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ここらで電子漫画サイト遍歴を晒す④

 続きです。作品紹介は今日まで!

⑲「昭和天皇物語」
 実は、このシリーズを書こうと思ったのはこの作品を読んだことがきっかけだ。
 タイトルからして、あー、右の人向けの作品ねって思う人もいるかと思うけれど、私が読む限り、極めてフラットに描かれていると思う。昭和天皇がまだ東宮でさえなかった頃から描かれているのだけれど、将来、戦勝国の様々な思惑によって、現人神から引きずり下ろされてしまう男性が、どんなに周囲の人から愛され、期待され、庇護され、畏怖されてきたか、あるいは現人神たらんと意識してきたかというのが、書き込みの多い丁寧な絵柄によって表現されていて文句なしの佳作だと思う。これからああなったりこうなったりするんだと思うと胸が痛い。

⑳「32才で初期乳がん 全然受け入れてません」
 まあ、受け入れられないよね……というタイトル。もともと医療系漫画を描いてきた筆者がまさかの当事者にという話なので、エモーショナルな体験談漫画より手慣れていて、整然とした印象がある。
 途中、執刀医を変える選択をするのだけど、そこの説明だけが気にかかった。筆者は「私は陽気でぐいぐい来るタイプは苦手で、論理的に説明するタイプが好き」と言っているのに、最初の執刀医のことは苦手だと話していて違和感があった。執刀医は患者の思いに寄り添うのが苦手なだけで、ある意味とても論理的に説明していると思う。筆者は「本当に頭のいい人は、わからない人にもわかりやすく説明できる」という誤謬を抱えているだけだと思う。そりゃ不安になっているのにそういう執刀医になるのはさらに不安だと思う。「不安だよー」って自分の感情を認めればいいのになと思ったけど、闘病記であまり感情を出しすぎてもということを思ったのか、もともと自分に対して抑圧的な人なのか。作品に性格が出るんだなと思う。

㉑「末期ガンでも元気です」
 同じがん闘病記でも、こっちの方がステージが高いのにカラッとしていて、この差はなんなんだろうと思った。人柄というのももちろんあるのだろうし、㉑の作者は人とのつながりが強いのかな……と雑な理解をしそうになったが、㉑の作者は虐待サバイバーなんだよなあ。世界を冷静に見るクセができている人なのかもしれない。そんなわけで色々ハードなのにこちらのほうが読後感が良かった。

㉒「傾国の仕立て屋ローズ・ベルタン」
 今一番夢中になっている漫画。ゴールデンカムイを紙で揃えたら次はコレを買っちゃうと思う。作者の歴史愛が炸裂していて、最高にいいのだけれど、解説ページで「自分の歴史知識を変態的だと褒められることが多いけれど、深淵にずっぽり入っている研究者には到底及ばない。聞きかじりの知識で描いている反省がある」と謙虚なのがとても共感する。私がしばしば作品を書けなくなるのは、うわっ面のことしか分かってないのに、自分自身の人生の幅、交友関係の幅は狭いのに、こんなこと書く権利あるのか、これを書いてもほんとうじゃないのではと思う時だから。
 解説で、どこまでが史実で、どこでフィクションを入れているかの説明もあってめちゃくちゃ参考になる。

㉓「AV男優はじめました」
 ノリで読み始めたけど面白い。AV男優あるあるを知っても人生に一ミリも参考にならないのに。

㉔「酒と恋には酔ってしかるべき」
 タイトルのセンスが最高。カップ酒から入手困難な日本酒まで、日本酒好きのちょっと終わっている32歳OLの松子が日本酒を飲みまくる! 飲み食いのシーンばかり強調する下品な食漫画や、うんちく多めの酒漫画とは一線を画すライトな酒漫画で、絵柄もさらっとしているので、読んでいて疲れないのがいい。松子のことを好きなんだか好きじゃないんだかの後輩くんもいい味出している。後輩くんが何を考えてるかわからなくて、松子は振り回されて独り相撲して悩むのだけど、「このときめきは実体のないものかもしれないけど、それでもそれをうしなうのは怖い」という趣旨のことを言っていてものすごくよくわかるよ……松子と新政飲みたい! さらっとした漫画に急にキュン要素入れるのは反則だ!

㉕「キングダム」
 文句なしに面白い。映画観に行きたいけど、子供は無理だろうなあ。


 明日か、お休みを挟んで明後日には考察を書こうと思います。はー、長かった!


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