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積読は希望

「「読みたい」の地層」、という「この本読みたい!」と思ったときの気持ちを綴る記事を書いています。いまさらながら、そんな記事を書く理由というか、背景みたいなものを考え、言葉にしてみたのが、以下の文章です。
どこか、自己紹介文のようにもなりました。


「この本が、自分に未知の何かを教えてくれる」「特別な感情を湧き上がらせてくれる」「ここではないどこかへ連れて行ってくれる」「もしかしたら自分を変えてくれる」「あるいは成長させてくれる」そういったポジティブな予感の集積によって、本は積み上がっていくのだ。自分は元々ネガティブな人間ではあるのだけど、世界に対して肯定的でなければその衝動は起こり得ない。だからこそ大事にしたいと思うのだ。(施川ユウキ『バーナード嬢曰く。②』、p.44)

私の好きな漫画のひとつ、『バーナード嬢曰く。』の第2巻からの引用です。この漫画は2020年3月現在、単行本4巻まで出ていて、第2巻がとりわけ傑作だと思っているのだけど、その第2巻で私に深く刺さったのは、上に引用した作者のコラム"Mr. Shikawa said."でした。

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「読みたい」と思うこと、が好き

私は、本が好きです。
趣味はなんですか?と訊かれれば(そんな機会はあまりないのですが)、ひとことであれば「読書です」と答えます。もうすこし言葉を足すのであれば、「本屋に行くこと、買うこと、読むことが好きです」と答えます。

それはそうなのですが、さらに正確に表現しようとすれば、「ある本を読みたいと思うこと」自体が好きで、読みたい本を見つけに本屋さんに行くことが好きで、読みたいと思ったその気持ちを深めるために、買うこと、読みことが好き、なんだと思います。「ある本を読みたいと思うこと」というのがまず最初に来るのだと思います(思います、というのは自分でも書いていてよくわからないというか、ちゃんと表現できているのか、人に伝わっているのかいまいち自信がないからです)。

ほしい本が手に入ったときの高ぶり、おもしろい本を読んでいるときの興奮、すてきな本を読み終わったときの嬉しいような、それでいて寂しいような感覚。どれも好きですが、ある本を「読みたい」と思ったときの、願望の発露というか、上の引用にあるような「ポジティブな予感」がわき起こる時がなにより好きなのです。「この本を読んだら、きっとたまらない気持ちになるだろうな」とか、「この本を読んだら、こんなことを知ることができるんじゃないか」とか、果ては「この本を読んだら、自分の人生変わるかもしれない」とか。

特に「自分の人生が変わる」とかは大体勘違いのことが多いのですが(苦笑)、しかし、そう思う(勘違いする)時にたしかなことは、自分や自分の生きる場所の未来に、期待を持っているということ。私も施川さんと同様、普段はとてもネガティブな人間で、すぐに落ち込みます。それでもある本を「読みたい!」と思ったときには、読んだときの高揚感を期待するし、読んだあとの自分や自分を取り巻くいろんなことの変化に期待します。読みたい本のことを考えているときは、少なくともそのときは、前向きな気持ちを持てるのです。たとえ、手に入れた本を読みきれなかったとしても。
積読は、ポジティブな期待を積み重ねた結果でもあるのです。積読は、希望です。

だから、前向きな気持ちを持ったときの、その感情というか、心の動きを、しっかり記録しておきたい。どこでどうやって出会った本を、どうしてどんなふうに読みたいと思ったのか、つかんでおきたい、と思いました。その記録はきっと(たとえその期待のほとんどが実現していなくても)ポジティブな予感が積み重なった、私にとって希望となる記録になるんじゃないか、という期待があります。

「読みたい」という気持ちは、積み重なっていつの間にか層になる。その層は、それこそ地層のように、いつか振り返ったときに、その時の自分を知る手がかりになるかもしれない。そう思っています。


ひとの「読みたい」も知りたい

さらにいえば、ほかのひとがある本を「読みたい」と思ったときの気持ちの積み重ね、ほかのひとの「読みたいの地層」も知りたい、見てみたいと思っています。

いろんなひとが、どんな本を読んだのか、その本をどういうふうに読み解いたのか、という文章や話は、さまざまなところで見たり聞いたりできます(読書感想や書評、批評とか)。それに比べて、どうしてその本を読みたいと思ったか、その本を読むとどうなることを期待したのか。読みたい、と思ったときのその瞬間のことを、我々は(読んだ後の感想に比べると)あまり言葉にしていない、他人と共有していないように思います。それはきっと、とてもプライベートな、極めて私的な領域だからかもしれません(実際私も、「あの本」を読みたいと思ったときの、お手軽に何かを得ようというちょっとセコい考えというか、そういうのは正直に書けなかったりするし・・・)。

それでも、できれば少しでも他人と「読みたい」と思ったときの感情を共有したい、「読みたい」というポジティブな期待の共有は、きっとそれ自体前向きで、楽しいものになるはずだと思っています。

だから、ひとに「どうしてその本読みたいって思ったのですか?その瞬間のこと詳しく!」と聴けるように、まずは自分が言葉にしてみようと、「読みたい」の記録を主に綴っています。

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