社所有の3台は稼働率が80%を上回ってます。「Earthboat Village Kurohime」の方は投資家さんが所有するモデルを運用するかたちで、こちらは70%近い稼働率。どちらも顧客満足度は高いです。
柿次郎:野尻から黒姫は車で15分程離れている。運用的な不都合はないですか?
マメ:基本的にリモートなのでそこまで負担はないですね。どちらもセルフチェックインアウト式だし、キャンプのようにお客さんの主体性に任せて運用するのがEarthboatのスタイルなので。
柿次郎:じゃあLAMPのリソースをそこまで割かなくても運用できている?
マメ:そうですね。うちの場合は清掃も地域の雇用創出をしている団体と業務委託をしてるんです。一般的な業者に頼むよりも委託費は高くなるけど、少しでも地域経済に貢献できることをしたいと思ってて。
柿次郎:おお、もう地域に雇用を!
マメ:彼らは清掃だけではなくてEarthboatの土地のまわりに生えすぎた木も間伐してくれてます。それによって森は元気になるし、切った木はサウナの燃料になってて。Earthboatがしっかりと稼働してくれているおかげですね。
柿次郎:いい循環! そもそもEarthboat導入のきっかけは何だったのかな?
マメ:始めはゴウ君からの提案だね。EarthboatをLAMP敷地内で試験的に運用したいという話で、実際に見させてもらったらめっちゃいいプロダクトだったので買っちゃいました。
柿次郎:無理やり買わされてない? 大丈夫?(笑)
ゴウ:なんでだよ(笑)
マメ:だせぇと思ったら普通にいらないって言います(笑)。僕らはこれまでやってきた宿泊事業とは違うかたちで新たな価値を生み出すような高単価の宿をやりたいと思っていたところでもあったから、おたがいにいいタイミングだったよね。
ゴウ:そうだね。まずLAMPのような尖った宿に受け入れてもらえるかっていうのが、俺のなかの最初のチャレンジだったんだ。LAMPは俺の実家でもあるし運営にも関わってきた宿だから、この関係性のなかで受け入れてもらえなかったら次に進めないよなと思って。
柿次郎:いい結果が出てよかったやつだ。 高単価の宿って、新しく建築することも考えたりしてたの?
マメ:してましたね。ただ僕らがいる地域は国立公園内なので建築制限が厳しくて。その点、Earthboatは土地に定着しないトレーラーなので、運用も始めやすかったというのがあります。
柿次郎:しつこいようだけど、運用に懸念点は本当になかった??
マメ:自分たちで購入したEarthboatに関しては、LAMPの付帯サービスとしてある程度は機能すると思っていたのでそこまで心配はなかったかな。ただ黒姫の方は、LAMPのような施設が近くにあるわけじゃないから、体験としてどうなるかなーっていうのはあったけど。
柿次郎:確かに黒姫はEarthboatしかない「村」だからなぁ。完全に孤立した環境だ。
マメ:でも蓋を開けてみたら、黒姫もLAMP横のEarthboatと同じくらい顧客満足度が高くて。これはEarthboatが「個」でも「共存」でも成り立つ柔軟性を持っていたということだと思うんです。
ゴウ:最近は北軽井沢でもEarthboatの運用が始まったんだけど、これはNOT A HOTELっていうラグジュアリーな宿泊施設と併設しているんだ。今はまさにいろんなパターンを実践しているところで、これからどんどんデータが蓄積されてみんなが運用を始めやすくなっていくと思うよ。
Earthboatとグランピングの違い
柿次郎:ところで、Earthboatとグランピングってどういう違いがあるんだろう? これから導入を考えるオペレーターさん達のためにも整理しておきたいなと。
