働き方改革再考② ~命、心身の健康を守る~

H29年に文科省が、「学校における働き方改革に関する緊急対策等について」において勤務時間管理の徹底・適正な勤務時間の設定として勤怠管理的に時間外在校時間を記録するように示したことで、そうしたシステムを導入した学校現場は確実に増えました。

3.勤務時間に関する意識改革と時間外勤務の抑制のための必要な措置
 (1)勤務時間管理の徹底・適正な勤務時間の設定
○ 教師の勤務時間の管理を徹底する。タイムカード等により勤務時間を客観的に把握・集計するシステムの構築を促す。
「学校における働き方改革に関する緊急対策等について」

当ガイドラインにあるように勤怠管理の目的は、
⭐️「勤務時間に関する意識改革と時間外勤務の抑制のための必要な措置」
であるわけです。


いわゆる勤務時間の管理は、民間企業では勤怠管理の「イロハの“イ”」として常識であったことが、学校現場では長きにわたってなされていなくて、やっと改善されたことに過ぎません。働き方改革で推進されたことではありますが、ようやくスタートラインについたと捉えた方が良いことだと思います。言い換えると、こうした勤務時間の管理がなされることで、劇的な働き方改革が進んだわけではなく、これまで欠けていたことが叶えられたことなのではないでしょうか。

💫したがって、問題は、つぎのステップでこのことが狙っていたように勤務時間に関する意識改革と時間外勤務の抑制がなされなければ意味がありません。

ところが、色々と報道もなされるように学校現場で記録された勤務時間が、長時間労働、過重労働、過労死を超えた労働となる場合に、そのデータ自体を改竄したり抑制したりするような本末転倒な事案(勤務時間の虚偽申告、過少申告の横行)が発生しています。
おそらく学校現場を預かる学校長が、そのまま実態を示すデータを教育委員会等に提出する際、あるいは、データとして残ることのリスクなどが頭をよぎりこのような事態が引き起こされているのかもしれません。それ以外にも、現場でも在校等時間が多かった場合には、学校長に呼び出され小言を言われることが面倒なために余計な時間外在校等時間を先生方が自発的に記録しない例も数多あると考えられます。

確かに学校長は、労務管理上大変重たい責任を担っている事は間違いありません。そのことで受ける教委からの指導や評価を気にかけ、適正な記録を阻害している要素になっているとしたら、全くおかしな話です。なぜなら、どれだけ時間外に荷重な業務に従事しているのかを把握することが労務管理の第一歩であり、働き方改革の起点になるからです。

実際の裁判での事例をみてみると、長時間労働を把握(その実態把握が足りていないという指摘もあり)をしながら、先生方の過重労働を軽減の手を打たずそのまま放置していた場合には、安全配慮義務の履行を行ったとして裁かれたケースもあります。 
こうして労務管理責任が問われることも考えると、
💫学校現場で命・心身の健康に関わる過重労働が発生していることを確認した場合には、できる限り迅速に事態の解決を図るよう取り組まねばなりません。それが管理職の責務の最も重要なことの1つだと思うのです。命・心身の健康に関わる過重労働は、いつ何時、職場の教職員に襲い掛かり取り返しが付かない事態を引き起こしかねないからです。

💫児童・生徒の命と安全を守ることが学校の至上命題であることと同じように、現場で子どもたちと向き合う教職員の命と心身の健康を守ることが何にもまして最優先に考えなければならないことと認識して学校の業務を見つめる必要があります。

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