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風呂敷の事

紺色の風呂敷をほどいて両親の遺影を書斎の机に並べて立てかけた。
今年のお盆のことを伝えようとしたが、戻ってきた俺にはまだやる事が残っている。彼は去年の九月に書いている。

昨日はなかなか示唆にとんだ話をしてくれてありがとう!
治療には半年はかかっている事。
日本の医療は費用を含めてしっかりしている事。
想像以上に過酷だった入院治療の事。
書くことは狭まり研ぎ澄まされた事。
安楽死の選択が日本にはない事。
40代、70代、80代と、同じ病気でも病気への向き合い方は違ってくる事。
人間は誰でも死ぬことを自覚はしているはずなのに、君が死線を彷徨い、本当の意味で、死と隣り合わせで人間は生きていることを実感したという事。
死は死である事。
恐怖でも不安でもなかった事。
生きてやることがたくさんある事。
これからは、日常の生活習慣、日々の食事が大切な治療になっていく事。
考えさせらた。
どうか、これからも日々丁寧にしっかり生きてください。

命の恩人たる彼のことだ。間違ってはいない。足りないことがあるだけだ。

紺色の風呂敷包みを抱えて歩きはじめた。
俺がICUについて書いたのは、母を看取ってからだった。


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