ゴウ:グランピングってキャンプよりももっと快適に自然のなかで過ごしたい人が選ぶ手段のひとつになっているよね。それがひとつのソリューションになっているから、あれだけ広がったんだと思う。ただ俺からしてみると、グランピングには足りないものが多いんだよなぁ。
柿次郎:足りないもの。
ゴウ:まずテントはプロダクトとして布だから耐久性に懸念がある。野晒しだったら数年で穴が空いてしまう可能性がある。。断熱も弱いから豪雪地帯などで運用するのは難しいかもしれない。。さらにテントのなかに水回りを用意することも厳しいなと。その点、Earthboatは木造建築だから水回りは完璧だし、機密性も高いから雪国でも通年営業できるのは大きな違いだと思う。
柿次郎:確かに。そのあたりのこだわりは前回のインタビューを読むとよく分かるね。
ゴウ:要はいい自然環境のなかにさえ置いてあげれば、ちゃんと「回る」のがEarthboat。グランピングのアップグレード版だと思ってもらえたらいいんじゃないかな。
柿次郎:なるほど、分かりやすい。
ゴウ:Earthboatも体験させたいことはグランピングに似ているんだよね。だからそれ自体を否定するつもりは全然ないんだけど、今からグランピングをやるんだったら、Earthboatの方が全然いいプロダクトですよっていうことは自信もって言えると思う。
柿次郎:すでにグランピングを導入してる事業者さんにEarthboatを試してもらったら、「こっちの方が全然いいじゃん!」ってオセロみたいに全部ひっくり返る可能性がありそうだ。
宿業への愛と現実
柿次郎:じゃあもし僕がこれからEarthboatのオペレーションやりたいです!って手を挙げたらマメ君、僕にアドバイスすることあります?
マメ:ちゃんと場所は選んだ方がいいですよってことくらいかな。Earthboatの躯体はほぼ固定されたプロダクトでそのクオリティにも違いはないから、何で差別化するかっていったら周辺環境なんだよね。
柿次郎:確かに周辺環境は大事!
マメ:森の中でも山の上でも海辺でもいいんだけど、そこでしか体験できないような自然がまわりにあるとベスト。だから柿次郎君がビルに囲まれた長野市の中心市街地で「Earthboatやりたいです!」って言ったら、それはやめましょうって言うかな。
柿次郎:それはめちゃめちゃ浮くだろうなぁ(笑)。
ゴウ:Earthboatのコンセプトは「自然に飛び込むきっかけをつくる」。だから建物はあくまでもシェルターで、基本的には外で過ごしてもらいたいと思ってる。要は外がリビングみたいなもの。これを最近はアウトドアリビングと言ってるんだけど。
柿次郎:アウトドアリビング! 新しい言葉だ。
マメ:ただ必ずしもロケーションが完璧である必要はないのかなと。もちろんいいロケーションであるに越したことはないけど、LAMPのEarthboatはそれでもちゃんと回っているので。
柿次郎:確かにLAMPのEarthboatは森の中にはあるけれど、水辺でもないし、隔絶された場所でもないし、ものすごく絶景というわけでもないよね。
マメ:それでも成り立つのは、中心施設であるLAMPがゴウ君が言うところのアウトドアリビング的な価値観をすでに持ってたからだと思います。今いろんなパターンを試してるところだと思うけど、属性が近ければシンプルに相性もいいはずで。
柿次郎:つまりこれからオペレーターを始めたいという人はふたつのパターンが考えられるのかな。Aパターンは、何らかの積み上げた既存の事業に付帯させるかたちでその中心施設の周辺に置く。Bパターンは、ゼロから自然のいいシチュエーションを見つけてきて置く。後者は特にセンスが問われそうだけど、やりがいはありそう!
マメ:Earthboatはプロダクトの強さがあるから、あらゆるパターンに適合できると思う。ただ、僕としては儲かりそうという理由だけで導入するのはおすすめしないです。これは感情的な話かもしれないんですが、ちゃんと努力もして欲しいので。
柿次郎:努力?
