『イタリア人情劇場とエスプレッソ』
今年の春に行われた野球の国際大会でのイタリアチームのベンチに置かれていたエスプレッソマシーンが注目されたことも記憶に新しいと思いますが、イタリア人とコーヒー、それもエスプレッソとは切っても切れない暮らしの一部と言えます。
イタリアには星の数ほどバールがありますが、ときどき優雅な雰囲気も味わえる老舗カフェでエスプレッソを楽しむのもいいですね。
エスプレッソ王国のイタリアには、歴史的なホテル・飲食店・お菓子屋さんが加入している協会があり、その会員でもあるのがナポリの老舗カフェ『Gran Caffè Gambrinus・グラン カフェ ガンブリヌス』からはじまったとされるある習慣があります。
イタリア人の1日はエスプレッソで始まり、職場では昼休みまでの間に15分程度のコーヒー休憩があります。また、ランチ後、午後の休憩にもと平均で1日3杯程度を口にする人が多いのではないのでしょうか。もちろん個人差はあります。
何か話をする、誰かに会う、きっかけに必ずエスプレッソがあります。そのフレーズの典型が 「Prendiamo un caffe?(プレンディアーモ・ウン・カフェ?) 」でしょうか。
そんな人生に不可欠なエスプレッソですが、19世紀後半からコーヒーを楽しむことができない貧しいひとのために余分にお金を払う心遣い、習慣が生まれたのがナポリであり、その元祖であるお店が『Gran Caffè Gambrinus・グラン カフェ ガンブリヌス』なのです。それをイタリア語で「Caffè sospeso(カフェ・ソスペーゾ)」と言います。
お金がなくてもエスプレッソを飲みたい人がお店を訪れたときに既に見知らぬ誰かがエスプレッソ代を払ってくれているのがからくりです。
この心温まる習慣が世界各地に広がったと言われています。
少し残念なことにナポリでこの習慣をほぼ見ることはなくなりましたが、人情劇場の町ナポリらしいお話ですね。
老舗カフェに足を踏み入れるのは少し緊張するかもしれませんが、カウンターで飲めばリーズナブルです。また、ひとり、ひとりがオーダーをパーソナライズするイタリアで、それを瞬時にさばくバリスタが無駄のない動きでサービスする姿はまさに圧巻です。
バール、カフェはイタリアそれぞれの町の姿を描いた作品が見られるテアトロ(Teatro劇場)のような場所であり、今日も新しいドラマが繰り広げられているのでしょう。
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