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【日本シリーズ】なぜ?どうして? 疑問残る9回裏ヤクルトの守備~11/20○オリックス4x-3ヤクルト

※本稿は全文noteに公開中。最後までお楽しみいただけます。

令和3年総決算にふさわしい好ゲーム

前年最下位どうしによる日本シリーズの初戦。両軍の“想い”と“想い”が激突した、令和3年のプロ野球「総決算」にふさわしい1点差の好ゲームになった。

前半戦は緊迫のスコアレス、6回以降の後半戦はめくるめく点取り合戦。
3時間46分に2試合3試合ぶんの魅力がギュッと凝縮され、その興奮は一夜明けても体内にまだリアルな感覚を残している。

記憶がまだ鮮明なうちに、備忘録をつけてみたい。

最強右腕を悩ませたヤクルト打線の粘り腰

NPB最高峰右腕に対し、スワローズ打線がみせた粘りのアプローチが素晴らしかった。

山本由伸と対戦した打者25人中、2球目以内の凡退は3人だけ。逆に7人が7球目以上を投げさせている。

この日、山本は12球のカウント稼ぎファウルを記録したいっぽう、2ストライク以降の粘られファウルも15球を計上。これは1イニングぶんの球数に匹敵する。5回先頭の西浦直亨にいたっては10球も投げさせ、16連勝中の右腕を苦しませた。

11/10CSファイナル初戦の球数と比べてみよう。5回終了時の球数は11/10は73球だったが、本戦では95球を数えた。

20球近くの球数過多が山本を精神的に疲労させ、6回の中村悠平先制打のコントロールミスを誘ったと言える。完封ペースを許さなかったことで、山本より力量下がるヒギンスが8回に登板。それによって村上宗隆の一時勝ち越しとなる2ランも生まれたという見方もできそうだ。

◎山本由伸 球種別の投球結果

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前半戦スコアレスを演出したビッグプレー

前半戦0-0の立役者は、ヤクルト右翼手・宮本丈の身体を張った塀際ファインプレーに尽きる。

2回2死2,1塁、9番・若月健矢の打球が右翼ポール際に伸びていった。フェンス直撃コースの快飛球を背走、塀際で正面に向き直ると、帽子を飛ばすジャンピングキャッチでグラブに収めた。着地の瞬間フェンスに身体を激しく打ち付けたが白球を離さないビッグプレーになった。

もし長打になっていたら、1塁走者も生還しかねないという場面。履正社高の恩師が現地で見守るするなか、解説・宮本慎也さんいわく「2点を阻止した」名場面を作った。

恩師・岡田龍生監督のもとセンバツに2度出場した宮本は、その後もプレーして4回裏の守備からベンチに退いている。

◎試合展開

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◎両軍のスタメン
ヤクルト=1番・塩見(中)、2番・青木(左)、3番・山田(二)、4番・村上(参)、5番・サンタナ(指)、6番・中村(捕)、7番・オスナ(一)、8番・宮本(右)、9番・西浦(遊)、先発・奥川(右投)
オリックス=1番・福田(中)、2番・宗(三)、3番・吉田正(指)、4番・杉本(右)、5番・T-岡田(一)、6番・安達(二)、7番・ラベロ(左)、8番・紅林(遊)、9番・若月(捕)、先発・山本(右投)

未体験の領域だった

中村の先制打でヤクルト1点先行の7回1死走者なし、オリックスの代打作戦が的中した。

最終戦の楽天戦では2ランスクイズ、CSファイナル突破を小田裕也のバスターからのサヨナラ打で決めるなど、ここ最近はふるうタクトが冴えている中嶋聡監督。

先頭・紅林弘太郎が奥川恭伸との高卒2年目対決にバット折らされ遊直に屈すると、9番・若月のところで代打モヤを告げた。

2019年途中に中日から移籍してきた助っ人はCSでは出場機会なし。しかし1-1から奥川が投じた内角狙いスライダーが外角高めに抜けた失投を一閃し、右中間へ起死回生の同点ホームランを叩き入れた。

このとき、解説の藤川球児さんが言っていた解説が興味深かった。いわく「投げづらい」と。

モヤはNPBでも稀な身長201cmだ。高卒2年目の奥川にとってこれほどの大長身と対決した経験はないのでは?と指摘。ストライクゾーンは打者の大小で変わるから、どこに投げればストライクなのか、あの経験豊富の藤川さんですら対戦したときは苦労したという。