マメ:Earthboatって普通の宿をゼロから立ち上げるより全然やりやすいし、リスクも小さいし、しっかり稼げるんです。だからこそ安易な考えで参入してくる人が増えていく可能性もあるんじゃないかって危惧してて。
宿をやるなら、その土地に根差して頑張る覚悟って大事だと思うし、ちゃんとリスクを背負って泥臭くやる面白さもあるはずだから。
ゴウ:分かるよ。それはLAMPがそういう風にやってきたからだよね。みんなでめちゃくちゃ頑張って、唯一無二のコピペできない宿をつくってきたから。
だけど俺としては、自分も宿をやってきて、そもそも宿業が困難すぎるという社会課題を解決したいという思いもあるから、Earthboatは誰にでも簡単に宿が始められるパッケージとして開発したんだよね。
柿次郎:それは最初のインタビューでも語ってくれてたことだよね。
ゴウ:俺もマメが言うように、宿業をやるなら土地に根差して、愛を持って向き合うことは大事だと思う。だけどそのためにはちゃんと稼がないといけない。ちゃんと稼げるから、20年でも30年でも手を入れ続けることができる。理念も大事だけど、経済的に自立することも同じくらい大事なことだよね。
柿次郎:いや〜、宿業に向き合ってきた人たちの愛と現実が交差する話。ぐっとくる。
Earthboatはみんなでつくる
ゴウ:努力への覚悟というところで話をさせてもらうと、Earthboatのオペレーターが自分でお金を出さないパターンはやらないようにしようと思っているんだよね。
柿次郎:リスクを背負わず、運用だけしたいです……っていうのはナシ?
ゴウ:うん。最低でも1台分のEarthboatは自社所有してもらいたいな。あるいはVillageのような場所であれば、全体に対しての3割を購入してもらえるのが希望。そのくらいの気概が欲しいとは思っていて。
柿次郎:ゴウ君も大きなリスクを背負ってやっていることだもんね。
ゴウ:投資家さんを付けたモデルを運用したいというのはもちろんOK。ただ、その人が末長く運用してくれそうだなって思えないと、俺も投資家さんを付けられないからさ。
柿次郎:信頼関係ってビジネスの基本だもんね。オペレーターの希望者とは面談をしているの?
ゴウ:全員面談をさせてもらってるよ。その人がどういうビジネスをやってきたのか、これからどうなっていきたいと考えてるのか。おたがいのことを理解しあった上で話を進めることが大事だと思ってるから。
柿次郎:へーそうなんだ。人間臭い部分がしっかりある。
マメ:Earthboatをやるなら少なくとも理念への共感は必要ですよね。その上でおたがいの個性が有機的に掛け合わされていくのが理想だなーと。
ゴウ:LAMPはそれができていてすごいよね。いろんな個性の人が集まって、それぞれのクリエイティブが層のように積み重なってそれがオリジナリティになってる。実はEarthboatのクリエイティブもそういう考え方に近くて、もっといろんな人に関わってもらえたらいいなと思ってるんだよ。
柿次郎:プロダクトのクリエイティブはゴウ君が責任を持ってやっているよね。それ以外の部分で、ということ?
ゴウ:具体的にはアウトドアリビングの要素をもっとみんなと一緒に考えていきたいな。俺も知らないところがたくさんあるから、こんなところにEarthboatがあったら面白いんじゃない!?とか、こんな自然を体験してもらえたら最高じゃない!?みたいなことをどんどん提案してもらえたら楽しくなるなって思ってる。
マメ:日本の豊かな自然は、Earthboatのアウトドアリビングとしてすごくいいポテンシャルを持ってるはず。日本の観光は引き続き盛り上がっていくと思うし、Earthboatがディープジャパンへの入口になっていくことを楽しみにしてます!
柿次郎:いや〜、日本の観光がEarthboat以前以後みたいな世界になったら面白いなぁ。ゴウ君頑張ってね!
ゴウ:ありがとう! Earthboatを一緒に面白くしたいと思ってくださる方はぜひ声をかけてください。
過去記事はこちら
アースボート代表「ゴウさん」note
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