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小説のおもちゃ箱

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掌編~短編のオリジナル創作小説をまとめました。
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#短編小説

掌編 夜のない世界

 部屋から出られるようになった。でも、他の人の中に混じって平然と生きていけるとは思えなか…

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掌編 ライカ

 中学に入るまで、父の仕事でわたしは日本各地を転々とした。同じ日本語なのに少しずつ違う言…

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掌編 マスクの下は

 「内閣総理大臣 ○○○○くん」  総理大臣が野党党首からの質問に対する答弁をはじめてい…

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小説 ビッグデータの活用事例

 子供たちの布団から静かな寝息が立ちはじめても、文音は暗い寝室で横たわったままだった。毎…

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小説 コロナ時代の

 緊急事態宣言が三大都市に出るという時期でも、ティンダーをやっている馬鹿者はうんざりする…

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掌編小説 NORAD Tracks Santa

 はじめに異変に気付いたのは、12月23日の追跡開始を心待ちにしていた、北米に住む男の子…

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小説 もう献立に悩まない

 今日は一月七日。七草粥の日ですね。ご存じ、お節で贅沢な料理続きだった胃に優しいものを食べるという習慣ですが、皆さんはもう召し上がられたでしょうか?  さて、毎日の献立があらかじめ決められるようになって半年が経ったわけですが、生産現場ではこの大変革をどう受け取っているのでしょうか。今日は県内の養鶏場にお邪魔しています! 養鶏場の経営者の横田さんです。おはようございまーす! ――おはようございます。  ここでは約一万羽の鶏を飼育しているということです。従来、養鶏といいます

かがり火は消えるか 企画参加

  カヤが、本当に俺を?   これはウミヒコが幾度となく願い、夢にも見た未来であったはず…

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小説 サステイナブルなひと

 エス氏ほどサステイナブルな人はいない。  彼は街で募金活動を見ると、必ず五百円入れる。…

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小説 ちぢれ毛

 浴室にちぢれ毛が落ちているのを見ると、彼女のことを思い出す。  夫が落としたであろうち…

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小説 顔が見える

 壁紙があちこち剥がれかけた、西日の当たる狭い会議室。  そろそろ体臭の気になる季節であ…

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小説 いつも金曜日

 わたしの金曜日は塾があるからクソ。しかも数ⅡBで、クラスには同じ学校の子すらいなくて、…

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小説 黒はわたしに似合わないのに

 「面接は結局、この人と一緒に働きたいかどうかを見ているんだよね」と言うことばを誰かが言…

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Under Dawn, Over Night

「先生ー! 先生ー!」  まだ声変わりしていない、神経に響く高さの声で喚き散らしながらこちらにやってくるのは、サヌキであった。声は興奮で上ずっているのに、足取りはいやに慎重だ。マルガは書き物の手をとめ、履物をつっかけて外に出ると、サヌキの方に近付いていった。 「なんだなんだ。いつもならすっ飛んでくるのに」 「先生、大発見ですってば」  サヌキは紙の束のようなものを両手に乗せていた。村で飼っている鶏の卵を運ぶ時のように大事そうにしている。 「お前、また遺跡に行ってきた