この解説に僕は大いに頷かされた。

というのは、過去に僕は似たようなケースを調査したことがあったからだ。

2017年ドラフトで楽天から6位指名された西巻賢二(現ロッテ)。彼は身長167cmで、内村賢介に続く球団生え抜き野手で2番目に低身長の選手である。

その彼が高卒1年目の2018年、1軍で82打席に立って19安打、打率.247の成績を残した。そのときの成績を対戦投手の身長別で調べたことがあったのだ。

◎西巻賢二 2018年打撃成績

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相手投手が185cm以上のとき、185cm未満のとき、2つに分けてみた。
結果は上記表のとおり、明暗くっきり。185cm以上はOPS.143、打率.057と全く対応できなかった。

これは仕方のないこと。高校野球では185cm以上の長身投手と対戦する経験は少ないと推測できるからだ。ましてや西巻は167cmの小兵。185cm以上だと20cmの差異が生じる。投げおろされる角度は僕らの想像を超えるはずだ。

同じく外国人投手との成績も調べた。16打数1単打、6三振、1犠打だった。これも同じく高校野球では外国人と対戦する機会は、高校日本代表で国際大会を戦う以外には、ほとんどないからだ。

だから話を元に戻すと、まだ高卒2年目の奥川も、あの場面は内心困ったと思うのだ。
あの藤川さんもモヤと対戦したときに困ったと言うのだから、奥川も多少なりとも投げにくさを感じたのは間違いないと思う。

9回裏、疑問残ったヤクルトの守備

ヤクルト側にとっていろんな“まさか”があった9回裏も、気になるポイントがいくつかあった。

まずは無死2,1塁で1番・福田周平の三犠選の場面。

マクガフの3塁送球が逸れたため、村上の足がベースから離れてしまいグラブに収めかけた白球もポロリとこぼれてしまう場面だった。そしてヤクルトは2点リードながらも無死満塁の大ピンチ。

このとき(映像を見返したが)中継カメラにはヤクルト投手コーチがマウンドに進んで間を入れるシーンは射抜かれていなかった。

マクガフは自分の守備ミスで絶対絶命ピンチを招いてあっぷあっぷの状況。なぜ一呼吸入れに、激励しに行かなかったのだろう? 中継がリプレー映像を流している間に行ったのかもと考えたが、スポナビ速報にもその表記がないため行かなかったのだろう。(同速報は「コーチマウンドへ」「内野陣マウンドへ」と速報される)

考えられるのは、オリックス側に間を与えたくないということ。

CSファイナル3戦目の11/10△B3-3M、ロッテは1点リードの9回無死2,1塁、ロッテは引き分けでもCS敗退が決まってしまう場面で、打席に小田を迎えたとき、ロッテ側に不自然な間があった。内野陣が1度マウンドに集まって輪が解けた後、再びマウンドに集まり慌てて吉井理人コーチが出ていく場面があった。

報道によると、あの間が小田に状況を整理させる時間を与えてしまったと言われている。もしかすると、本戦のこの場面でも、投手コーチが出ていくことでオリックス側に考える時間を与えてしまうのを嫌ったのかもしれない。

無死満塁で外野に単打1本出れば、2点入ってしまうかもしれない場面。なぜ遊撃・西浦は2塁ベース寄りに守備位置をとらなかったのだろう?

走者2塁で外野単打のとき、2塁走者の生還率が最も高まるのは、中前ゴロ安打のときだ。あの場面は二遊間のゴロ突破を防ぐべく、もっと2塁寄りにポジショニングを取るべきだった。

昔、楽天2塁走者の生還率を打球別に調べたことがあるが、このときも中前ゴロ安打のときが最も数字は高かった。

9回に2点差をひっくり返したのは、今シーズンでは4/22○B7-6Lに続く2度目の快挙だった。【終】

◎2015~2018年 走者2塁、外野単打のときの楽天2塁走者の本塁生還率
※ライナーはフライ安打に含む
左前ゴロ安打 49.1%
左前フライ安打 58.7%
中前ゴロ安打 80.4%
中前フライ安打 67.3%
右前ゴロ安打 55.2%
右前フライ安打 50.0%
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