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海がそばにあった頃


先日、職場の歓送迎会の会場に下見も兼ねて打ち合わせに行った。

そこは海の近くにある結婚式場で、とても良い場所だった。

とゆうか、そこの近所のマンションに私は昔住んでいた。生まれてから両親が離婚する小学校5年生くらいまで。

寝室には四角い窓があって海が見えた。
夜、しんとすると波の音が聞こえた。

友達の家も近所なので海が近い。
マンションの屋上のてっぺんに上がって友達と見た海。笑って寝転がって空を見ていた。
どんな時も海がそばにあった。

大人になってから、車で近くを通ることはあったけど、今回みたいに自転車で昔住んでた付近に行くことはなかった。

住んでいたマンションの近くまで来たとき、
言いようもない懐かしさに圧倒されて思わず自転車を止めて見入ってしまった。
背丈は違うけど確かにあのときここにいた自分を思い出していた。
車に乗らずに自転車に乗っているだけでもこれだけ臨場感が違うことに驚いた。

ここには、今はなくなったけど小さなスーパーがあってよくおつかいに来ていたことや、
あそこには美容室があって思いっきり髪を切られて鏡を見ながら静かに泣いていたこと。

父親がよく手乗り文鳥を肩に乗せて珈琲を飲みに来ていた喫茶店もここにあった。

小学校の行き帰りに好きな野良犬たちがいて、よく友達と一緒に遊んでいたこと。
それがとてつもなく幸せだったこと。

ここから見えるあの部屋に私は住んでいてあのベランダから私は遠くに走る電車を見ていた。ボンヤリと。
寝転がって列車の音を遠くに聞いていた。

他愛もないことかもしれないけど、
私にとって圧倒的にかけがえのない、
すごく大切な時間だった。
そのことを自転車に乗った今の私は体中で受け止めていた。

私が四角い窓から見える海に惹かれて思わず写真を撮るのもそういうアート作品が好きなのも、全てのもとは、あの寝室のあの四角い窓から見えた海に繋がっていたんだと思う。

あぁ。。そうだったのか。

今度は歩いて散策しよう。

幼い頃過ごした今でも大好きなこの街を。

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