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旅人を呼ぶ国

多くの旅人がインドについて語るとき、こう言う。

「インドに呼ばれたんだよ」

私も今、振り返ってみると、あれは「呼ばれ」ていたんだな、と思うようになった。

私のインド体験は、まだまだバックパッカーとしての経験値がごく浅い時期だった。
当時の旅人入門地(?)であった、タイのカオサンすらも訪れたことがなかったくらいなのだから。

でも、あの時はインド行きのチケットがとても安く、大学の休みもちょうど良いタイミングで、何より、ガンジス川でバタフライをしたい!ブッダガヤで瞑想がしたい!という確固たる目的があった。

たったひと月弱の旅程であったにも関わらず、とにかく衝撃の連続だったインド旅行は、帰国した直後こそ「二度と行くもんか!」と思っていたが、旅から15年ほど経った今、最も色濃く、鮮やかな思い出に満ちている。

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遅延便の振替えを巡って入国早々航空会社のカウンターで言い争ったこと。
リクシャーの運賃交渉中に「俺の客を取るな!」とドライバー同士が目の前で殴り合いの喧嘩を始めたこと。
バイクで郊外を案内してくれたおじさんからチップではなくベッドインを迫られたこと。
白昼から腕に注射器を刺した人が路上に生活していたこと。
赤痢にかかってしまい、大きい方で生まれて初めて失敗してしまったこと。
旅の最中、あれほど泣いたり怒ったり、怖かったり、疲れたり、驚いたりしたことは前にも後にもない。

ただ、間違いないのは、誰もが簡単に海外へ行けるようになってしまった今でも、インドは旅人に気付きを与える場所であり続けているだろうということ。
現代はどんなニュースもソファに座ったままで手に入るが、自分がどんなものであるかを試すことが出来るのは、自身が問題に直面した時だけ。
予測不可能な出来事に遭遇した時に、人は新しい価値観に触れ、成長する。
そんな出来事が、間違いなくインドには無数に転がっている。

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だからこそ、子供も生まれて少しは落ち着いたはずの自分が、完全ノックアウトされたインドを再訪したら、どんな旅ができるのだろうと妄想してしまうのだ。
もう少し子供たちが大きくなったら、随分と変わったであろう今のインドを感じに行きたい。
またバックパックを背負って。

そう、やはりインドは旅人を「呼んで」いるのだ。


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