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生と死とうんこと毒

 先日読んだ文章に、「植物は、動物と違って個体の定義があいまいで、生き死にも曖昧なものが多い」といった内容のものがあった。ごく普通にそこらへんに生えている木だって、幹の部分は実質死んでいて、栄養や水を通す管としての機能がメインだ。動物では、体の一部分が死んだまま生きているということは通常有り得ないのだから、動物の常識で捉えると確かに異様だ。

 植物の尿や糞、つまり排泄物に当たるものってあるんだろうか。酸素や二酸化炭素? それだけなのだろうか? 

 調べてみると、植物が出す何かのカスは、以下のようなものがあり得そうである。

 ① 液胞
 ② 蒸散した水
 ③ 葉
 ④ 根から出す何か
 ⑤ 溶かしきれなかった虫の体(食虫植物の場合)

 ①や②は、生物の授業でやったやつ! 液胞は、植物細胞内で老廃物を貯めておく袋のことだ。

 ③は、①の液胞が集まり過ぎた時など、もう使えなくなった葉を落とすという意味では、葉も老廃物たりうるという考え方だ。

 ④については、根はただ吸収するだけの器官と考えられているけれど、実際には排出もしているらしい。ただし、根から排出される何かは、他感物質といって、他の植物が育たないようにするとか(セイタカアワダチソウの例が有名)、連作障害を起こすなど、植物が積極的な意図をもって排出している何かであり、単純な排泄物とはいいにくいらしい。他感物質以外のものを出している可能性もあるが、ざっと調べた範囲では分からなかった。

 ⑤は、甲虫の殻のことだ。あの殻は多糖類で出来ているのだけれど、食虫植物の消化液では溶かしきれないので、カスとなって残るのだそうだ。純粋な意味で植物の糞が何かと言われたら、これが一番適切なモノかもしれない。


 それと関連して……はいない気がするが、毒のある植物の毒性は、どのように獲得されるのか、ずっと気になっている。

 実家の畑の脇に夾竹桃が生えていて、この時期濃いピンクと白の花を咲かせている。数年前はもっともっさりと茂っていたけれど、往生して父が伐った。

 しかし、夾竹桃はトリカブトもびっくりの毒性を持つのだ。枝も葉も花も毒を含み、周辺土壌も毒で汚染される。枝を燃やした煙からも毒が出るし(だから安易に処分してはいけない)、枝を箸やバーベキューの串に使って死亡した例すらあるらしい。牛の飼料に夾竹桃の葉が混入して、牛が死んだ例もある。致死量は牛一頭に付き、乾燥葉0.5グラム相当だったそうな。

 動物の場合、多くは毒を食すことによって毒性を獲得するけれど、植物は自発的に(?)毒を作っているのだろうか。夾竹桃を新しく植える前の土地は、何ら毒性を持っていないであろうに、そこからどうやって毒を生成するエネルギーなり、素材なりを得るのだろうか。

 夾竹桃以外にも毒性を持つ植物はけっこうある。青梅は毒を持つことは知っていたけれど、それが青酸とは初めて知った。胃液と混ざることでシアン化合物を生成するんだそうだ。尤も、種をバリバリ何個も噛み砕くレベルで食べないと反応しないらしいのだが。

 意外なのは、ナスやトマトである。ナス科はアルカロイド系の毒を持つものが多く(ソラニンが有名)、ナスも茎や未熟な果実には含まれる可能性があるのだとか。トマトもナス科で、トマチン(なんか可愛い)というアルカロイド系の毒がある。食用に栽培されているものの実にはごく微量しか含まれていないが、葉などには含まれている可能性がある他、原種トマトには多く含まれているのだとか。へえー。メロンパン入れになっておりますー(古い)

 ヘッダー画像のアジサイにも毒があるよ!

 ちなみに、夾竹桃忌もある。桜桃忌は太宰治だが、こちらは盟友であった檀一雄のそれである。由来は、壇が夾竹桃を好んでいたことから。

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